Kaleidoscope 79






2月の半ばにはこれまた生徒会企画のお祭り騒ぎがある。

男子校ではまずありえない、バレンタインだ。

本命チョコが1個、校内に隠される。そして、そのほか多数のダミーチョコ。

本命チョコを手にした生徒は生徒会からご褒美をもらえる。

とりあえず、生徒会に対してお願いが出来るのだ。

昨年は一樹のジャケットのポケットに隠されていたので本命チョコは見つかることはなかった。

今年は彼は持っていないとのこと。

「颯斗くんたちは知らないんだよね?」

バレンタインイベントがスタートし、生徒会室に戻る中でが問う。

「ええ、僕と翼君はダミーチョコを隠しましたが、本命チョコは会長が隠したので知りません」

そう言った颯斗はそっとの耳元に顔を近づけ、「本当は、僕も探したいんですけどね」と言う。

不思議そうに見上げるに「大抵のご褒美の内容、想像つきますから」と肩を竦めた。

ご褒美の内容...

何だろう、と考えていると一人生徒会室に乗り込んできた生徒がいる。

琥太郎の白衣のポケットに隠されていたチョコレートを見つけたとか。

颯斗と翼に確認し、それが一樹が隠した本命チョコだと認定され、今年のバレンタインは比較的早くに終わった。

本命チョコを持ってきた生徒がご褒美として生徒会にお願いしたことを聞いては颯斗を見上げた。

「想定外です」

の聞きたい事を察した颯斗は呆れたように呟いた。

、もか?」

その生徒に一樹が確認する。

「はい!」

「こいつ、空手の黒帯だけど。いいのか?」

もう一度確認する。

「...夜久さんだけで」

彼が訂正した。

「え、手加減の一つや二つできますよ?」

素振りをしながら言うに「夜久さんで!」と生徒が怯えながら言う。

「月子、やってやれ」

「えー...?!」

ビンタをご褒美にお願いすると言うのはなんとも理解し難く、「一生理解できそうにありません」と颯斗は首を横に振る。

おそらく、この部屋にいる生徒会メンバーの皆が思っていることだ。

しかし、月子のビンタを食らった彼は嬉しそうに部屋を出て行った。

「来年はこれも却下にしてください!」

月子が居た堪れないように訴えた。

「お姉ちゃんなら喜んでぶっ飛ばしそうだけど...」

「それ、既にビンタのレベルじゃないぞ」

の呟きに一樹がツッコミ、今年のバレンタインは無事に終了した。


早々に皆は生徒会室を後にした。

引継ぎの中、少し事務が滞っていることもあって颯斗が居残りをすると言い、もそれに付き合っている。

さん」

仕事をしていると名前を呼ばれて顔を上げる。

頬杖をついた颯斗がをじっと見ていた。彼が仕事をサボるなんて珍しい。

「今日は、何の日ですか?」

「...バレンタインデー、です」

「僕は、あなたの何ですか?」

「か...彼氏です」

「では、僕は彼女であるさんから何故チョコレートがもらえないのですか?」

痛いところをつかれてはグッと詰まった。

「あのね、昨日の夜にバレンタインチョコを作ってたんだけど、失敗して...作り直そうにも材料がなかったし、買いに行くことも出来なくて。週末まで待ってもらえると、また材料を買ってきて作れるんだけど...ダメ?」

首を傾げてがお願いする。


颯斗は立ち上がり、机から離れてソファに座った。

ポンポンとその隣を叩く。

はその隣に座り、颯斗を覗うように見上げた。

さんは、いけない人ですね」

「ごめんなさい」

俯くの頬を両手で包み、顔を上げさせる。

「そんな風にお願いされたら、ダメとはいえません」

「本当?」

「ええ。でも、今日何もないのは僕としても寂しいので」

そう言ってにキスをした。

「あの、颯斗くん?!」

「まだまだ」

そう言って何度も啄ばむようににキスを繰り返し、やがてそれも長く甘いものへと変わる。

やっと開放されたは真っ赤になり、「今年のバレンタインはもうお終い!」と宣言した。

「僕は、さんが作ってくれるチョコレートも欲しいです」

はっきりそういった後に「ダメですか?」と覗うようにつけ足す颯斗は確信犯だとは思った。

「颯斗くん、ずるい」

が拗ねていうと「僕はさんに対して随分と欲張りなようです」と笑顔で返し、再びキスをした。









桜風
12.4.27


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