| 昨晩、皆でふたご座流星群を見た。 降ってくる星に翼は手を伸ばし、それを掴みたいと言っていた。 楽しかったな、と思いながら月子はふと思い出す。 「結局、何でなんだろう...」 は答えなかった。 生徒会メンバーで並んで寝転び、星を見上げていた。 その中で何故星に興味を持ったのかと聞かれた。 自分は幼馴染達と星を見上げていたからそれがきっかけだと応えた。 「ちゃんは?」と聞いてみると「忘れたよ」と言う。 彼女の「忘れたよ」は「言いたくない」に聞こえて月子はそれ以上聞けなかった。 「月子ちゃん」 不意に声をかけられて振り返る。 「水嶋先生?!」 月子は彼の元へと駆け寄った。 「どうしたんですか?」 「実習が終わったらひと月以内にレポートの提出を課題として出されてたからね。それを出さなきゃあの3ヶ月が無駄になるんだ」 そう言って職員室を振り返る。 今提出してきたばかりだと言うのだ。 「陽日先生に捕まりそうだったから『用事があります』って逃げてきちゃった」 笑って言う郁に月子も笑う。 「陽日先生が寂しがりますよ」 「いいんだよ。陽日先生には可愛い生徒がたくさんいるじゃないか」 肩を竦めて郁が返した。 「そういえば、水嶋先生はちゃんを昔から知ってるんですよね?」 「うん、知ってるよ。泣きべそばかりかいてたのこと。がどうかした?」 そういえば、いつから泣かなくなったのだろうか。 「昨日、ふたご座流星群の極大日だったので生徒会で観測会をしたんです。そのときになんで星に興味を持ったのかって話になったんですけど。ちゃんに聞いてみたら『忘れたよ』って言われたんです」 月子の言葉を聞いて郁は少し沈黙し、「それで?」と促してみた。 「水嶋先生なら知ってるかなと思って」 「たぶん、知ってる。けど、月子ちゃんはそれを知ってどうしたいの?」 思いのほか、郁の声が冷たかった。 月子は思わず言葉をなくす。 「月子ちゃん。君はの親友にはなれると思う。けど、それ以上は望めないと思うな」 親友以上、何があるのだろう... 「は、忘れたって言ったんでしょう?だったら、聞かないほうが良いよ。それが、あの子の距離だから。言えるときに言うと思うし、言いたくなかったらこのままずっと言わないよ。それ以上踏み込もうとしたら、友人でさえなれなくなるかもね」 最後の一言に月子はドキリとした。 たまにから感じる壁のようなもの。しかし、その壁を感じてもすぐにその違和感は気のせいだったように振舞われて結局曖昧に終わってしまう。 「ああ、でも。もこの学校に入って随分と変わったから踏み込んでも良いかもしれないかな?その代わり、僕は責任取らないよ」 そう言って郁はその場を去っていく。 3ヶ月間、教育実習生としてこの学校に通った。その間に見たの表情に多少なりとも驚いた。 彼女は家族と一緒にいるときの表情を垣間見せていたのだ。 小さい頃、の両親がまだ生きていたときに何度か星月家に連れられての家に行ったことがある。 それから数年後に星月家にやってきたの表情はそのときと全然違っていた。 有李のお陰で多少は昔のような無邪気さを見せるようになったが、それでもあの子は本心の隠し方を覚えてしまった。 彼女は、星に対して興味を持っていなかった。ただあるのは、『周囲に合わせる』ということだ。 少なくとも、きっかけはそれだろう。今はこの学校に通って勉強についていっているみたいだから、それなりに興味も持てて面白いと思っているかもしれない。 『星月』の中で育ち、兄が星月学園に通っていた。自分や有李も星に興味を持っていたので、はおそらく自分も星に興味を持たなくてはならないというある種の強迫観念に基づいて神話を知り、星を覚えたのだろう。 幼い頃、夜空を見上げるは星を楽しむと言うものではなく、『覚えなくてはならない』という切羽詰った表情だった。 皆が空を見上げているので誰も気付かなかったのだろうが、偶然見てしまった自分は並んで星空を見上げるたびに一度はの横顔を見るようになっていた。 そして、これは誰にも言ってはならないことだと何となく察した。 そういえば... 秋にと星空を見上げたとき、彼女はそれなりに楽しそうに見上げていた。 「やっぱり、変わったのかな?」 肩を竦めて窓の外に広がり始める星空を見上げた。 保健室の前に立ち、ノックをした。 「琥太にぃ、いる?」 ドアを開けると中にいた琥太郎は振り返って苦笑を見せた。 |
桜風
12.1.13
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