| 新学期が始まり、最初の会議があるため、は颯斗共に生徒会室を目指した。 「お疲れ様です」とドアを開けたとたんの爆発音。 は颯斗を見上げた。 彼は額を押さえている。 「通常営業だよね...」 少し楽しそうに呟くに「さん」と颯斗がたしなめ、「翼君!」と彼のラボに足を向けていった。 片づけを一通り済ませて、本日皆が集合した目的の会議が始まった。 議題は生徒会長選挙だ。 これまで4年間一樹が生徒会長を勤めてきたが、今回は卒業を向けるため、どうしても代替わりをすることになる。 途端、生徒会室の空気が張り詰めた。 一樹は淡々と事務的な話を行い、その日は解散となった。 颯斗は早々に生徒会室を後にし、翼、月子もいつもよりも早めに生徒会室を後にした。 も、自分が決めたノルマを終わらせたら留まることをせずに生徒会室を出て行こうとした。 「、一緒に帰らないか」 一樹に声をかけられて足を止め「いいですよ」と振り返った。 一緒に帰ろうといった割に、並んで歩いても何も話をしない。 「最後の大仕事ですね」 ぽつりとが言う。 「ん?ああ、まあな」 寂しそうに微笑んだ一樹の手を思わず握る。 「どうした?」 「寒いので」 の言葉に苦笑し、「仕方ないなぁ」と一樹は呟いた。 そのまま一樹はの手をジャケットのポケットに入れて「これでどうだ?」と言う。 「あったかいですね」 の言葉に満足そうに微笑んだ一樹は空を見上げた。満天の星空だ。 「明日は雪だったか?」 「山の天気は変わりやすいですからね」 今の天気から想像できない、という口調の一樹にはそう答えた。 「悪かったな、」 保健室のドアが開いた途端そういわれた。 今日は琥太郎に頼まれて保健室の留守を預かっていた。 そんなに遅くならないと思うといわれていたのだが、すでにとっぷりと日が暮れていた。 急な来客があって、その対応をしていたらどんどん予定がずれ込んでしまったと言う。 「大丈夫ですよ、これも仕事です」 そう言っては琥太郎に留守の間に保健室を訪ねてきた生徒の記録を渡して保健室を後にした。 腕時計を見て時間を確認する。 少し考えて生徒会室へと向かった。 先日、颯斗は改めて自分は生徒会長になれないと断ってきた。 皆が期待してくれているのは知っているが、その期待に応えられない、と。 自分には荷が重過ぎると。 「そんなこと無いと思うのに...」 颯斗一人だと重いかもしれないが、周りに自分達もいる。無茶を通す当代の生徒会長の元、お互いフォローしあって沢山の時間を過ごしたと思っていたのに... 生徒会室について鍵を挿して回そうとして開いている事に気が付いた。電気はついていないのに。 どうしたんだろう、と首を傾げてそっとドアを開けた。 ソファから一樹がはみ出していた。 静かに近付き、顔を覗きこむ。 一樹は、偶にメガネをかけている。今も掛けているのだが、寝ているようだ。 メガネを掛けたまま寝るとフレームが曲がるとか聞いたことがある。 そっとメガネを外そうと手を伸ばしたら掴まれた。 「寝込みを襲ってくれるのか?」 「その言い方、変ですよ?メガネ、外した方が良いんじゃないですか?」 に指摘されて苦笑して体を起こす。 「コーヒー、淹れましょうか?あと、電気を点けて仕事をしてください。目が悪くなりますよ」 簡易キッチンに向かいながらが言う。 「にお小言を言われるようになるとは...成長したな、お前も」 からかう一樹の口調は少しだけいつもの鋭さがない。 「空元気も元気のうち。ま、良いですけどね」 の言葉に一樹はまた苦笑した。 「はい、どうぞ」と渡されたコーヒーカップを受け取り、一口飲む。 「俺は今まで自分の信じてきた道は間違っていないと思っているんだ。今も」 「じゃあ、それで良いのでは?こうなったら出来ることなんてないですよ」 そう言っては自分に淹れたコーヒーを飲む。「あ、ちがう」と呟いた。 「何がだ?」 「出来ることはひとつありました。颯斗くんを信じることです。結構しんどいかもしれませんけどね」 肩を竦めて言うに「しんどい、か?」と一樹が聞き返した。 「自分ではどうしようもできないことをただ信じるのって結構しんどいでしょう?」 「そう..だな」 「けど、颯斗くんなら大丈夫ですよ」 「俺もそう思ってる。けど、理由を聞いても良いか?」 少し不安げな一樹には自信満々に笑った。彼女の姉の笑みにそっくりだ。 「オトメの勘!お姉ちゃんがお兄ちゃん言ってました。星詠みよりも乙女の勘の方が信頼できるって」 笑いながら言うに一樹は思わず噴出す。 その会話の様子が何となく頭に浮かんだのだ。 きっと晴秋は「そうかもなー」って適当に答え、その適当さが気に入らずに夏凛に叱られるのだろう。 「...それは、心強いな」 「任せてください!」 乙女を代表しては笑顔で請け負った。 |
桜風
12.3.2
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