Kaleidoscope 75





よくもまあ、こんなにイベントを思いつくもんだ。

本日はバレンタインデーで、男子校然とした星月学園では生徒会が主催となってバレンタインイベントを繰り広げている。

お祭り騒ぎが好きな一樹が考えたものらしい。

以前兄に話したら「男子校で余計に空しいだろう、それ」と呆れていた。

色んな企画を実行した実績がそれなりにある過去の会長もさすがにそれは出来なかったという。

それをやってのけるんだから凄いもんだ。


しかし、この日は朝からそわそわしていた。

バレンタインチョコなんてどうやって渡したら良いかわからない。

これまで、義理チョコと言うか『ありがとうチョコ』として琥太郎や兄、星月のおじさんにあげたりしていたが、それとは勝手が全く違う。


昨日、一樹と颯斗、そして翼がダミーチョコを隠す作業を行うため、月子とは生徒会活動が免除された。

昨年、一樹たちがチョコレートを隠すからと生徒会活動が免除になっていたので今年もそうなることは知っていた。

だから、は放課後手作りチョコの材料を買うためにバス停まで走って街に向かった。

どんなのが良いのだろうか。

甘いものはあまり好きではないと以前聞いた気がする。

と、なるとビターチョコが良いのだろうか。

よくよく考えたら相手の好みを考えてチョコレートを作ることも初めてだ。

身内にあげている義理チョコはが作りたいように作ったものをあげていただけだったからこんな悩みもなかった。

モールで一式買い物を済ませて学園に戻った。

食事を早々に済ませてチョコレート作りに励む。

元々部屋に設置されている簡易キッチンではそんなに凝ったものは作れない。

自ずと選択肢が狭まるが、それでも意外と時間が掛かり、何とか納得することが出来たときは既に日付が変わっていた。

お陰で、本日寝不足で授業中もちょっとうつらうつらしてしまった。

「美味しい」って言ってくれるかな?喜んでくれるかな??

そわそわする。



放課後、このイベントの参加希望者が体育館に集まった。

1年生は今年初めてだから、ルールの説明を行って生徒会でこのイベントの開会を宣言する。

多くのダミーチョコの中にひとつだけ本命チョコがある。

それを見つけた人は生徒会からご褒美があると言うものだ。

チョコレートは校舎内に隠されている。本命が見つかったら放送で終了を宣言することになっている。

昨年は一樹の制服のジャケットのポケットにあったので、本命を見つけられることはなかった。

そして、今年は一樹の制服のジャケットにはなく、自分の周辺にもないと宣言している。

颯斗や翼は一樹が本命チョコをどこに隠したのかは知らない。


イベント開始後、何人か生徒会室を訪ねてくる生徒がいた。

チョコを見つけては生徒会室に持ってきて、それが本命かダミーかの判定を受けるためだ。

しかし、中々本命が見つからない中でまた生徒がやってきた。

その生徒は保健医の白衣のポケットに入っていたと言う。

颯斗や翼はそこにチョコは隠していないと言った。

「おめでとう、それは本命チョコだ」

人の白衣のポケットに隠すなんて...

は少し呆れた。

月子が全校放送で本命チョコが見つかった旨を宣言し、今年のバレンタインイベントは終了した。

そして、本命チョコを手にした生徒が生徒会に求めたご褒美は、月子からのビンタだそうだ。

は良いのか?」

一樹が一応確認してみた。

もこの学園で数少ない、というか月子とだけが女子生徒なので、大抵月子とはセットとされる。

「いえ、昨年度の食堂での勇姿を見てますので...」

しどろもどろに彼が言う。

昨年度の食堂。

皆は納得した。

「そうか、アレを見てたら確かになぁ...」

腕組みをして一樹が頷き、「じゃあ、月子。やってやれ」と月子を促した。

パシンと小気味のいい音がした。

彼は嬉しそうに頬を押さえて生徒会室を後にした。

「...男の人ってワケわかんないなぁ」

の呟きに、生徒会執行部男子は「あれを基準にするな」と口々に抗議した。









桜風
12.4.20


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