月光 2





今は夏。体育祭を間近に控え、生徒会執行部は忙しかった。

ちなみに、今年も女子は入らなかった。

「結局女の子の後輩、出来なかったね」

月子と共に、生徒会室を出て職員室に向かう道すがらそんな話題になった。

「ねー。せっかくの高校生活が...」

「つっこちゃんは部活の方で男の子とはいえ、後輩がまた増えたのに、わたしは...」

翼だけである。

別に、不満はないがもうちょっといても良い。

「なら、今からでもウチに入る?」

「何てことを言うの」

が笑い、「え、本気だよ」と月子が返した。

「ね、ちゃん」

「ん?」

「あのね..颯斗くんとどうなの?」

こそっと聞かれた。

「どう..って?」

「キスとか...」

言われた途端にの顔が耳まで真っ赤になった。

「颯斗くん、優しいし。いいなぁー、素敵な彼氏じゃない」

「うーん...」

優しいのだ。優しいが、おそらくその分、自分を殺している。

「何でも、自分の気持ちを言ってね」ってお願いしているのだが、これまで中々颯斗が自分に気持ちを伝えてくれたことはない。

勿論「好き」は何度も「おなかいっぱい」と言っても繰り返して言う。

しかし、それ以外の言葉、感情は向けられていない。

「喧嘩、したことがないの」

しょんぼりして言うの気持ちが良く分からない。

月子は首を傾げた。

仲が良いなら良いに越したことはないだろうに。

「何が嫌なの?」

聞かれたは慌てて首を横に振る。

「嫌ってワケじゃないの。喧嘩はしたくてするもんじゃないし。したくてするもんじゃないけど、気持ちを口にしなきゃ出来ないことじゃない?」

確かに、そうかもしれない。

月子は頷く。

「わたしもそう言うの苦手だけど、颯斗くんも苦手なの。わたしが颯斗くんの優しさに甘えてしまってるんだろうな、って。颯斗くんの言葉で嫌な思いをしたことがないもの」

そこまで言ってはハタと思い出す。

突然足を止めたに月子が振り返る。

「どうかしたの?」

「わたし、喧嘩の仕方がわからない」

「え?!」

月子は驚いた。

こう見えて、幼い頃は幼馴染と喧嘩をしたりもした。

いつの間にかしなくなったけど、偶に意見の衝突もある。

「今までの友達とか」

「いない。わたし、つっこちゃんが初めての友達だもん」

真顔で言われて月子は驚く。



職員室での用事を済ませると「」と声を掛けられた。

琥太郎だ。

「先に生徒会室に戻っておくね」

月子が言い、は頷く。

「何ですか?」

「ちょっと、頼みがある」

そう言って共に保健室に向かった。









桜風
12.8.24


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