| 生徒会長選挙の結果、颯斗が生徒会長となった。 彼の中で大きな決断で、それができたことがまた彼の自信に繋がったと思う。 新生徒会長が決定して以降、一樹は引継ぎのために毎日生徒会室に来ている。4年という長い期間の引継ぎなので時間が掛かってしまう。 最近は引き継ぎに忙しくて一樹も颯斗も生徒会室に来るのは早かった。 しかし、今日は一樹が遅い。ちょっと珍しいな、とは不思議に思った。 「一樹会長、今の時間に来てないって珍しいね」 「そうですね、3年生は殆ど授業もないはずですし...」 ホームルームが長引いているはずもない。 「まあ、いいや。ちょっとこれ職員室にもってくね」 颯斗にそういっては生徒会室を出て行った。 職員室で用事を済ませては生徒会室へと向かう。 階段を昇っているとその途中で数人でふざけている生徒たちがいた。 どうだろう、すり抜けられるかな? 戻って別の階段を使えば良いのだろうが、こっちの方が生徒会室に近いので出来ればこのまま上がりたい。 はその階段を上がることを選択した。 丁度がその横を通り過ぎようとしたところで一人が手を広げ、それがに当たる。 「え...」 ふわ、とした浮遊感。思わず目を瞑る。 ああ、落ちてる。 何となく冷静にそんなことを思っていると「!」という声が聞こえた。 落ちたことは落ちたが、痛くない。 「...っ」 すぐ傍で息遣いが聞こえた。 目を明けると目の前に一樹の顔があった。 「大丈夫ですか!」 階段でふざけていた生徒が慌てて降りてきた。 「ああ、大丈夫だ。けど、階段であまりふざけるな。危ないだろう」 苦笑して一樹が言う。 「一樹会長...」 「大丈夫だ。お前は怪我してないな?」 微笑んで一樹はの頭を撫でる。 が頷いたのを見て立ち上がった一樹は顔を顰めた。 「足...」 「さすが保健係だな」 からかうように一樹が言った。おそらく捻挫か何かはしているだろう。 階段を昇っているとが落ちるのが見えて慌てた。 自分は、未来をちょっとだけ抽象的ながらも垣間見ることが出来る。ただし、のそれは見れない。 同じチカラを持っている彼女の兄も見れないと言っていた。 もし、見ることが出来ていたらもっと早くに、階段を落ちる前に止めることができたかもしれない。 またしてもこのチカラが役に立たなかった。 けれど、傷つけることなく守れた。 自分が成長した証拠だろうか。 原因はどうでも良い。ただ、彼女がこうして怪我をしていないんだ。充分だ。 「保健室に行きましょう」 「ああ、大丈夫だ。これくらい」 「でも...」 先ほど、自分が落ちたとき、ゴトンと音がした。何か、強く打ったような音。 自分は何処も痛くないのだから、それは一樹のどこかが床に強くぶつかったときの音だろう。 足は捻挫だろうから、そこ以外に。 一樹が投げ出した鞄を拾っては心配そうに彼を見上げた。 「まったく、心配性だな」 くしゃっと笑って一樹はから鞄を受け取り、生徒会室へと向かった。 「遅くなったな」 そう言って入ってきた一樹は足を引きずっているようだ。 「一樹会長。足、どうかしたんですか?」 「足?何のことだ、颯斗」 笑いながら言う一樹の後ろには泣きそうな顔をしているがいる。 「ちゃん?」 月子がの様子に気付いて心配そうに声を掛けると、ドサッと何かが倒れた音がした。 「ぬいぬい?!」 翼が駆け寄り声を掛ける。 「一樹会長?!」 も駆け寄った。 「一樹会長!...ごめんなさい、ごめんなさい」 と涙を流しながら彼に泣きついた。 今まで見たことのないの動揺に月子たちは言葉を失った。 「さん、会長は大丈夫ですよ。それより何があったんですか」 ひとまずを宥めながら颯斗が聞くと、彼女は途切れ途切れに先ほどの話をした。 「そのとき、頭を打ったかもしれませんね。保健室に連れて行きましょう。翼君、一樹会長をなるべく揺らさないようにして運んでもらえますか?」 「わかったのだ!」 そう言った翼が一樹を背負うのを手伝った颯斗は 「大丈夫ですから。一樹会長は頑丈に出来てます。翼君の発明品の爆発に巻き込まれてもピンピンしてるでしょう?」 とに微笑んだ。 しかし、は翼の隣に立ち、心配そうに一樹を見上げている。 「月子さん、星月先生に話をしておいてください。僕達はゆっくり降りますから」 颯斗の言葉に頷いて月子は生徒会室を出て行った。 「さん、行きましょう」 颯斗に促されては翼の隣を歩きながら保健室へと向かった。 |
桜風
12.3.9
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