| 卒業式では、生徒会執行部ひとりひとりからの送辞がある。 はありったけの『ありがとう』を込めて送辞を卒業生に送った。特に、ずっと見守ってくれた一樹に向けて。 笑顔で見送ると皆で約束したが、結局、その約束を守れたのはだけだった。 「少しくらい泣いてよ、女神ちゃん」 白銀の言葉に「最後くらい、それをやめてくれませんか?」とは笑顔で返す。 一樹は苦笑した。 「ほんとに、泣かないな」 「今生の別れというわけではないでしょう?」 二度と会うことが出来なくなった。そんな経験をしているは卒業と言う区切りであえなくなることなんて何でもない。 その気になれば会いに行けばいいのだ。 「強いな、は」 「たくさん、お別れはしてきましたから」 微笑んでが言う。 「ま、何はともあれ」 そう言って一樹は自分との別れを惜しむ後輩たちに腕を伸ばしてまとめて抱きしめる。 「とーちゃん、お前らが大好きだ。あとは、任せたぞ」 翼はわんわん泣くし、月子も同じく泣いている。 颯斗は控えめではあるが、やはり一樹のその言葉で涙が溢れてきた。 「任せてください。一樹会長の代に勝るとも劣らない生徒会執行部として活動します!」 「おい、颯斗。副会長が所信表明したぞ」 苦笑して一樹が言い、颯斗は涙を拭った。 「さんの言ったとおり、一樹先輩にも、晴秋さんにも負けないような生徒会にします」 まっすぐ自分の目を見て言う颯斗を見て一樹は胸が熱くなった。 強くなったな、と思ってガシガシ颯斗の頭をなでる。 「任せた!」 そう言って颯爽と正門をくぐって出て行く。 あの背中を見て、目標にして進めば安心できた。 だが、もうあの背中は追いかけられない。自分の道を選んで、歩んでいくしかない。 颯斗は顔を上げて空を見上げた。 「颯斗くん」 下から声がして見下ろす。 「大丈夫、皆居るから」 ニコリと微笑んでが言う。 「ええ、そうですね」 颯斗は頷き、月子を、翼を見る。2人は颯斗に頷き返す。 「行きましょう。片づけがありますし、次は、入学式です」 「ぬいぬいさー!」 翼が元気良く手を上げ、皆で体育館へと向かった。 翌年、たちは無事卒業した。 颯斗の後任は翼で、彼もまた1年で成長した。 **** 星月学園を卒業してから月日は流れた。 「あーん!、可愛い!綺麗!!颯斗にくれてやるには勿体無い!今からでも遅くないから思いとどまらない?」 新婦の控え室で夏凛が本気の目をして言う。 その隣には数年前にたちの『義兄』となった人が苦笑しながら立っていて、「姉ちゃん、今更だろう...」と晴秋が呆れている。 「あんた、このを見てなんとも思わないの?!」 「つうか、オレは姉ちゃんを最後の砦に用意したんだからそれを落とされたら投降するしかないだろう」 「何が『用意』よ!生意気!!」 「...夏姉。往生際が悪いぞ」 同じく呆れた表情の琥太郎が声を掛けた。 「ちゃん、本当に綺麗よ。いつでも出戻っておいで」 琥春の言葉に「その手があった!」と夏凛が手をポンと叩く。 「晴れの席でのものとは思えない発言だな...」 窓の外は快晴で、たちの門出を祝っているような空だ。きっと日が沈んだ後も美しい星空が広がるに違いない。 部屋のドアがノックされて入ってきたのは既に支度が済んだ颯斗だった。 「おー、似合ってんじゃん」と晴秋が言い、「青空はスタイルが良いからな」と琥太郎が言う。 「さん」 そう言って颯斗はの元へと足を進める。 「オレらは無視か」と晴秋が肩を竦め「目に入ってないんだろうなぁ」と琥太郎も苦笑した。 の手を取り、颯斗は彼女の顔を覗きこんだ。 「僕は、世界でいちばん幸せです。とても綺麗ですよ」 「ちょっと、颯斗!」 割り込もうとした夏凛を振り返り、「僕は、きちんとクリアしましたよ?」と勝利を宣言する。 グッと詰まった夏凛が二歩三歩下がる。 「凄いな、青空」 「心から尊敬だな...」 いつも理不尽な拳骨を食らっている晴秋と琥太郎がこそこそと囁きあっている。 「くそっ、1回は躓くと思ったのに...」 口の中で夏凛は呟き、颯斗は再びを見た。 「颯斗くん、わたしも世界でいちばん幸せだよ」 の言葉に颯斗は目を細めた。 扉がノックされ、式場の準備が整ったと声を掛けられた。 「では、先に行ってあなたを待ってますね」 そう言って室内のの身内に挨拶をし、部屋を後にした颯斗に続いて皆が部屋を後にした。 静かになった部屋の中では窓際に向かった。 窓の外は快晴で、開いている窓から部屋の中に吹き込んで頬を撫ぜていく風は颯斗のピアノの音色みたいに優しいものだった。 |
桜風
12.4.27
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