月光 8





部活中の休憩中、犬飼が声をかけてきた。

「なに?」と応じると

「最近、青空変じゃないか?」

と言う。

月子はそこまで思っていなかった。

「具体的に?」

「というか、と青空って今喧嘩してんの?」

意外な言葉に月子は目を丸くした。

「それはない..と思う。ちゃん、喧嘩の仕方知らないって言ってたし」

「はあ?!」

声を上げてふと思い出す。の姉と兄を。昨年と一昨年の春にやってきて大騒ぎをして帰って行ったあの2人。インパクトが強烈過ぎる。

しかも、兄のほうはここのOBで、元弓道部部長だと月子から聞いたときには驚きが更に増した。

しかし、それを考えると納得も出来る。

そうか、あの2人に守られて喧嘩の仕方を覚えられなかったのか...

「んじゃ、どうしたんだろうなー...」

「どうかしたの?」

「いやな?今日、は学校を休んだんだが、青空がお見舞いにいけない風な表情だったんだよな。だったら、喧嘩でもしてるのかなって普通思うだろう?

どうしたんだろうな...」

「え?!ちゃん、今日はお休みなの?!」

月子が声を上げ「大変!」と慌てた。

「別に風邪ってほどじゃないみたいだけどな、担任が言うには」

「お見舞いに行かなきゃ...」

「そっとしといた方が良い時もあるんだぜ?」

そう言って犬飼は苦笑した。


部活が終わり、本当は居残り練習もしたかったのだが体育祭まで生徒会が忙しいので急いで生徒会室に行った月子は嬉しい驚きを目にした。

「一樹会長!」

「おいおい、お前まで俺のことを『会長』って言うのか?」

呆れたように一樹が言う。

「どうしたんですか、今日は」

「んー?ちょっとお前らの顔が見たくなってな。けど、今日はのヤツは休みだってな」

ったく、せっかく俺が来たのに...とブツブツ言いながらその表情は心配そうだ。

一樹がいるだけで生徒会室の空気は変わる。

ただ、そこにがいないのが残念でならなかった。


今日の活動は終わらせて生徒会室を後にする。

「ぬいぬい、今日は泊まっていくのか?」

「ああ、颯斗のところに厄介になる」

「いいなー...」

「翼君も来ますか?」

颯斗が言うと頷きかけて「今日は無理なのだ」としょんぼりした。

どうやら、夜に宇宙科の授業があるらしい。

夜中までかかるそうなので、さすがに遠慮している。

大人になったもんだな、と一樹は苦笑した。

夕食は颯斗と月子と一樹の3人で食べた。

「そういや、は夕飯どうしてるんだろうな?」

「私、後で何か買って持って行きます。あ、でも星月先生が差し入れとかしてるかな?」

「確かに、もう差し入れくらいしてるかもな」と一樹は頷いた。

琥太郎がいるのだから、きっと彼が世話を焼いている。

何と言っても保健医だ。

生徒の健康管理に気を遣ってもおかしくない。


食事中、颯斗が席を外した隙に「なあ、月子」と一樹がこっそり声をかけてきた。

「何ですか?」

「颯斗と、喧嘩とかしたのか?」

ちゃんからは、喧嘩をしたことがないって話を昨日聞きましたけど...」

じゃあ、違うのか...

ただ、月子が言うには、たち神話科のクラスメイトにも同じことを聞かれたと言う。

何かしら周囲が違和感を抱く程度にはぎくしゃくしているようだ。

戻ってきた颯斗が首を傾げる。

一樹が何だか深刻そうな表情を浮かべているような気がした。









桜風
12.9.14


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