Kaleidoscope 62





の手の怪我の完治は当初の見込みどおり大掃除にまでは間に合わなかった。

しかし、クリスマスには間に合った。

クリスマスの準備スケジュールを体育館で説明する。

このクリスマスは規模が大きいため、各クラスの委員会に手伝ってもらうことになる。さすがに生徒会だけで準備は出来ない。

会場は体育館で、準備期間中は体育館の使用は出来ない。

昨年、松を注文してしまった失敗の同じ徹を踏むことはなく、大きなもみの木が星月学園に届けられた。


毎日放課後準備を行う。

夜遅くなることもあり、教師陣が炊き出しを行ってくれた。

メニューは、カレーと、豚汁と..何か。『何か』というのは得体の知れない、料理名が分からないものだ。

「何食べましょうか」

颯斗に声をかけられ、「豚汁かなぁ。カレーは跳ねたら制服が汚れて取れないし」とが呟く。

「お前、そういうことを考えて食事はするもんじゃないぞ」

呆れ口調の一樹だったが「取ってきてやるよ」と言って炊き出しの方へと翼をつれて向かった。

他の生徒も並んでいるので、少しかかるかもしれない。

は再びツリーの飾り付けに戻る。

しかし、背が低い自分は一々脚立や台を持ち運んで飾り付けなくてはならないのが非常に大変だ。

「高いところは僕がしますよ」

不意に傍にやってきた颯斗が声をかけてきた。

「ありがとう。助かっちゃう」

笑ってが言い、飾りたかったオーナメントを颯斗に渡す。

少しして颯斗が準備をしている生徒に呼ばれて「すみません、ちょっと行って来ます」と席を外した。

その間も脚立を持っては飾っていたが、そのもみの木の傍で準備の手伝いをしている生徒が騒ぎ始める。

ずっと集中して作業をしていたから飽きたのかもしれない。しかし、ここで騒いでもみの木が倒れたら誰かが怪我をする可能性がある。

「ここで騒がないでください」

そう注意をしようと脚立から降りていると一人がそのもみの木にぶつかり、それが倒れてきた。

さん!」

力強く腕を引かれては何とか事なきを得た。

振り返ると自分を助けてくれたのが颯斗だと分かる。

ドキドキと鼓動が早い。

「びっくり、した...」

呆然と呟くに、「怪我はありませんか?」と心配そうな表情を浮かべて颯斗が顔を覗きこんでくる。

「うん、大丈夫。颯斗くんのお陰」

そんな会話をしていると一樹が先ほどもみの木を倒した生徒に対して苦言を呈している。

そして、この倒れたもみの木、ツリーは生徒会が何とかすると言って「出来るよな」と振り返る。

颯斗の手を借りて立ち上がったは月子たちと共にうなずいた。


他の生徒を帰してとりあえず、半分まで元通りに出来ればいい方だと話をして作業に入る。

全員でもみの木を起こして、それぞれが作業を行った。

ある程度修復は出来た。

しかし、これ以上の作業はちょっと出来そうにない。

「とりあえず、仮眠を取るか」

一樹が言い、翼と月子が寝付く。

「早いなぁ...」

が苦笑すると「ほら、お前も寝ろよ」と一樹に促された。

さん、こちらに」

そう言って颯斗が一樹と自分の間をぽんと叩く。

「うん」と頷いてがそこに座り、「寒くありませんか」と颯斗が顔を覗きこんだ。

「大丈夫」

そう言ったはすぐに寝息を立て始めた。

「ホントのとーちゃんになったみたいだ」

苦笑して一樹が言う。

「そうですね」

颯斗も目を細めて、既に寝息を立てている3人を見た。

「おい、のやつ。ちょっと熱がないか?」

隣に座ってくっついているので彼女の体温が上がっていることが良く分かる。

一樹が慌てて颯斗に言うと「さんは寝ると体温が上がるらしいんです」と修学旅行のときに琥太郎から聞いた話をした。

「そうなのか。じゃあ、大丈夫なんだな」

「おそらく。顔色は悪くありませんし、先ほども調子が悪そうに見えませんでしたから」

颯斗が頷き、「そうだな」と一樹も安堵の息を漏らす。

「じゃ、お前も仮眠取れよ。まだしなきゃならないことは沢山ある」

一樹の言葉に「はい」と頷いた。

すでに一樹は寝息をたてている。

クスリと微笑み、颯斗は隣居座るの寝顔を覗き込む。

少し一樹のほうに傾いでいた彼女の体を自分の方に寄せた。

ことりとの頭が自分の肩に乗る。

その重みが心地よく、颯斗も次第に眠りの淵へと降りていった。









桜風
12.1.20


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