月光 5





星月学園では体調不要などの理由により学校を休む時には寮監に連絡をすることになっている。

の場合、職員寮なので陽日に電話をした。

『風邪か?』

と聞かれて

「何か、ちょっと...」

と返した。

ただ、行きたくないだけ。

『琥太郎先生に、時間を見て診てもらうか?』

「いいえ、そこまでは」

『まあ、気をつけろよ。体育祭も近いんだし』

そう言って陽日が電話を切った。


少しの時間ぼうっとしていた。

ふと思い立っては着替える。

鞄を持って部屋を出た。

職員寮の寮監は今学校だから見咎められることはない。

あとはお守りに、入学当初に琥春にもらった理事長による外出許可証を持っている。たぶん、何とかなる。

こっそり学園を抜け出したは街へ行くバスに乗った。



1時間ほどバスに揺られて街に着く。

学校をサボるのなんて初めてだ。ちょっとした冒険である。

「あれ???」

振り返ったは蒼くなった。郁だ。

「どうしたの、。学校は?創立記念日でもないでしょう?」

こんなとき、学校のOBである郁に会うなんて...

「えっと、サボったの」

「へえ?がサボり?やるじゃん!偉いよ」

なぜか褒められた。

「郁ちゃん、大学は?」

「大学生は自分が受けたい授業を選択してその授業の単位を取れば良いの」

「じゃあ、就職活動は?」

「教員はまだ。何、。僕と一緒にいたくないの?琥太にぃに言っちゃおうかなー」

「だ、だめ!!」

が慌てて止める。クスクスと笑って郁は「じゃあ、デートしようか」と言った。

「え、郁ちゃんと?」

「何でそんなに不満なの?」

不満そうに郁が言う。

「お姉ちゃんが『郁と外を一緒に歩いてたら刺される可能性があるから気をつけるのよ』って言ってたし」

なんてことを教え込んでくれているんだ...

「大丈夫だって。ここ最近はきれいさっぱりきちんとお別れしてるし」

「『ここ最近は』?なに、それ」

不思議そうにが郁を見上げた。

それを適当に誤魔化して郁はとショッピングモールを歩き出す。

「で、何を買うの?」

「買う?別に特に...」

「まあ、早めに帰るんだよ。下校時刻と被ったら今日休んだのに言い訳できない」

郁に言われて「そっか」とが呟く。

「郁ちゃん、物知り」

が知らなさ過ぎるの。知らないことは、場合によっては罪だよ?」

そんなことを言われたは俯いた。

「じゃあ、僕の買い物に付き合ってもらおうかな」

そう言って郁がの手を取って歩き出す。

郁もスレンダーだけど、颯斗の手の方がしっかりしている。ピアノをしている違いかな...

?」

「ん?」

「思い切り僕の話を聞いてなかったね。副会長君、元気?」

「今はわたしが副会長だよ」

「へえ、副会長が堂々とサボったんだ?まあ、いいや。えーと青空君は元気?仲良くしてる?」

そう声をかけるとが俯いた。

「あ、別れたの?」

「ちがう。けど、嫌われちゃったかもしれないの...」

「どうやって?正直、青空君がを手放すとは思えないけど?」

「わかんない。教えてくれなかった。最近、手も繋いでくれないの」

なるほど...

とりあえず、その話は一旦終わらせた。

「あ、。僕電話」

そう言って郁はの手を離し、その場から離れていった。









桜風
12.9.7


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