Kaleidoscope 63





クリスマスパーティが無事に終わり、粗方の片づけをして帰ることになった。

「これ、生徒会室にもって行きますね」

が声をかけると「ちょ、お前一人で行くな」と一樹が止める。

「僕がついて行きましょう」

颯斗がそう言っての持っている荷物もさりげなく取り上げる。

「おう、颯斗。頼むな」

一樹がそう言い「はい」と颯斗は返事をしてさっさと生徒会室へと向かった。

「あれ、颯斗くん?!」

は慌ててその後を追う。


生徒会室に荷物を置いて戸締りの確認をする。

「さ、帰ろうか」

が声をかけると「はい」と頷いた颯斗が「あ、でも」と訂正した。

「なに?」

「もう一度、ツリーを見に行きませんか?」と誘う。

「うん、いいよ」

が頷き、生徒会室のドアを施錠して先ほど通ってきた道を戻ってみた。

既に皆帰った後のようで、誰もいなかった。

「こんなに大きなツリー、間近で見るのなんて中々出来ないよね。去年は松だったし」

が言うと颯斗がクスリと笑う。

「僕は..クリスマスが嫌いです」

「ん?」

颯斗の呟きにが振り返る。

「たった1日、それで帳尻合わせをしているようで僕は嫌いです」

「帳尻合わせ?」

「僕のクリスマスの思い出は、冷めた食事とろうそくが1本立ったケーキ。そして、押し付けがましいプレゼント。普段子供を放ったらかしにしている大人がそれを繕う日なんです」

「颯斗くんの家って、ご両親が忙しい人なんだ?」

が言うと「ええ、まあ...」と歯切れ悪く返された。

「そっかと」はツリーを見上げる。

「ウチの両親も働いてたから、中々遊んでくれなかったけど、それでもご飯は一緒に食べてくれていたな。少なくとも、朝食くらいは。
クリスマスプレゼントも用意してくれた。クリスマス前に『サンタさんに何をお願いするの?』って聞かれて、『ないしょ』って言うと..今思うと慌ててた。必死にわたしが欲しいプレゼントを聞き出そうとしてた。
両親にもらったクリスマスプレゼントって結局2回..くらいかな?もらえた。
けど、もうそれはないの」

そう言っては俯いた。

「...失くされたのですか?」

「ううん、捨てられた」

困ったように笑って振り返るの言葉に颯斗は息を飲む。

「両親が亡くなったときに、一応わたしを引き取ろうとした親戚達が『邪魔だから』ってわたしの宝物、たくさん捨てちゃった。要るのは、お金になりそうな親の装飾品とか、骨董品のような置物とか。子供のオモチャは価値がないくせに場所をとるから捨ててったの。
それらを処分された後に、星月のおじさんが、ウチの父の知り合いの弁護士と共にやってきて、親の遺言書を見せてわたしを引き取ってくれたの。
でも、今思うとおじさん、凄く想ってくれたんだなって。
捨てられた『代わりのもの』を買い与えようとしなかったの。
代わりがないのを知ってたから、だと思う。
その分、両親の話をたくさんしてくれた。わたしの知らない両親のこと、たくさん。
だから、わたし。お姉ちゃん達よりお父さん達のことよく知ってると思う」

くしゃりと笑ってが言う。

「...さんは、幸せですね」

颯斗の言葉に少しだけ鋭いものを感じたは少し困ったように笑う。

「うん、少なくとも不幸だとは思ってない、かな?」

少しの間沈黙が降りる。

「そろそろ帰りましょうか。夜も遅いですし、随分と冷えてきました」

「そうね、風邪引いて片づけが出来なくなったら翼くんに当分何か言われちゃうかも」

肩を竦めてそういったに頷き、颯斗はドアに向かう。

それに続いて数歩進んだは足を止めて振り返り、ツリーを見上げた。

先に外に出た颯斗が入り口で待っている。

は慌てて駆けて彼の元へ行き、ドアを閉めた。









桜風
12.1.27


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