| 今は夏。体育祭を間近に控え、生徒会執行部は忙しかった。 ちなみに、今年も女子は入らなかった。 「結局女の子の後輩、出来なかったね」 月子と共に、生徒会室を出て職員室に向かう道すがらそんな話題になった。 「ねー。せっかくの高校生活が...」 「つっこちゃんは部活の方で男の子とはいえ、後輩がまた増えたのに、わたしは...」 翼だけである。 別に、不満はないがもうちょっといても良い。 「なら、今からでもウチに入る?」 「何てことを言うの」 が笑い、「え、本気だよ」と月子が返した。 「ね、ちゃん」 「ん?」 「あのね..颯斗くんとどうなの?」 こそっと聞かれた。 「どう..って?」 「キスとか...」 言われた途端にの顔が耳まで真っ赤になった。 「颯斗くん、優しいし。いいなぁー、素敵な彼氏じゃない」 「うーん...」 優しいのだ。優しいが、おそらくその分、自分を殺している。 「何でも、自分の気持ちを言ってね」ってお願いしているのだが、これまで中々颯斗が自分に気持ちを伝えてくれたことはない。 勿論「好き」は何度も「おなかいっぱい」と言っても繰り返して言う。 しかし、それ以外の言葉、感情は向けられていない。 「喧嘩、したことがないの」 しょんぼりして言うの気持ちが良く分からない。 月子は首を傾げた。 仲が良いなら良いに越したことはないだろうに。 「何が嫌なの?」 聞かれたは慌てて首を横に振る。 「嫌ってワケじゃないの。喧嘩はしたくてするもんじゃないし。したくてするもんじゃないけど、気持ちを口にしなきゃ出来ないことじゃない?」 確かに、そうかもしれない。 月子は頷く。 「わたしもそう言うの苦手だけど、颯斗くんも苦手なの。わたしが颯斗くんの優しさに甘えてしまってるんだろうな、って。颯斗くんの言葉で嫌な思いをしたことがないもの」 そこまで言ってはハタと思い出す。 突然足を止めたに月子が振り返る。 「どうかしたの?」 「わたし、喧嘩の仕方がわからない」 「え?!」 月子は驚いた。 こう見えて、幼い頃は幼馴染と喧嘩をしたりもした。 いつの間にかしなくなったけど、偶に意見の衝突もある。 「今までの友達とか」 「いない。わたし、つっこちゃんが初めての友達だもん」 真顔で言われて月子は驚く。 職員室での用事を済ませると「」と声を掛けられた。 琥太郎だ。 「先に生徒会室に戻っておくね」 月子が言い、は頷く。 「何ですか?」 「ちょっと、頼みがある」 そう言って共に保健室に向かった。 |
桜風
12.8.24
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