Kaleidoscope 69





新学期が始まり、移動教室で颯斗と一緒に歩いていると音楽部の生徒が声をかけてきた。

「あの話、どうだ?」

何の話だろう、とは首を傾げる。

そもそも自分が一緒にいて聞いて良い話なのか分からない。

「僕には、無理です。すみません」

どうやら颯斗は断ったようだ。

何の話だろう、と思って颯斗を見上げた。

彼の表情を見てその質問を避けていることが分かったは何も言わず、次の授業の話をし始めた。


放課後、生徒会室に行く。

一樹から集合がかかっているのだ。

生徒会室に入るとドカンと爆発があった。

「新年一発目の発明が失敗なのだ...」

翼が嘆き、一樹が怒鳴る。

颯斗が呆れて片づけを始めた。

片づけが終わって今学期最初の生徒会執行部の会議が始まった。

議題は、生徒会長選挙について。

自然とみんなの視線が颯斗に集まる。

部屋の中の空気が重苦しくなり、やがて解散となったときには皆がいなくなった。

仕事が残っているので一樹は残っている。

「一樹会長が仕事をしていると、少し違和感がありますね」

同じく残ったが言う。

「颯斗を追いかけるかと思ったぞ」

驚いた表情の一樹に「今はちょっと無理でしょう」と言う。

「あいつしかいないとオレは思ってるんだけどな」

「わたしもそう思いますけど。こういうのって結局本人の意思がないと何にもなりませんしね」

そう言ったは窓の外を見る。

「雪、降りそうですね」

「んー?そーだな」

「仕事、手伝えるものがあったら言ってください。一樹会長がやる気を出しているうちに済ませそうなの、片付けましょう」

「おう、悪いな」

そう言って一樹の手伝いをしながらはこれからのことを思う。

どうなるのだろうか...

一樹がこの場からいなくなるのは既に分かっていたことなので特に気にならない。

だが、それ以外の人がいなくなるのは寂しい。

沢山の別れを経験しているし、永遠の別れではないのは知っている。

それなのに『寂しい』と思う自分に多少なりとも驚いた。

随分と昔に欲しいと手を伸ばすのをやめた。

自分の願いは誰かを不幸にする。だから、願い事はしない。

、欲しいものは欲しいといわなきゃわかんないんだぞ」

不意にそう声をかけられて驚き、顔を上げる。

しかし、一樹は書類とにらめっこをしているため顔を上げていない。

「わかってます」

の言葉に「そうか。ならいい」と一樹が頷いた。

自分の欲しいものを誰も分からなくて良い。だから、口にしない。



翌日、教室で会った颯斗が少し警戒しているように見えた。

は生徒会長選挙のことに触れることなく、それからの数日を過ごす。

立候補者受付け期間に入り、生徒会室に立候補者が現れた。

彼は自信満々で、生徒会室にやってきた颯斗に勝利を宣言する。

ここ数日生徒会室に顔を出していなかった颯斗が生徒会室にやってきた用事は、正式に一樹に自分は立候補しないと伝えるためだった。

自分がいては皆に迷惑になると言う。

その言葉を受けて一樹が颯斗を殴り飛ばした。

自分を過小評価するのは構わないが、颯斗を必要としている生徒会の仲間に対して失礼だ、と。

颯斗はそのまま生徒会室を出て行った。

翼も帰り、月子も部活があるので生徒会室からいなくなる。

「お前は、居なくならないのか?」

「発明の用事もありませんし、部活も入ってません。残念ながら保健係の仕事も声がかかってないので」

一樹が苦笑し、「そりゃ、残念だな」と言う。

「それに、受け付け業務がまだ残ってますから」

毎日5時まで生徒会長立候補者を受け付けている。

「俺は...颯斗にとって重荷にしかならないのだろうか」

「颯斗くんは自分が意外と力持ちだってのに気付いていませんしね」

は...いや、いいや。受付ならオレがしておくからお前も帰って良いぞ」

そう言った一樹は「ひとりにしてくれ」と言っているように見えたので「じゃあ、お願いします」とは鞄を手にして生徒会室を出て行った。









桜風
12.3.9


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