月光 7





はハンバーグが食べたいといった。なので、ハンバーグ。

、ハンバーグって...」

「郁ちゃんも好きなくせに」

そう返されて「そうだけど」と肯定する。

もうちょっとオシャレなところとか...

別にこの店がオシャレじゃないとは言わない。だが、他にも色々あっただろう。

食事を済ませて郁は食後のコーヒーを飲んでいる。

はおなかいっぱいだと言っていた。

「それで、青空君と何があったの?」

核心を突く質問には言葉を失った。

しかし、根気強く待っているとぽつぽつとしゃべりだす。

要約すると。

最近颯斗が自分に触れてこない。抱きしめてくれないし、キスもしない。理由を聞いても教えてくれない。

「ねえ、惚気?」

「どこが!?」

何だって、の惚気を聞かされなければならない。

少し考えて郁が「付き合い始めてどれくらい?」と聞いてきた。

「半年近いよ」

「で、それ以上はないの?」

郁の質問の意図が分からず、「それ以上って?」と聞き返した。

「だから、キスより先。まさか、。キスでお終いとか思ってないよね?思ってたら僕は青空君に同情するよ」

「お、思って..ない...よ」

語尾が段々小さくなってきた。

「思ってたんだね」

「思ってない。思ってないけど...」

しょんぼりする。

「けど、颯斗くんは!」

「男、だよね?」

遮るように郁が言う。

知ってる。偶に颯斗の眸に浮かぶギラリとした感情を目にしていた。そのたびには少し怖かった。

優しく微笑んでくれている颯斗ではない、別の人みたいで。

はさ、男で怖い思いをしたことないでしょう?」

「去年の秋に」

の指摘に郁は黙る。そうだった。それは、自分が原因と言っても過言ではない。

「じゃあさ。あれが男なんだよ、

「けど!颯斗くんは優しいし、あんな酷いことしないもん」

子供のようにいうに郁が冷ややかな視線を送る。

「あの男と、青空君の違いは何か分かる?
青空君は、が子供なのを知っているんだよ。そして、それを許してる。だから、彼は『男』を隠している。怖がるでしょう、は。けど、男である以上好きな子がいたら抱きたいって思う。
の場合、はっきり単語を言わないと気付かないフリをするかな?セックスをしたいんだよ」

単語そのものを言われては俯いた。

「ほら、は子供だ」

「本当に、颯斗くんも?」

覗うように見上げるに盛大な溜息を吐いた。

に触れない理由はそれくらいだと思うよ。青空君がを手放すはずはない。けど、距離を置くなら、それしかない。青空君は本当はに触れたくても触れられないんだよ。のことが好きすぎてね。
は自分が被害者みたいに思っているようだけど、男の僕からしたらの方がよっぽど酷いよ」

「郁ちゃんも?」

「僕?僕も男だからね。しかも、僕の場合は結構酷い恋愛..っぽいことしてたから」

自嘲気味に笑う郁が何だか悲しそうだった。


店を出ると郁が腕時計を見た。

「そろそろ戻った方が良いね」

「え、まだ早いよ?」

まだ1時前だ。

「バスの時間と、あと、下手したら放課後前に琥太にぃが様子を見に来るかもよ?」

それはまずい、とは蒼くなる。

バス停に着くとちょうどバスがやってきた。

「あの、郁ちゃん」

「あとはの問題。青空君は良い彼氏だよ。には勿体無い」

「知ってる。ありがとう、郁ちゃん!」

そう言ってバスに乗り込み、は窓から郁に手を振る。

それに応えた郁はバスを見送り、携帯を開いた。

リダイヤルで呼び出すとすぐに反応がある。

「珍しいね、すぐに出てくるなんて。昼寝は良いの?」

『良いんだ。は?』

「今、バスに乗って帰った。琥太にぃが午後に様子見に来るかもねって話したら慌てて。行っても良いよ」

笑いながら言う郁に琥太郎は苦笑した。

は、どうだった?』

「惚気られただけ。今回のことは琥太にぃにも原因はあるよ。を大切に育てすぎ」

『はあ?!何でそうなるんだ?』

琥太郎の抗議の声を笑って流した郁は「今度また遊びに行くよ」と言って通話をきった。

「さて、僕も夕方には間に合うかな」

そう言って郁は別のバス停へと向かっていった。









桜風
12.9.14


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