| 春休みに入ってと颯斗は一緒に出かけた。 が郁と約束しているという用事に出かけるためだ。 その話を聞いたとき、颯斗が控えめに「僕もご一緒させていただけませんか?」と聞いてきた。は少し困った表情をしたが「郁ちゃんに聞いてみるね」と頷いたのだ。 『で?なんで青空君が一緒に来なきゃいけないの。有李の墓参りなのに』 不機嫌にそういわれた。 そうだろう。有李は郁にとってとても大切な人だ。 そして、彼女との思い出とかそういうのをおいそれと簡単に他人に話したりしない。彼にとっての宝物だから。 「だ、だよね...」 しゅんとしたの声に胸がちくりと痛んだ。 結局、自分もには甘いのだ。 『わかったよ。ただし、青空君は墓地の入り口で待機。あと、誰の墓参りかは詮索しない。それが約束できたら僕はいいよ。ただ、琥太にぃにも確認とっておくんだよ』 「ほんと?!」 の声が弾む。 面白くない... しかし、これで「やっぱりだめ」なんて言ったら本当に大人気ない。 『ホント』と返す。 「ありがとう、郁ちゃん!」 そう言って嬉しそうにが通話を切った。 電話を切られた郁は深い溜息を吐いた。全く、面白くない... 「と、言うわけなんだけど。どうかな、琥太にぃ」 郁が良く許したな、と思いつつも「俺は構わないぞ」と琥太郎は頷いた。 「ほんとに?」 「ああ。お前は、その後うちに泊まるんだよな。青空も一緒と言うことだな?」 「そっか」とは呟いた。 必然的にそうなる。 「颯斗くんに話しとく」 「そうしておきなさい」 琥太郎の言葉に頷いて、は保健室を後にした。 生徒会室に戻ると颯斗だけのようだった。 「翼くんは?」 「どうやら、何か手の掛かる課題が出ているみたいですよ」 なるほど。それをやっつけるために放課後の生徒会活動を早めに切り上げたのか。 「月子さんは部活だそうです」 「今年で最後だもんね」とは頷く。 「それで、どうでしたか?」 「うん。郁ちゃんも琥太にぃも良いって。ただ、郁ちゃんからの条件があるんだけど...」 「何ですか?」 首を傾げる颯斗には先ほど郁に言われた条件を口にした。 「わかりました」と颯斗は頷く。墓参りだと聞いていたが、それが誰の墓かはそんなに気にならない。 「あとね、その日は琥太にぃの家に泊まることにしてたんだけど。颯斗くん、大丈夫?」 「星月先生のご実家ですか?」 「うん。例によって部屋とかそんなに気にしなくて大丈夫。けど、たぶん、雑魚寝かも」 が言うと「わかりました」と颯斗は再び頷いた。 そんな感じで初めての2人でお出かけ、と言うところなのだが... 昼下がりに駅で待っているとクラクションが鳴らされる。 「!」と助手席から顔を出した郁が名を呼ぶ。 「あ、郁ちゃんだ。行こう?」 促されて颯斗は頷く。 「郁ちゃん、久しぶり。琥太にぃ、お疲れ」 後部座席のドアを開けてが乗り込み、続いて颯斗が「お世話になります」と乗り込んだ。 バックミラー越しに颯斗を見た郁は面白くなさそうにし、その表情を眼にした琥太郎は思わず噴出した。 |
桜風
12.9.21
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