Kaleidoscope 81





青空颯斗会長の下、生徒会は卒業式に向けて精一杯の準備をした。

自分達の大好きな先輩達の卒業だ。

準備が終わり、会場の確認に来ていると一樹が姿を見せ、月子の提案で天体観測をすることになった。

何度もこのメンバーで夜空を見上げた。

」と呼ばれて振り返るとぽんと頭に手を載せられる。

「欲しいものはちゃんと欲しいって言えよ。お前と颯斗はお互い本音を中々言えないからな...そこがちょっと心配だ。今は、颯斗が居る。月子も翼も、姉ちゃんも兄ちゃんも星月先生もいる。俺もいる。自分のためにわがままになれ」

「...一樹会長って、たまにかっこいいですよね」

「ばーか、俺はいつでもかっこいいんだよ。今頃気付いたか」

苦笑してにデコピンをした一樹はから離れて翼と騒ぎ始めた。



ふと、周囲が静かになったと思って振り返ると誰も居なかった。

誰も、ではなく颯斗以外いなかった。

「颯斗くん、皆は?」

「帰りましたよ」

寂しげに微笑む颯斗を見てはその手を取る。

「どうしたの?」

「いいえ、何でもありません」

『何でもない』の顔ではない。

「こっち」と颯斗の手を引いてベンチに座った。

「ね、颯斗くん。さっきね、一樹会長に言われたの。わたしも颯斗くんも本音が言えない子だった。実際、わたしもそういうの苦手だし、颯斗くんもそうだよね?」

の言葉に颯斗が頷いた。

「だから、少しずつで良いから練習しよう。と、言うわけで。颯斗くんは何故そんなに悲しそうな顔をしているの?一樹会長が明日で卒業しちゃうから?」

顔を覗きこんで言うに複雑そうな表情を見せる。

「僕は、今でも自信がないんです」

「なんの?」

「僕で良いのか、と。さんの隣に居るのが僕で」

ぺしんと乱暴には颯斗の頬を両手で包んだ。

「次、そんなことを言ったら一週間手を繋がない」

きっぱりと言うに泣きそうな表情を見せた。

「わたしは颯斗くんが良い。あ、ねえ。目を瞑って」

「目、ですか?」

「わたしがあけて良いって言うまであけちゃダメよ?」

言われて頷き、そのまま瞳を閉じた。

は颯斗の左手を取ってごそごそと何かをし始めた。颯斗は少しくすぐったくてクスクスと笑う。

目の前のは「む〜」と唸っている。

さん?」

「まだだめ!」

何をされているのだろうか。

「はい、良いよ」と言われて目をあける。

「あの、これ...」

「都合よく赤い糸なんて持ってないの...」

肩を竦めて言う。

颯斗の左手の小指には自分の左手の小指を重ねてまとめて自分のハンカチで結んだ。

ハンカチの色は、赤に近い。模様があるのではっきりと赤とはいえないが概ね赤だ。

「これは...」

「今度、赤い糸をもってくるから再チャレンジさせて」

少しばつが悪そうにが言う。

颯斗は手を伸ばしてを抱きしめる。

向かい合って抱きしめると左手同士を結んでいるのでお互いの間にの左腕が入る。

「あ、ちょっと待って。外す」

「外さないでください。もう少しだけ、お願いします」

懇願するように言われては手を止め、「え、と。じゃあ、こうだ」と言って颯斗の前に座る。こうすれば難しくない。

颯斗はを後ろから抱き締めた。

「僕の昔話、聞いてくれますか?」

「颯斗くんの話なら何でも聞くよ」

「ありがとうございます」

そう言って颯斗は話し始める。

昔、一度だけ親に読んでもらった童話。それが赤い糸の話だった。

それ以来、自分はそれに憧れ、その反面、自分の取り巻く環境のお陰でそんなものは幻想だと思っていた。

心の底で欲していた赤い糸。誰かが必ず自分を必要としてくれる証。

「じゃあ、ここにあったね」

そう言っては自分の左手を掲げ、一緒に颯斗の手が掲げられる。

「あなたは...!」

自分を抱き寄せる颯斗の腕が震えていた。

「颯斗くん?どうしたの?」

不安そうに振り返ったの目に入ったのは颯斗の涙だった。しかし、表情は幸せそうで思わず目が離せなくなる。

「幼い頃の僕に、僕は伝えたいです。今は寂しくても、この先僕が愛する、そして、僕を愛してくれる人が現れるって。だから、頑張れって」

「颯斗くん、ごめんね。遅くなって、ごめんね。もっと早く颯斗くんに会えたら、寂しい思いをしなくて済んだよね」

自分の体に回された颯斗の腕にそっと手を載せてが言う。

「いいえ、今あなたが居てくれるだけで充分です」

そう返した颯斗はの頬にキスをした。









桜風
12.4.27


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