Kaleidoscope 77





颯斗への引継ぎが一通り終わり、一樹はやり残した会長の雑務を残って行っていた。

さすがに残して卒業するわけにはいかない。

「うー、疲れたー」

伸びをして立ち上がり窓の外を眺めた。

4年間。普通の人より1年長かった高校生活。その間に色んなことがあり、こんなにも誰かを想う自分がいることを知った。

そして、未来なんて見えなければいいと思っていたのに、その反面、見れたらどんなに気持ちが落ち着くかと思い始めている。

「俺は、弱いな...」

守れるだろうか。不安が胸を締め付ける。


「呼びましたか?」

ひょっこり顔を覗き込んできたのはで、思わず一樹は目を丸くする。

「どうして...」

「呼ばれた気がしました」

目を細めて言う彼女に一樹は少しだけ情けない笑顔を見せた。

「そうだな、呼んだよ」

そう言ってを抱きしめる。

「やっぱり怖いな」

「諦めますか?」

すぐに聞き返したは笑みを浮かべている。答えはわかっているのに、聞いてきているのだ。

「嫌だ」

「わたしもです。もう、我慢しません」

キッパリとそう宣言するの眸はとても強くて、これが本当のなのだろうと思った。

彼女は自分を作り物だと言っていたが、彼女は沢山の我慢の末に強さも手にしていたのだろう。

本人が気付いていないだけで。


「寂しいですね」

一樹の隣に立っても窓の外を見た。

「俺が卒業しても浮気するなよ?」

悪戯っぽく言うと「あら?わたしって男を見る目があったんじゃないんですか?」とが返す。

きょとんとした一樹はやがて苦笑した。

「俺、お前に勝てそうにないよ」

「まさか。わたしこそ、いつでも白旗を揚げられるように準備しとかなきゃって思ってます」

「なあ、

「はい」

「俺、迷ってるんだ」

一樹が言うとが見上げて彼の顔を見る。

「未来は沢山の可能性がある。その中でどれを選んだら良いんだろう。
俺はおじさんに凄く感謝してるし、だからこそおじさんの跡を継ぎたいとも思っている。その反面、世界をこの目で見たい。沢山の物を見て、聞いて、感じて。色んな体験をしたいと思っている」

「留学ですか?」

の言葉に一樹が頷いた。

「じゃあ、両方すれば良いじゃないですか」

軽い口調でが言う。

「お前、軽く言うなぁ...」

「それ、星月先生も言いました」

笑って言うの言葉の意味が分からず、一樹がどういうことかと聞いた。

「前、理事長になるのに悩まれていたときに。保健医は辞めたくないって言ってたので両方すれば良いって言いました。一樹さんも欲張っちゃえば良いんじゃないですか?」

しれっというに一樹は苦笑した。

「他人のことならいくらでも言えたんだな」

「ええ、まあ...」

ばつが悪そうには頷き、一樹を見上げた。

「けど、俺が留学したら中々会えないぞ」

「いいですよ。その間にわたしはわたしで自分のできることをガツンと頑張ります。一樹さんは一樹さんでやりたいこと、できることをドカンと頑張ってください。ただ..毎日が忙しくなると思いますけど、わたしのことは、時々で良いので思い出してください。偶に電話をくれると嬉しいです。それで充分です」

そう言ってが笑った。二度と会えない、永遠の別れではないという。

もか?」

「はい?」

も、時々なのか?」

「わたしは、毎日想います」

「ずるいなぁ。俺だって、のこと毎日想うに決まってるだろう」

そう言ってを抱き寄せた。

「なあ、。俺は、明日実家に帰ろうと思う」

驚いてが見上げる。

「おじさんに、俺の考えていることを話して、許してもらおうと思う。どうなるかわかんないけどな。あと、両親の墓参りもしておこうかと思って。初めてなんだ」

「...は?」

が聞き返した。

「いや、あの。両親が亡くなってから一度も墓参りをしたことがないんだ」

しどろもどろに答える一樹に「ご両親に怒られますねぇ」しみじみとが言う。

その点、は強いなと思った。彼女は両親の墓参りにずっと行っている。

「ああ、怒られてくる」

「沢山怒られて、これまでの一樹さんが体験した色んなことを報告してきてください。ご両親、喜ばれますよ」

笑顔でが言う。

「次に行くときは、一緒に来てくれるか?」

きょとんとしたは笑顔になり「もちろん!」と頷く。









桜風
12.4.27


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