| 「お前が居ても邪魔になるからダメだ」 冷ややかにそういわれた。 保健室に一樹を連れていき、やはり颯斗の思ったとおり軽い脳震盪を起こしている可能性があると琥太郎が判断した。 街の病院に連れて行くと言った琥太郎に、自分もついていくと言っただったが、琥太郎はそれを許さなかった。 「星月先生...」 言い方が厳しいと言いたいのだろうが、ここまで言わないと今のは引き下がらない。 「青空、連絡先を教えてくれ。不知火が目を覚ましたら連絡を入れる」 「...わかりました」 頷いた颯斗が自分の携帯番号を琥太郎に教えた。 学園の公用車を使って街の病院へと不知火を運ぶことになり、彼の担任も付き添った形で学園を出て行った。 出て行くところで琥太郎が月子に「俺が連絡を入れるまでにずっとついててくれないか」とそっとお願いしたのは誰も気付いていない。 「僕達も生徒会室に戻りましょう」 そう言って颯斗はの背に手を置いて生徒会室へ戻るように促した。 生徒会室に戻ってもはずっと沈んでいる。 困ったな、と心から思った。 颯斗が途方に暮れるのも無理からぬことで、これまでこんなを見たことがない。 何かあっても気丈に振舞っている方だ。 夏休みに彼女の家に泊まりにいったときも、親戚に傷つけられても人前で泣かなかった。 あの姿を見て羨ましいと思った。彼女はとても強いのだと憧れた。 けれど、今、目にしている彼女は小さく、先ほどからずっと泣いている。 月子が寄り添って声を掛けているがその声が届いているかすら怪しいものだ。 どれくらい時間が経ったのだろうか。 颯斗の携帯が鳴った。 縋るような目でが颯斗を見る。 相手は琥太郎からで、一樹が目を覚ましたという報告だった。 「さん、星月先生が代わってほしいそうです」 颯斗から受け取った携帯を耳に宛てる。 『不知火からお前への伝言だ。『泣くな、ばーか』だとさ。さっき青空にも言ったけど、2〜3日様子見の入院をさせることになった。、お前のせいじゃないし不知火は元気だ。いいな?』 そういった琥太郎は再び青空に電話を代わるように言った。 「颯斗くん、星月先生」 そう言って颯斗に携帯を返した。 その日の夜に寮に戻ってきた琥太郎は一応の部屋にいってみた。 ノックをして「」と声を掛ける。 電気は点いていないようなので寝ているのかと少し安心したが、カチャリとドアが開いた。 「?」 顔を覗かせたを見て琥太郎は目を瞑った。 やはり、と自分が胸に抱いていた嫌な予感が的中してしまったことを確信した。 彼女は自分の家にやってきたばかりの目をしている。慎重に人との距離を測って相手を傷つけないように、その分、自分を殺していたときのそれだ。 一瞬、何と声をかけて良いのか悩んだ。何を言ってもたぶんダメだろう。 「もう遅い、寝なさい」 「はい」 の返事に温度がなく、琥太郎は躊躇いがちに彼女の頭を撫でてその場を去った。 おそらくは眠れないだろう。だが、明日学校に行っても何事もなかったかのような振る舞いをするに違いない。 「有李...」 あのを救ったのは間違いなく有李で、あの子が居たからは『子供』でいられた。しかし、今はもう居ない。 「ごめん。夏姉、アキ...」 今の彼女の目を見たらおそらく2人は悲しい想いをするだろう。そして、自分と同じく無力感を味わう。 しかし、琥太郎ではあのを救えない。数年前にそれは実証済みだ。 もし、仮にできるとしたらたぶん、ひとり... 「情けないな」 他人を頼らなくてはならない自分にそう呟き、琥太郎は自室に戻った。 |
桜風
12.3.16
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