Kaleidoscope 70





生徒会室を後にして、屋上庭園に向かった。

ベンチに座っている生徒を見て「あら」と呟く。なんとなく来ただけなのに。

「星に導かれましたか?」

一人おどけて彼の元へと足を向けた。


俯いていた颯斗は目の前に女子が立ったことに気が付いた。

足元を見れば分かる。

そして、それが誰かも何となく分かった。

「僕に、何の用ですか?」

「隣、座っていい?もうちょっとしたら星が出るし」

「...構いませんけど」

がすとんと座る。

頬にひんやりとした感触がある。

「寝てるときは人間湯たんぽとかいわれてるんだけど。冬は結構手先が冷えるからこんなときは便利ね」

一樹に殴られた颯斗の頬に触れながらが呟く。

さんは、僕に何も言わないですね」

「言って欲しい?」

「...言って欲しくないのに、一樹会長や月子さん、それ以外の人たちが僕に生徒会長になれと言うんです。僕には荷が重過ぎます」

「颯斗くんって、わたしとちょっと似てるなって思うときがある」

ポツリとが呟いた。

ゆっくりと彼女に視線を向けた。何処が似ているのだろうか。

自分はこんなに弱くて、沢山の期待を裏切って逃げようとしているのに。

「ねえ、颯斗くん。泣きたいときには泣いて、笑いたいときには笑ったら良いんだって。たまには逃げても良い。必要なときもある。欲しいものには手を伸ばさないと他の人はわかんないんだって」

が何を言いたいのか分からない。颯斗はじっと彼女の言葉の続きを待った。

「わたし、それが全部出来ないの。自分が何かを要求したら誰かを不幸にしちゃうと思っちゃうの。流れ星にお願いすることすら怖いの。
だから、本当は颯斗くんに言いたいことがあるけど、怖くていえないだけ。ごめんね」

「僕に、言いたいこと?」

「そうね、お願い事は苦手だけど。言える事はあるかな。
わたし、引き続き生徒会執行部に置いてもらえたら、副会長だろうと書記だろうと会長を助けて目いっぱい頑張るよ。おそらく、つっこちゃんや翼くんも。一樹会長は一樹会長。後任の会長は後任の会長。お兄ちゃんはお兄ちゃん。みんな違うんだからやり方も雰囲気も変わるわよ。全く同じじゃないといけないなんて誰も言わない。言う人がいても無理な話なんだから一々気にしてもしょうがない。
わたし、会長を支えること投げ出さない。これは、約束できるから」

にこりと微笑んだ。まっすぐなの笑顔が今は辛い。

「僕は、生徒会に入った最初の動機が不純なんです。生徒会を僕の大学入学のための内申を良くするために利用しようとしました。
そんな僕が生徒の頂点に立って、責任を持って良くしていくことなんて出来ません」

「...最初は、どうでも良いんじゃない?」

がきっぱりと言う。

「そんなの、最初なんて皆そうかもよ。お兄ちゃんも一樹会長も最初は何を思って生徒会長になったかなんてわかんない。けど、今の一樹会長を見たら、たとえ最初がどうであれ、彼が生徒会長だし。颯斗くんの最初の動機がどうであれ、颯斗くんは不知火一樹生徒会になくてはならない副会長よ。颯斗くんが居なかったらなり立たないのよ、今の執行部。一樹会長を抑えて、翼くんの暴走にブレーキを掛けられるのは、これだけ優秀な生徒が揃っている星月学園でも颯斗くん以外居ないでしょう?」

呆然とを見る颯斗に彼女はにこりと微笑んだ。

「最初はどうであれ、颯斗くんは今の生徒会に必要な人だし、この先もきっと学園に必要な人だよ」

そう言っては立ち上がって空を見上げた。

「シリウス見っけ!」

指差した先には青白い光。

「じゃ、わたし先に帰るね。颯斗くんも体冷やす前に帰るんだよ」

スカートを翻しては駆けて行く。

「僕が、必要...?」

呆然と呟いた颯斗は空を見上げる。

が言ったとおりシリウスが煌々と輝いていた。









桜風
12.3.16


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