| 学校に戻ると日はとっくに暮れていた。 急いで戻って来たはいいが、この先を考えていない。 仕方がないので携帯で呼び出すかと考えていると「一樹会長?」と声を掛けられた。 「颯斗。今日は悪かったな」 「いえ」 学校帰りの颯斗にあった。 「は?」 「もう少しやっつけて帰ると言ってました」 ということは生徒会室か。 「わかった、ありがとう」 「あの、さん...」 颯斗の言葉に苦笑を返して一樹は生徒会室へと向かった。 「」 生徒会室のドアが開き、顔を覗かせてきたのは一樹だった。 「一樹会長?」 不思議そうな顔をする。 「お前に会いに来た」 ストレートな言葉には困惑したようで、目を丸くする。しかし、「なにか?」と問う声はやはり硬いままだ。 ズキンと痛む胸をそっと撫でてソファに座る。 「、こっちに来い」 躊躇いがちにはソファの傍まで行くが、それ以上近付かない。 ぽんぽんと隣を叩くが、「ここで聞きます」と言う。 物理的も距離を取られるらしい。 辛いなぁと思いながら立ちあがり、そのまま強引にの腕を引いて座らせた。 「いいか、。良く聞け」 彼女の頬を両手で包み、顔を覗きこむ。 「なんですか」 「俺がこの間倒れたのはお前のせいじゃない」 は返事をしない。ただ、目を見れば彼女がそれを良しとしていないことは分かる。 「俺は、お前を守りたいと思ってる。だから、体が勝手に動いた。逆に、あそこでお前が階段から落ちるのを唯呆然と見ていたら、俺は自分が許せなかったと思う。 どうしてか分かるか?」 「わかりません」 「俺は、お前が好きだからだ」 驚いたらしく、彼女は目を丸くしている。 「俺はお前が好きだ、」 「一樹会長、わたしは前に言いました。今のわたしは作り物だって。嘘で塗り固めているんです」 「それの何処が悪い」 考えることなく一樹が返し、は呆然とした。 「人は少なからず自分を偽り、相手に合わせて生きている。がそれと同じことをしてどうして責められる? なあ、。お前、星詠みの力ってどんなのか知ってるか?」 「流星群の始まる時間がわかるんですよね?」 何だそりゃ? 以前、でたらめを交えてに教えていると晴秋が言っていたことを思い出す。 「星詠みの力は、ちょっと先の未来が見えるんだ。ただし、はっきりしたものは見えない。曖昧で抽象的なんだ。 俺はクラスでは力が強い方だが、意味が分からないものが見えることが多い。 俺の力は家系的なもので、子供の頃から何となく、自分にあるこの力のことは気付いていたが、使い方、感じ方が分からなかった。 俺は今おじさんに面倒を見てもらっている。両親は、俺が子供の頃に亡くなった。何となく、嫌な予感はしたんだ。両親が出かけるときに。けれど、それをどう表現して良いか分からず、そのまま見送ってしまった」 昔を思い出す。誰もが自分のせいではないと言ってくれた。 だが、それを受け入れることが出来なかった。弱かったから。現実を受け入れることが出来ず、楽な方へ逃げていた。自分を責めて自分を傷つけて、そしてその悲しい気持ちが少しだけ罪悪感を誤魔化した。 けれど、それを留めてくれた人が居た。そして、自分を愛してくれた人が... 「未だに、俺はこの力を持て余している。見たくもない未来を垣間見て、その未来は変わらないと思っていた。 けどな、。お前だけなんだ」 「わたし?」 不思議そうに首を傾げる。 「ああ、お前だけは未来を見ることが出来ない」 「何故ですか?」 「さあな。理由は分からない。けど、事実だ。 俺はお前を守りたい。未来が見れたら楽だろうと思う。何とか守ることが出来る自信もつく。 けど、お前の未来は俺にとって未知で、だが、それが普通なんだ。 颯斗がこの先誰かを愛して、その人を守るために未来を知ることは出来ない。翼も、月子も。そして、もだろう?」 コクリと頷く。未来が見えていたら両親の死を阻むことが出来たかもしれない。 