| 一樹の卒業式の日を迎えた。 壇上で送辞を読むを見て一樹は目を細める。 自分の見えた未来にいなかった彼女。だから、生徒会執行部に誘ってみた。 どうなるか分からない、未知の存在として。 未来が見えてしまう自分は、見えた未来はその通りになると思っていた。 それが嫌で、抗いたくて彼女に声を掛けた。 その彼女が、自分を変えた。 それは即ち未来を変えたとまで言って良いのか未だに分からない。 ただ、彼女にはたくさんのことを教えてもらった気がする。 だけではない、生徒会執行部の仲間。友人、教師。 遠回りをした。その分、たくさんの人と触れ合えた。 「みんな、天井を見るのだ!」 翼に送辞の順番が回ってきて、マイク前に立った途端にそういった。 一樹が見上げると星が降ってくる。 5人で一緒に見た流星群を思い出した。 「最後にやってくれるな...」 翼の数少ない発明品の成功例。 こんな素晴らしいものを発明できるのに、何で普段は何でもないすぐに爆発する困ったものを造るのだろうか... 振り返れば翼が入学してからは爆発・破壊・颯斗のお説教の三連コンボが続いた。 思わず笑いが零れる。 そうか、そうだな... 壇上に立つ後輩たちを見上げた。 彼らは胸を張り、そして、その姿に不安は微塵も感じられない。 卒業式が終わり、最後のホームルームも無事に終わった。 これで、高校生活が終わりを迎えたのだ。 ゆっくりと校舎の中を歩く。 いつも生徒会執行部で見回りと称して歩いて見てきたその風景は、少しだけ違って見えた。 「一樹会長!」 「...?」 駆け寄ってくるを見て思わず頬が緩む。 「どうでした?」 「何がだ?」 「わたしたちの送辞。卒業式」 「とーちゃん、誇りに思うぞ〜!」 そう言っての頭をガシガシと撫でる。 「ちょっ!髪が...」 月子みたいにおろしているならまだしも、結んでてこんなに力強く撫でられたら一度ほどかなくては不恰好になる。 「みんな正門で待ってますよ」 歩きながら髪を結びなおす。 「器用だなぁ...」 「どーも」とが返した。 「けど、まだ校内を見たかったみんなにそう言ってきますけど」 が言うと「いいよ、もう充分だ。4年も過ごしてたんだ、見飽きたよ」と苦笑した。 正門では颯斗たちが一樹を待っていた。 と共にやってきた一樹に皆は駆け寄る。 「さっき校舎内で迷子になってたから」とが笑うと「お前、2年も通ってて迷子になるなよ」といわれ「わたしですか?!」とが驚く。 先ほど式の中で思った頼もしさ。もう、心配することは何もない。 彼らと言葉を交わす。 わんわん子供のように泣き始めた翼に、別れを惜しむ月子と颯斗。そして... 「は何で泣かないんだ?」 ニコニコと微笑んでいるに苦笑した。 「難しいことを聞きますねぇ」としれっと返されて「しょうがないなぁ」と一樹は笑った。 自分より大きな後輩たちを一遍に抱きしめ彼らとの別れをした後、一樹は振り返らずに卒業をしていった。 **** と一樹はシンプルなスーツを着て並んで墓に手を合わせている。 が星月学園を卒業して数年が経った。 この後、不知火家と家で食事会をすることになっている。 要は、結婚前の親族の顔合わせだ。 星月はどうするのかと一樹が聞くとおじさんが断ったと言った。自分はを預かっただけで、の人間ではないからと。 良いのだろうか... 「まあ、この間挨拶に行ったし。それで充分みたいですよ」 墓地を出て車に乗ったとき、がそういった。 今のは一樹の両親の墓だ。次は、の両親の墓へと移動している。 食事会までまだ充分時間があるので焦る必要はない。 の両親の墓のある寺に着いたとき、が「あれ?」と呟いた。 見慣れた車があったのだ。 「一樹、遅い!」 そう言って出てきたのはの姉の夏凛だった。 「オレらだってさっき着いたばかりだろう?」という晴秋は姉のゲンコツを食らう。 「お姉ちゃん、お兄ちゃん!」 は駆け出して2人の元へと行った。 置いていかれた一樹は苦笑して車から花を取り出し、を追う。 「先に不知火に行ったのか」 「はい」 晴秋の言葉に一樹は頷く。 「そうだよなー。これからの父親にお嬢さんを嫁にしますって報告しなきゃいけないもんなー。緊張するよなー。その点、どうよ。一樹」 からかうように言う晴秋に「それはもう先日済ませました」と一樹が言い、晴秋は舌打ちをした。 面白いものが見れると思ったのに... 4人が並んで手を合わせる。 「夏凛さん、旦那さんは?」 「仕事。けど、会食にはギリギリ間に合うはず。遅れてもそのまま始めて良いわよ」 仕事を引退したと同時に夏凛は結婚し、今は大きなおなかをしている。2人目だ。今日は、1人目を連れてきていないようだ。 お陰で当分晴秋に蹴りを入れられないと嘆いているとか。 「オレは平和で素晴らしいと思っている」と晴秋が真顔で言ったのを聞いて「そうでしょうねぇ」と思わずしみじみと言ってしまった。 「一樹。最近星詠みの力、使ってるか?」 不意に聞かれた。 「...いいえ」 首を横に振った一樹に「なくても困らないもんな」と晴秋は苦笑する。 「晴秋さん」 「んー?」 「俺、絶対にと幸せになります」 「んなもん、本人に言え」 素っ気無く言う晴秋に「毎日言ってます」と一樹が返した。 「んじゃ、オレに言うな」 面白くなさそうにいう晴秋に一樹は「すみません」と小さく謝り、晴秋はそんな一樹の足をやっぱり面白くなさそうに軽く蹴った。 |
桜風
12.4.27
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