Kaleidoscope 56





ノートが無いということがはっきりしたため、と颯斗は再び生徒会室に向かう。

基本的に今の時間はもう生徒は校舎の中に残っていないはずなので、校舎の中の暖房は切れている。

生徒会室は暖房施設が校舎のそれから独立しているので生徒会室の中は温かい。

吐く息の白さが冬の凍てつく寒さを思い起こさせる。

「寒いね、早く生徒会室に戻ろう?」

が言うと「でしたら」と颯斗がの手を取った。

指を絡めて握る。

「手を繋ぐならこっちの方が温かいですからね」と微笑んでそういった。

颯斗には何だか時々ビックリさせられる。

「うん...」

は思わず俯く。

こうやって手を繋いでいたら走れない。それに、颯斗の歩調がいつもより遅く感じるのは気のせいだろうか...

そっと見上げると颯斗と目があう。

月光を背に受けて微笑む颯斗はいつもの颯斗に見えず、は慌てて視線を逸らした。

「どうかしましたか?」

「ううん」と首を横に振る。

そのまま無言で生徒会室まで歩き、ドアの前でやっと颯斗がの手を離す。

「あ、」と思わず漏れた声に自分が一番驚いた。

さん?」

「ううん、何でもない」

は首を横に振って颯斗に続いて生徒会室に入った。


「おう、どうした。手ぶらだな。無かったのか?」

帰る支度を始めている一樹が言う。

「あ、はい。クラスメイトに貸しっぱなしにしてた可能性があるので、帰りに颯斗くんが天秤座寮に行ってくれるって」

「ああ、颯斗のところは隣だもんな」

と一樹が納得した。

「今日はもう上がるぞ。月子は先に帰らせた。あんまり遅くまで残ってたら先生たちが煩いからな。お前らも課題が多いみたいだし」

少し悪戯っぽく笑って一樹が言う。

「あ、ちょっと待ってください」

「ゆっくりで良いぞー」

がパタパタと慌てて片付ける。

ドアの外で待つ一樹に「すみません」と言ってが生徒会室から飛び出す。

「うおー...生徒会室出たらやっぱさみーなー...」

ポケットに手を突っ込んで一樹が言う。

「そうですね。冬だなー...」

が同意する。

「そういや、月子が皆で天体観測をしたいって言ってたぞ」

「冬はホント、星がきれいですもんね。秋と違って派手だし。でも、カイロがいる」

が言うと「おばちゃんかよ」と一樹が返した。

「風邪を引くかもしれないじゃないですか」

「そんときゃ、星月先生が看病してくれるだろ」

軽い口調で言われた。

「えー...口うるさいからイヤです」と不満を口にするにクスクスと颯斗が笑う。


一樹と颯斗に職員寮まで送ってもらったは一度部屋に戻った。

必要な勉強道具を持って食堂に向かう。

食事を済ませてそのまま勉強会をしようと言う話になったのだ。

同じクラスの人が近くにいるのはありがたいことだな、と思う。それに、颯斗は面倒見が良いので特にお世話になりっぱなしだ。

ふと、郁の小馬鹿にした顔が脳裏に浮かんだ。

「相変わらず甘ちゃんだね」と言われた気がした。ちょっとムカつく。

さん?」

頭上から降って来た声に顔を上げる。颯斗は少し驚いた表情を浮かべていた。

「遅くなってすみません」

「ううん、こっちこそお使いを頼んじゃってごめんね?」

が申し訳なさそうに手を合わせる。

「やはり犬飼君でしたよ」

そう言いながら颯斗が持ってきたバッグからノートを差し出した。

「今度の魔女さんは、予約してスペシャルメニューにしよーっと」

笑いながらが言うと「そんなものがあるんですか?」と颯斗が驚く。

「うん、この間初めて見たんだけどね。ほら、金久保先輩知ってるでしょう?先輩が凄く豪華なの食べてたから思わずじっと見てたらおすそ分けしてもらって、そのときに教えてもらったの。ある意味裏メニューなんだって。つっこちゃんも金久保先輩に教えてもらったことがあるって言ってた」

「へえ、それは初耳です」

感心したように颯斗が呟き、とりあえず、食事を済ませてしまおうと2人は食券を買いに席を立った。









桜風
11.12.9


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