| 「悪いけど、頼むよ...」 電話の相手に郁は頼み込んだ。 今日の午後の授業の代返を頼むためだ。今の時間にここを出れば間に合うが、がいるのでそうは行かない。 誰かに借りを作るのは本意ではないが、が俯いた。だから、サボろうと決めた。 パチンと携帯を閉じるとがかけてくる。 「郁ちゃん、わたしちょっとお手洗い」 「今のうちに行けばよかったのに」 「探すでしょう?ちょっと待てってね」 そう言ってはトイレに向かった。 丁度良い、と郁は再び携帯を開き、ダイヤルを検索した。 『もしもし。どうした、郁』 相手は琥太郎だ。 「琥太にぃ。今日、休んでるでしょう?」 『ああ。昼休憩に見に行こうと思っているが、何で知ってるんだ?』 「、サボリ。叱らないであげてね」 『はあ?!何でまた...』 まさかあの子が学校をサボるとは思わなかった。 「わかんない。けど、何か学校に行きたくない理由があるんじゃない?僕、偶然会ったからちょっと話を聞こうと思う。学校で何かあった?」 そう問われて琥太郎は暫く悩み『学校外では『何か』はあるが、ちょっと違う気もするな。心当たりはない』と返した。 「わかった。あ、が戻ってきた。ごめん」 そう言って郁は慌てて通話を切り、携帯をポケットに仕舞った。 「お待たせしました」 「ホントだよ」 ニヒルに笑って郁が言う。 結局が行きたいといったのは書店だった。 「そういえば、は何処受けるの?僕の後輩??」 「ううん、絶対にいや」 笑顔で言うにちょっと可愛くないと思いつつ「じゃあ、何処?」と問う。 今度は素直に答えたに「夏姉は何て?」と聞くと「『わかった』って」と返された。 「ふーん、でも意外だな」 「そう?郁ちゃんが教育学部ってのよりは意外性が無いと思うけど?」 肩を竦めて言うが今度こそ可愛くなくて郁は彼女のこめかみに拳を当ててグリグリと梅干をする。 「痛いよ、郁ちゃん」 「痛くしてるんだから当然でしょう?」 そう言って一頻りじゃれての受験の参考書を購入し、少し早いお昼を食べることにした。 朝のホームルームが始まってもが来なかった。 どうしたのだろう、と心配していると担任からが体調不良で休むと言った。 「先生、さっきの。さんが体調不良って...」 ホームルームが終わった途端、颯斗は担任を捕まえて聞き返す。 「ああ、陽日先生..ってあいつは職員寮だから陽日先生が寮監なんだが、陽日先生から朝聞いた。まあ、ここ最近気候も安定していなかったからな」 そういって担任は職員室に向かっていった。 電話をかけようとして颯斗の手が止まる。 何をしようとしているのだろうか。昨日彼女を傷つけたばかりだというのに... 昼休憩に食堂に向かっていると「一緒食おうぜ」と犬飼が声をかけてきた。 「が休みって珍しいな。放課後、お見舞いに行くのか?」 そういわれて「いえ」と颯斗が首を横に振る。 「何で?面会させてくれるんじゃないの?」 きょとんとして言う犬飼に颯斗は困ったように笑った。 「何だ、喧嘩か。早めに仲直りしないとな」 そういわれて「そうですね」と颯斗は目を伏せた。 放課後になり、生徒会室に行くと思いがけない人物が居た。 「よお、颯斗」 「一樹会長!」 駆け寄った颯斗に一樹は「会長はお前だろう」と苦笑して返す。 「体育祭の準備、どうだ?あれ?は?保健係か?」 そう聞かれて颯斗は俯いた。 「何だ、喧嘩したのかよ。けど、良かったな」 「え?」 喧嘩をして何がいいのだろうか。 「喧嘩は相手を知りたいという気持ちが無いと出来ない。相手のことをどうでもいいと思っていたら、適当に合わせてその場をやり過ごすもんだろう?」 指摘をされてやっと気が付く。 喧嘩が出来なくて寂しいと言っていたらしいの気持ちが。 「僕は...」 俯いた颯斗に一樹は肩を竦めた。 何か胸騒ぎがしたのでここまで足を伸ばしてみた。 伸ばしてよかったようだ。 「なあ、颯斗。今日、お前の部屋に泊めてくれないか?」 「へ?僕の部屋ですか?ええ、構いません」 驚いたように呟く颯斗に「んじゃ、よろしくな」と言ってニッと笑った。 颯斗は少しばかり弱々しい笑顔を浮かべて頷いた。 |
桜風
12.9.7
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