Kaleidoscope 65





大晦日、生徒会室に一旦集合となった。

今日の夕飯は鍋にすると言う。

材料の買出しを颯斗と共にが分担することになり、街へのバスに乗った。

「鍋かぁ...」

が呟く。

「苦手なものとかありますか?」

買出し部隊のさじ加減で多少は融通が利く。

「ううん、好き嫌いのない、いい子だよ」

笑ってが言う。

「そうですか」

「颯斗くんは?」

「僕も..あまり好き嫌いは無いと思います」

「じゃあ、好きなものを買って帰ろう。定番は外すと一樹会長がうるさいだろうから、そこはちゃんと押さえて」

「そうですね」と頷く颯斗に笑顔を見せては窓の外を眺めた。

鍋は苦手だ。

距離のとり方がわからない。

お皿に乗せられたものの場合は、何処までが自分の領域かが分かりやすい。そこの中だと誰にも迷惑をかけることがない。

だが、鍋のように皆でつつくものとなると誰かの領域を侵害しそうで手が出せなくなる。

星月の家では冬は良く鍋だった。

辛いのが苦手だったのためにキムチ鍋は控えてくれていたが、大人は辛いものが好きだと知ってキムチも食べられるように頑張ってみた。

我ながら、必死だなと思う。

嫌われないように、要らない子といわれないように。

いつの間にか、他人と接するときは距離を測るようになった。

けれど、この学園でせっかく測った距離を無視する人に出会った。

そうしての中でそういう感覚が少し鈍くなったのも自覚している。だから、時々怖くなって、一旦距離を置くことがある。

一度、離れて距離を測ってまた嫌われそうにない距離まで近付く。

ちゃんと上手に出来ているだろうか。

ブザーが鳴った。

「次ですよ」

隣に座った颯斗に声をかけられて自分の思考の渦に嵌っていたははっと顔を上げる。

「あ、ホントだ」

バスに乗ってすぐには窓の外を眺めながら静かに口を噤んでいた。

時々窓に映るの表情は沈んだもので、それを目にした瞬間声をかけて良いものか颯斗は悩んだ。

「お疲れですか?」

「ううん、そんなことないよ」

笑顔を見せるに颯斗は安堵の息を吐いた。


街で買い物を済ませてふと、颯斗は足を止める。

「どうしたの?」

「ちょっと寄り道しませんか?」

颯斗が指差したのはクレープ屋だった。

少し悩んだが、「いいね」とは笑い、颯斗と並んで店に向かった。

寒いが外のベンチに座ってクレープを頬張る。

「美味しいね」

笑顔を向けるに颯斗は苦笑し、「クリーム、ついてますよ」との口の端についたクリームを指でふき取ってぺろりと舐める。

「うわ、ありがとう」

赤くなって言うに「どういたしまして」と颯斗は微笑む。

いつものだ。

「そうだ、颯斗くん」

が何かを思い出したように嬉しそうに見上げてきた。

「はい」

「お姉ちゃんがね、今年のクリスマスにラッパを吹いたんだって」

「ラッパ...トランペットですか?」

「うん。何か、お姉ちゃんのところで音楽隊が毎年クリスマスイブとクリスマスにチャリティコンサートをしてるんだって。それで、今年もそのコンサートがあったんだけど、今回トランペットの人がインフルエンザにかかってしまって演奏できなくなって。
お姉ちゃんのことを知ってた人が急遽お願いしてきたらしくて、引き受けたんだって。映像撮ってたみたいだから、送ってくれるって言ってた」

「そうなんですか。僕にも見せてください」

「うん、一緒に見ようね」

にこりと微笑んでが言う。

「そういえば、颯斗くんってきょうだいいるの?」

家族構成について聞いたことなかった。

の質問に「兄と姉がいます。けど、さんの家みたいに仲良くはありませんよ」と返した。

後ろの一言にはそれ以上の質問は受け付けないと言う意思を感じられた。

は慌てて口を閉じる。

これ以上は踏み込んではいけない領域だ。

わざとらしいと思われるかもしれないが、話題を変え、そのことに関して颯斗は特に不快そうにしていなかったのでほっと息を吐いた。









桜風
12.2.10


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