| 電話を切ってからは深く息を吐く。 大丈夫だろうか... 昼間の、授業をサボるのはまだ本当に怒られるだけで済むが、夜中に抜け出して男子生徒と会うとなれば問題は大きい。 琥太郎だって「仕方ないな」なんていってくれない。寧ろ、彼は立場があるからそれが余計に難しいはずだ。 一応着替えて待っていると本当に携帯に颯斗からのメールが来た。 グッと拳を握って「よし!」と気合を入れてそろっと部屋を出て行った。 颯斗を見つけたはそのまま駆け出し、颯斗もの手を引いて駆け出した。 2人が向かった先は裏庭だ。 本当は屋上庭園に行きたかったが、校舎内を歩くのは見つかる可能性が高いので仕方なしの裏庭だった。 「来るときもだけど、帰るときも大変だね」 「そうですね」 暫く歩いていたが、「あのね、颯斗くん」と足を止めてが言う。 「...何ですか?」 「ごめんなさい」とが謝った。 突然の出来事で颯斗はきょとんとする。 「えっと、さん?」 これは、別れ話の... 嫌なことばかり沢山浮かんでくる自分の想像力が恨めしい。 必死に違うと振り払おうとしても中々それが出来ない。 こくりと唾を飲み、彼女の言葉を待った。 「今日の、ね。あ、昨日か。あれ、サボリなの」 「はい?」 思わず聞き返したが正直に告白した。 「一昨日、颯斗くんが何も言ってくれなかったからなんか色々とショックでね。学校サボったの。ついでに、寮を抜け出して街に出てみたんだ」 自分が心配で気を揉んでいる間に、彼女は大冒険をしていたようだ。 「それで?」と話を促す颯斗の声がやや冷たい。 「郁ちゃんに会ったの」 「水嶋先生に?」 「うん、郁ちゃんに今回のことはわたしが酷いって言われた」 「さんが?いえ、それは...」 違う、と言おうとしたらがそれを制す。 「颯斗くん、正直に答えて」とが真剣な眸で言う。 「はい」と頷いた颯斗は次の瞬間頓狂な声を上げる羽目に陥る。 彼女は自分とセックスしたいのかと聞いてきたのだ。 ストレートにもほどがあるし、本人に聞くようなことだろうか。 「正直に答えて」 せがむように言われ颯斗は観念して「はい」と頷いた。 「よし、わかった」とが頷く。 「あの、さん?」 「時間を頂戴」 「はい?あの、それは何の時間でしょうか」 「わたしが、決心する時間?」 疑問系で返された。いや、それよりも... 「さんは、こんな浅ましい僕を嫌いにならないんですか?」 「なんで?」 きょとんと彼女は首を傾げた。 「わたし、今まで何回も言ったと思うけど。颯斗くんが良いんだよ?」 真顔で返される。 思い切り杞憂だったらしい。 「ただね、颯斗くんも薄々と感じているとは思うけど。どうもわたしは子供らしいの。 だから、颯斗くんの気持ちを確認したから『さあ、どうぞ』ってのは、どうしても難しいの。それができれば話は楽なんだろうけどね。だから、もうちょっと時間を頂戴?お願いしても良い?」 あっけらかんとしたものだ。 「あの..僕は...」 「時々ね、颯斗くんはいつもの優しい颯斗くんじゃない顔をしてたんだ。それがちょっと怖かったのも確か」 やはり彼女は気付いていたようだ。 ふと、彼女を愛しいと思えば思うほど彼女に向けてしまう自分の浅ましさ。自分の男としての本能、性に。 「けどね」と言ったは突然颯斗の胸に飛び込んでぼそりと言う。 颯斗は思わず彼女を抱きしめた。 「さん、あまり可愛いことを言わないでください。僕の理性が持ちません」 颯斗が言うとは顔を上げて「えへへ」と笑う。 「そんなさんには、お仕置きです」 そう言って颯斗はにキスをした。 最初は久しぶりということもあってか少し遠慮がちだった颯斗だったが、徐々にそれは長く深いものへと変わっていく。 頭の中に霞がかかったような、ぼうっとなっていく自分に気付いたはトントンと颯斗の胸を叩いた。 ようやく颯斗の唇が離れ、はやっと新鮮な酸素を取り込むことが出来る。 「颯斗..くん...」 「もちろん、さんをいつまでも待ちます。けど、徐々に慣れてくださいね」 そう言って微笑む颯斗の眸は自分が少し前まで怖いと思っていたそれだった。 今は、前ほど怖くない。 きっと颯斗が何を考えて、思っているかが分かったからだ。 「善処します」 俯いていうをクスリと笑い、颯斗は再び彼女を抱き寄せた。 「さん、愛しています」 そう囁いた颯斗に応えるように顔を上げたはにこりと微笑んだ。 颯斗は腰を屈めて彼女にキスをする。今度は触れるだけの優しいキスだった。 |
桜風
12.10.19
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