| ふと、窓の外の星空が視界に入った。随分と星が明るい。 月齢を数えて今日が新月だということを思い出した。 「颯斗くん、星が良く見えるよ」 そう言って隣にいる颯斗に視線を向けては驚いた。 「颯斗くん?!」 彼は涙を流している。 「え、お腹でも痛いの?」 そして、先ほどの情事を思い出して「寧ろがっかり?」とは顔を赤くしながら言う。 「さん」 「はい!」 「僕は、幸せすぎて涙が止まらないんです。どうしたらいいのでしょうか」 そう言って颯斗はを抱き寄せた。 「うん、わかる」 は自分を抱き寄せている颯斗の腕に手を載せる。 「わたしも幸せ」 の言葉に颯斗の腕の力が益々強くなる。 暫くそうしていたが「さん」と颯斗が呼ぶ。 「なに?」 「寂しい思いをさせることになります。でも、どうか我慢しないでください。僕の事情ですぐに会えない距離になるのにこう言うのは図々しいとは思っています。 ですが、寂しいときには寂しいと言ってください。僕の留学先が何時でも構いません。時差なんて無視してください。僕はあなたが泣いているとどうしようもなくなってしまう。だから、お願いです」 懇願する颯斗の言葉が胸に響く。 「うん、わかった。けど、颯斗くんもだよ。颯斗くんも、ちゃんと話してよ?颯斗くん、未だに色々と自分ひとりで抱えちゃうんだもん。それがちょっと寂しいよ」 早速寂しいといわれてしまった颯斗は、「反省しています」と返す。 そうして腕を緩め、の顔を覗きこむ。 一層愛しさが溢れ、また泣きそうになる。 「愛してます」と言って彼女の瞼にキスをする。 くすぐったそうには首を竦めて「わたしも」と目の前の颯斗の鎖骨にキスをする。 を抱きしめる腕を外して颯斗は布団を抜ける。 不思議に思ったはシャツを羽織った颯斗の背を見て赤くなる。 ちらりと爪の跡が見えた。 痛くないかな、と心配になる。 そんなことを考えていると颯斗が戻ってきた。 「どうかしましたか?」 「背中、痛くない?」 覗うようにが言うと「幸せの傷ですから」と笑顔で返された。 その笑顔はいつもの優しいだけのそれではなかった。 はもぞりと布団を被る。 「さん?」 いつも見ている颯斗の顔を改めてかっこいいと思ったのだ。先ほど、あんなことをしたので彼を必要以上に男と意識しているのかもしれない。 布団にもぐったまま出て来そうにないに首を傾げつつ、丁度いいと思って颯斗は彼女の左手を取った。 「なに?」と布団の中からくぐもった声がする。 「ちょっと待ってくださいね」 そう言って彼女の小指にリングを嵌めた。 「良いですよ」 颯斗の言葉で、はそっと布団から顔半分を出して自分の左手を見た。 「え、これ...」 「指輪なんて縛るみたいで嫌だったんですけどね。ですが、他の人があなたにちょっかいを出す方がもっと嫌なので。もらっていただけますか?赤い糸とはいきませんけど」 小さな赤い石が嵌っている。 「いいの?」 「はい。本当は、自分のお金で買えれば良かったんですけど...」 星月学園はバイト禁止なのでそれは無理な話である。 「授業がある日はつけられないね...あ、そうか」 そう言って布団から出ようとしてぴたりと止まる。 「颯斗くん」 「はい」 「向こう、向いてて」 ビシッと指差して彼女が言う。 「先ほどしっかり見させていただきましたけど...?」 「いいの!」 きょとんとしながら言う颯斗にが返す。 「はい、わかりました」とクスクス笑いながら颯斗はに背を向けた。 よくよく考えたらまだ何も着ていなかった。 急いで着衣し、布団から出る。体が重い... 「いいよ」と言っては部屋を出た。 何だろう、と思いつつも颯斗も衣服を整える。 戻ってきたは「見て!」とネックレスチェーンを持ってきた。 「これに通してたら学校に付けていける」 「そうですね。ですが、今は外さないでくださいね」 颯斗に念を押されては笑顔で頷いた。 |
桜風
12.11.23
ブラウザバックでお戻りください