| 寮に戻りながら颯斗はを思い切って誘ってみることにした。ここ最近の自分の精神状態であまり2人きりにはなりたくないと思っていたが、彼女が寂しがっているらしいのでそちらが優先だ。 「さん、今日は屋上庭園に行きませんか?」 その誘いには目に見えて嬉しそうだ。 「うん!あ、でもご飯はどうする?」 「購買で何か買って屋上庭園で食べるのも手ですよね」 「じゃあ、それにしよう」 嬉しそうに笑うを見ると颯斗も嬉しくなる。 購買でサンドイッチを購入して屋上庭園に向かう。 あまり遅くまでは居られない。 寮には門限がある。課題があるなら届出を行っている場合はその門限を延長させることは出来るが、今回はそうではない。 ベンチに座って星空を眺める。 「体育祭まであとちょっとだね」 「そうですね。体育祭が終われば、夏休みです」 「その前にテストだし、翼君の会計資料の作成があるよ」 昨年はギリギリまで彼が手をつけていなかったのでそれはそれは大変だった。 「今年は早めにお尻を叩きましょう」 「その方が良いかもね」とが笑う。 「さんは、また実家の方に帰られるんですか? 不安そうにいう颯斗に「保留。けど、そうだな。ちょっと帰りたいかな...」とは寂しげに言う。 「何か、あるんですか?」 「お盆があるじゃない」 苦笑して返す颯斗に、「そうではなくて、少し。その...」と颯斗は言葉に詰まった。 どう表現して良いのかわからない。しかし、違和感がある。 「さん、何かあったんじゃないですか?」 結局はここに帰結する。 俯いたに「さん、言ってくれないと分かりません」と颯斗が言う。 「それは、颯斗くんも同じだよ」 悲しそうに顔を上げたが言う。彼女の手が小刻みに震えているのを見て颯斗はちくりと胸が痛んだ。 「最近、颯斗くんはわたしのことを避けてるでしょう?何かしたかなって考えてみたけどわかんない。ねえ、何かしちゃった?」 「いいえ、そんなわけじゃ...」 「じゃあ、触って。ぎゅってして。...キスして」 消えてしまいそうなか細い声でが訴える。 颯斗は思わずに手を伸ばし、結局彼女を抱きしめることが出来なかった。 そんな颯斗を見ては微笑み、屋上庭園を後にした。 「僕はどうして...」 どうして、自分のことばかり... 自分を求めて彼女は声を出した。願いを口にするのが苦手だと言い、実際付き合い始めてもあまり彼女は何かをして欲しいといわない。 自分が出来ることは自分でしようとするし、助けてと声を出さない。 今、やっとの思いで彼女は助けを求めた。颯斗のぬくもりを。 それなのに、颯斗は結局彼女に触れることは出来なかった。 寮に帰ったは部屋に帰ってがくんと崩れた。 涙を流すのを我慢して声を殺してここまで戻ってきたが、堰が切れたように涙が溢れてくる。 声を漏らせば隣の部屋の月子が気付くかもしれない。 ベッドに突っ伏して泣いた。 一度だけ彼女は呟いた。 「寂しいよ」と。 翌朝、颯斗の携帯にからメールが入った。 『今日は一緒に行けない』 ただその一言。 普段からそんなに絵文字も顔文字も使わないだが、その一言だけで自分に対する拒絶が見えた。 『わかりました』と返信して颯斗はいつもどおり部屋を出る。 いつも寄る職員寮へ向かいそうになって呆れた。 |
桜風
12.8.31
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