Kaleidoscope 66





街から帰ってみるとまたしても一樹が悪巧みをしていた。

闇鍋をすると言う。

「美味しそうな材料を買って帰ったのに...」

が言うと

「それは、『光鍋』として美味しくいただく。そしてもうひとつ『闇鍋』を作るんだよ」

と笑いながら答えられた。

と颯斗は顔を見合わせ、肩を竦める。

「お前らも食材提供しろよー。ちゃんと『食べられるもの』だからな」


一度寮に戻って食べられるものを探す。

「普通の持ってったら怒られるかな?」

簡易キッチンがついているのを知っているので、兄が餅を送ってきてくれていた。

真空パックに入った切りもちだ。よもぎ餅。

「ま、いっか」

どうせ変なのと混ざって闇鍋らしいものになるだろう。

食材を提供すると「お前、普通過ぎないか?」と一樹に指摘された。

「混沌の中に入れれば普通も普通じゃなくなります」

が言うと「それもそうだな」と苦笑した一樹はそれを受領した。



夜になり、屋上庭園で年越し鍋パーティが開かれた。

ドアを開けるとコタツが設置してあって驚いた。

どうやら、先生方のコタツを失敬してきたらしい。ただし、琥太郎のコタツは残念ながらしっかりと固定されていたため運び出すことが出来なかったとか。

「ある意味、星月先生の家だからね」

が言うと「そうかもしれませんね」と颯斗が苦笑した。

光鍋は美味しく頂いた。

颯斗が器によそってくれたお陰で思ったよりも食べることが出来た。

そして、闇鍋。

「わたし、闇鍋なんて初めて」

が呟と「私も」と月子が言う。

「よーし、ルールを説明するぞ」と一樹が闇鍋ルールを説明し始める。

一度掴んだものは責任持って食べること。

以上だそうだ。

が掴んだのは、自分の入れた切り餅だった。

「これ、なんですか?」

「自分の元へと戻ってきたもの..だと思う。よもぎの切り餅」

颯斗の問いに答えてはえいやと食べた。

「うあぁぁぁぁ...」

ごくりと飲んだ後、口からそんなうめき声が漏れた。

「だ、大丈夫ですか?」

「よもぎ餅、好きなのに...」

呻くの背を颯斗が優しく撫でる。

「吐きそうですか?」

「そこまでじゃないから大丈夫。ありがとう」

顔を歪めたままは笑顔を作った。

そのまま屋上では阿鼻叫喚地獄絵図が出来た。

とりあえず、闇鍋は二度とチャレンジしたくないとは心に深く刻んだ。


除夜の鐘が聞こえ、新年までのカウントダウンを始めて新年を皆で迎える。

不思議だなと思った。

他人の中で育ったのだから、他人と新年を迎えるのはいつものことなのに、今年は何だか違う。

「あけましておめでとうございます、さん。今年もよろしくお願いしますね」

隣に座っている颯斗が言う。

「あけましておめでとうございます、こちらこそよろしくね」

ペコリと頭を下げ、他の人たちにも挨拶をした。









桜風
12.2.17


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