| 「ねえ、ちゃんの初恋っていつ?」 生徒会室で作業をしていると月子が突然聞いてきた。 ただ黙々と手を動かしていることにちょっと疲れたのかもしれない。 そして、その言葉に月子以外の全員が手を止めた。 「たしか..保育園のときかな?隣のクラスのケンちゃん」 「保育園?!」 「うん。で、そのケンちゃんは隣のクラスのレナちゃんが好きで、レナちゃんはわたしと同じクラスのナオくんが好きで、ナオくんはレナちゃんと同じクラスのシホちゃんが好きでシホちゃんはケンちゃんと同じクラスのショウタくんが好きで、ショウタくんはわたしが好きだった..らしい。前に春姉ちゃんに聞いた」 しれっとが言う。 途中から月子は指を折りながら聞いていた。 「お前、保育園で何角関係を築いてるんだよ」 苦笑しなが一樹が言う。 「なんか物凄くややこしい話だったって春姉ちゃんが笑ってました。もしかしたらもっと多かったかもしれないけどね」 笑ってが返す。 「ちゃん、それって初恋って言うの?」 「さあ?」 肩を竦めてが返す。 「じゃあ、月子はどうなんだ?」 「私ですか?」 目を丸くして月子が言う。 「私、まだかも...」 「ま、鉄壁のディフェンスだもんね」 が言うと颯斗が苦笑した。たしかに、と。 「え?何のこと??」 きょとんとして月子が聞き返す。 「さ、休憩にしようか」 そう言ってが立ちあがった。 コーヒーを入れる準備をしながらがふと手を止める。 「、どうした?豆がないか??」 不思議に思って一樹が声をかけた。 「あ!」と声を上げては自分の鞄に駆け寄って中を漁る。 「やっぱり!!」 「どうかしたんですか?」 颯斗が問う。 「今日、数学の課題出てたよね?」 「ええ、かなり大量に。しかも提出期限は明日」 「ひでぇな」とと颯斗の会話に一樹が呟く。 「ノート、忘れたみたい。ちょっと取ってくる」 「え、ちゃん?!」 月子が声を掛けるのを聞かずには生徒会室を飛び出した。 「颯斗、ついていってやれ」 「はい」 一樹に言われて颯斗は駆け出した。こんな遅い時間にひとりで校舎の中をうろつかせるわけにはいかない。 「さん!」 追いかけてきた颯斗に驚いて振り返る。 「颯斗くん。どうしたの?」 「『どうしたの?』じゃありません。放課後のこんな遅い時間にひとりで教室に行こうと思わないでください」 「でも、颯斗くん忙しそうだったし...」 つっこちゃんと一緒に仕事をしてるわたしと違って、とが言う。 颯斗は盛大に溜息を吐いた。 「まだひと月も経ってないのに忘れたんですか?」 何のことか理解したは「ごめんなさい」とうな垂れる。 先月、は男子生徒に襲われた。 打撲だとかそういうのはあったが、逆にそれだけで終わってよかったのだ。 颯斗と並んで教室に向かった。 「もう夜だねぇ」 窓の外を見ながらが言う。月が冴え冴えと輝いていた。 「そうですね、冬は夜の時間が長いですから」 と颯斗も頷いた。 教室に入って電気をつける。 自分の席に行って机の中からノートを取り出したが、数学が無い。 「あれ?」 「さん、もしかしたら犬飼君に貸したままなのでは?」 颯斗に指摘されて少し考え、「そうかも...」と呟く。 そういえば、今日の数学は1時間目にあって、昼休憩前に犬飼が凝りもせずににノートを借りたのだ。 そして、放課後に返すとか言う言葉をすっかりお互いが忘れててこんなことになった。 「どうしよう、これはまずい...」 「僕の寮が犬飼君の寮の隣ですから返してもらってさんにお届けします」 颯斗の言葉に「いや、それは颯斗くんの時間を取るから...」とが言う。 「大丈夫ですよ。ついでに、食堂が閉まるまで一緒に課題をしましょうか」 「ホントに大丈夫?」とが念を押すと「ええ、大丈夫ですよ」と颯斗が頷く。 「じゃあ、お願いします」 頭を下げたに「はい」と颯斗は微笑んだ。 |
桜風
11.12.2