「俺は今までこの力で色んなものを守ったと思う。全部は無理だけど、できる限りで守った。この力も俺の一部で俺自身だとある程度は認めることが出来るようになった。 お前の未来が見えないのも、俺の力の一部で俺だ。 俺もさっき話したとおり両親を亡くしているから、自分のせいだと責めたし、自分と一緒にいる人は不幸になると本気で信じていた。だから、安っぽい言葉になるかもしれないが、の気持ちは良く分かる。 この先、と一緒に居て、俺が怪我をすることがあるかもしれない。この間みたいに、お前を庇ってとか。けど、それはお前のせいじゃない。俺がそうしたいんだ。 、俺の傍にいて笑ってくれ。偶に痛い目にあったり、喧嘩とかあるかもしれないけど。それでも、俺はお前が欲しい」 の顔がくしゃりと歪む。 「わたし、もう誰かがわたしのせいで傷つくのは見たくないんです。わたしが我慢したら大丈夫なんです」 「俺は、そんなを見るのは辛い。お前の兄ちゃんや姉ちゃん。星月先生だってそうだ。お前のことを好きな人は皆そう思ってる」 の瞳から涙が溢れる。次から次へと。 一樹は彼女を抱きしめ、背中を優しく擦る。 「怖いんです」 「そうだな、俺もだ」 「どうしたら良いか分からなくて、これしか思い浮かばなくて」 「これからは、半分俺にくれ。お前の悲しいも、辛いも。全部、俺に。その分、お前に嬉しいや楽しいをやるから」 「一樹会長」 が一樹の服をぎゅっと握る。 「おう」 「わたしも一樹会長が好きなんです」 「さすがだな、男を見る目があるじゃないか」 そんなことを軽く言われては驚き、顔を上げた。 「ビックリするじゃないですか」 「何だ?褒めたんだぞ?」 おどけて言う一樹には笑う。 「お前は笑ってる顔が一番可愛いよ」 目を細めて一樹が言う。 が真っ赤になって一樹を見上げているので、彼女にキスをした。 「ひ、卑怯ですよ」 が言うと「そういや、。お前..ファーストキスって済んでた?」と抗議はスルーして一樹が言い「今済みました!」とが返す。 「あー、そうか。ごめん、俺その前にお前の寝込み襲ってるから。今のセカンドな?」 軽く言われては口をパクパクと動かした。何か文句を言いたいのだが、何も出てこない。 「さて、もう遅いし帰ろうぜ」 色々と言いたいことはあるが、は深呼吸をしてそれを一旦仕舞い、一樹から離れる。 帰り支度をして生徒会室から出ると一樹が手を差し出してきた。 「いくぞ」 重ねた手を少し強引に引いて一樹が歩き出し、はその手を少し強く握った。 寮に帰ったは少し悩んだが、琥太郎の部屋に向かった。 ドアをノックする前に深呼吸をしていると突然ドアが開き、おでこを強く打った。 「だ、大丈夫ですか?!」 ではなく、同僚と思ったのか琥太郎は敬語でそう言い、と分かると「大丈夫か?」ともう一度声を掛ける。 「痛いよ、琥太にぃ」 目に涙を浮かべて見上げるの表情に彼は泣きそうになる。それを誤魔化すように 「人の部屋の前でぼうっと立ってるのが悪い」 と意地悪く言うと 「酷いよ、琥太にぃ」 とが訴える。 「あのね、琥太にぃ。たぶん、物凄く心配をおかけしました!」 深々と頭を下げる。 「まったくだ」 「今回のだけじゃなくて、琥太にぃの家に行ったときから」 何年越しに届いた言葉だろうか。それでも、届いた。 「本当にな」 くしゃりと顔を歪めて琥太郎はを抱き寄せた。 「もう、大丈夫だな?」 「うん、ありがとう」 の返事に琥太郎は腕を緩め、「あまりお前を甘やかすと不知火に怒られるな」と笑う。 「な、何で琥太にぃは知ってんの?!」 「お前の兄貴だからだ」 そう言って笑う琥太郎に、は嬉しそうに「えへへ」とはにかんだ。 |
桜風
12.4.13
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