| はハンバーグが食べたいといった。なので、ハンバーグ。 「、ハンバーグって...」 「郁ちゃんも好きなくせに」 そう返されて「そうだけど」と肯定する。 もうちょっとオシャレなところとか... 別にこの店がオシャレじゃないとは言わない。だが、他にも色々あっただろう。 食事を済ませて郁は食後のコーヒーを飲んでいる。 はおなかいっぱいだと言っていた。 「それで、青空君と何があったの?」 核心を突く質問には言葉を失った。 しかし、根気強く待っているとぽつぽつとしゃべりだす。 要約すると。 最近颯斗が自分に触れてこない。抱きしめてくれないし、キスもしない。理由を聞いても教えてくれない。 「ねえ、惚気?」 「どこが!?」 何だって、の惚気を聞かされなければならない。 少し考えて郁が「付き合い始めてどれくらい?」と聞いてきた。 「半年近いよ」 「で、それ以上はないの?」 郁の質問の意図が分からず、「それ以上って?」と聞き返した。 「だから、キスより先。まさか、。キスでお終いとか思ってないよね?思ってたら僕は青空君に同情するよ」 「お、思って..ない...よ」 語尾が段々小さくなってきた。 「思ってたんだね」 「思ってない。思ってないけど...」 しょんぼりする。 「けど、颯斗くんは!」 「男、だよね?」 遮るように郁が言う。 知ってる。偶に颯斗の眸に浮かぶギラリとした感情を目にしていた。そのたびには少し怖かった。 優しく微笑んでくれている颯斗ではない、別の人みたいで。 「はさ、男で怖い思いをしたことないでしょう?」 「去年の秋に」 の指摘に郁は黙る。そうだった。それは、自分が原因と言っても過言ではない。 「じゃあさ。あれが男なんだよ、」 「けど!颯斗くんは優しいし、あんな酷いことしないもん」 子供のようにいうに郁が冷ややかな視線を送る。 「あの男と、青空君の違いは何か分かる? 青空君は、が子供なのを知っているんだよ。そして、それを許してる。だから、彼は『男』を隠している。怖がるでしょう、は。けど、男である以上好きな子がいたら抱きたいって思う。 の場合、はっきり単語を言わないと気付かないフリをするかな?セックスをしたいんだよ」 単語そのものを言われては俯いた。 「ほら、は子供だ」 「本当に、颯斗くんも?」 覗うように見上げるに盛大な溜息を吐いた。 「に触れない理由はそれくらいだと思うよ。青空君がを手放すはずはない。けど、距離を置くなら、それしかない。青空君は本当はに触れたくても触れられないんだよ。のことが好きすぎてね。 は自分が被害者みたいに思っているようだけど、男の僕からしたらの方がよっぽど酷いよ」 「郁ちゃんも?」 「僕?僕も男だからね。しかも、僕の場合は結構酷い恋愛..っぽいことしてたから」 自嘲気味に笑う郁が何だか悲しそうだった。 店を出ると郁が腕時計を見た。 「そろそろ戻った方が良いね」 「え、まだ早いよ?」 まだ1時前だ。 「バスの時間と、あと、下手したら放課後前に琥太にぃが様子を見に来るかもよ?」 それはまずい、とは蒼くなる。 バス停に着くとちょうどバスがやってきた。 「あの、郁ちゃん」 「あとはの問題。青空君は良い彼氏だよ。には勿体無い」 「知ってる。ありがとう、郁ちゃん!」 そう言ってバスに乗り込み、は窓から郁に手を振る。 それに応えた郁はバスを見送り、携帯を開いた。 リダイヤルで呼び出すとすぐに反応がある。 「珍しいね、すぐに出てくるなんて。昼寝は良いの?」 『良いんだ。は?』 「今、バスに乗って帰った。琥太にぃが午後に様子見に来るかもねって話したら慌てて。行っても良いよ」 笑いながら言う郁に琥太郎は苦笑した。 『は、どうだった?』 「惚気られただけ。今回のことは琥太にぃにも原因はあるよ。を大切に育てすぎ」 『はあ?!何でそうなるんだ?』 琥太郎の抗議の声を笑って流した郁は「今度また遊びに行くよ」と言って通話をきった。 「さて、僕も夕方には間に合うかな」 そう言って郁は別のバス停へと向かっていった。 |
桜風
12.9.14
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