月光 24





星月の家では2日ほど過ごした。

その間に、琥春も帰ってきてその父親も帰って来た。

自分を育ててくれた家族で食卓を囲んだ。琥太郎は、例によって部活動がある生徒のために学園に居残りだった。


星月家に惜しまれつつ、は実家に向かった。

家の門を開けて「ただいま」と玄関を開ける。

しーんと静まりかえっている家に足を踏み入れ、全ての部屋の窓を開けた。

星月の家でここ最近ちょっと行けていなかったと聞いた。

いつもは琥雪が来てくれていたのだが、彼女が忙しいこともあって放ったらかしになってしまったことを詫びられてしまったが、これほど良くしてもらっているのに文句は全くない。



夏休みの大半は実家で過ごした。

毎日心配なのか夏凛と晴秋から電話がかかってくる。

たまに、かかってこない日があるが、きっと2人だって忙しい。

颯斗とも毎日電話をした。

邪魔にならないかな、と思ったが彼の方から掛けてきてくれる。

けれども、何も話してくれない。

今のところ、ちょっかいを出す親戚はいなかった。

この家は留守にしていることが多いため警備会社に登録しており、帰る前に会社に電話をしてセンサーだか何だかを外してもらうシステムになっているので誰かが家に居ない限りちょっかいを出せない仕組みにしてくれているのだった。

お金は掛かるが、の思い出を守るためだと言っていた。

昔、トイレに行きたくなって夜中に起きたとき、姉と星月の両親が話していたのを聞いたことがある。

「けど、そうだよね...」

ゴロリと寝転んで天井を見上げた。

この家を維持するには凄くお金が掛かっている。

今、最寄り駅の駅前の土地周辺に再開発の動きがあり、そこのベッドタウンとしてここら辺がかなり有力視されているらしい。

なので、ここらの土地を一括して買い上げてマンションを建設すると言う動きが出てきているとか。

まだ具体的な動きは見せていないものの、水面下でそんな話が流れていると、前に琥太郎が教えてくれた。

家を置いておけば税金が掛かるし、維持費も掛かる。

それら全て姉と兄が支払ってくれているようで、つまりは2人の負担だ。

だから、2人が決めたらその通りにしようと思っている。

おそらく正月とかに話をすることもなるだろう。

今回の夏休みで家の中を徹底的に綺麗にしてみた。

畳は庭に出して干したし、家具も何とか動かせるものは動かして拭いた。

ガチャガチャと玄関の方が煩い。

喩えるなら、門を壊そうとされている。

慌てては玄関に向かった。


ドアを開けて呆然とした。

「何をしているんですか!」

鋭い声で責める。

本当に、門を壊そうとしている輩がいた。例の親戚だ。鉄パイプって何処で売っているのだろうか...

「あら、居たの」

ギュッと拳を握る。

「いい加減にして!あなた達に勝手に踏み入れて欲しくない!!」

「何を言ってるの?あなたは遺産がなかったら価値のない子供じゃない。星月なんて他人が出てきたのはそのためでしょう?親戚である私達があなたを保護してあげようとしているだけよ。

早く目を覚ましたらどう?」

「星月のおじさんもおばさんもわたしを育ててくれた。役に立たない唯の子供のわたしを。

あなたのお父さんは、わたしの宝物をガラクタと言って捨てたのよ?!」

「だって、ガラクタだったじゃない」

そう返された。

家に居ることが少ない親が買ってくれたものだからと、子供なりに大切にしていた物だったのに...

「あなたもいい加減にしなさいよね。わがままばかり。そんなことを言ってて良いと思ってるの?あなたのお姉ちゃんとお兄ちゃんの立場が悪くなっても知らないわよ?何と言っても、私は日本国民だし?」

俯き、ギリと奥歯を噛み締めた。

「いい加減にするのはあなたの方です」

不意に加わった声には顔を上げた。

「な、何よ?!」

颯斗だ。隣には警察が立っている。

「君達、一緒に来てもらおう」

そう言って任意同行を促すが、逃げられないと思ったのか、突然彼女はに向かって鉄パイプを振りかざした。

ここまで来たら自棄になったのかもしれない。

さん!」

颯斗が声を上げた。

は鉄パイプを蹴っ飛ばし、従姉に向かって繰り出した掌底を寸止めする。

の眸に射竦められた彼女はその場で腰を抜かした。

警察が彼女を連行していくのを見届けて颯斗がのそばまでやってきた。

「颯斗くん、どうしたの?」

驚いたが見上げると「さんに会いたくなったので」と言う。

「警察は?」

「実は、バス停を降りて道に迷ったので助けてもらったんです。ですが、迷子になって良かったです」

と少し恥ずかしそうに言った。

確かにそうだ。あの場面は第三者が目撃していないと子供の自分には対抗する術がなかったかもしれない。

さん、脚は大丈夫ですか?」

「実はちょっと痛い」

恥ずかしそうにが言う。

「では、失礼します」と言ってを横抱きにした颯斗は家の中へと足を向けた。









桜風
12.11.9


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