| 寮に戻ると月子は先に帰ってきていた。 インターハイで優勝した後、実家に帰ってよりも早くこちらに戻ってきた彼女は地元の友達と遊べていないのではないかと思う。 聞いてみると「みんな受験勉強で塾だとかだし」と返されて、なるほどと納得した。 お互いお土産を交換しようと約束していたので、月子がの部屋を訪ねてプチパーティを開くことになった。 が颯斗直伝の美味しい紅茶の淹れ方を実践していると、月子がじっと見てくる。 「な、なに?ダージリン嫌いだったっけ?」 「ううん。ねえ、ちゃん。夏休みに何かあった?」 「え、ええ?!別に...」 動揺が隠し切れない。 相手が月子でなければその動揺は看破されるだろう。 『看破』なんてそんな大仰なものではなくて、たぶん、本当にバレバレだろうが。 「そう?ちゃん、凄く綺麗になったよ?」 「はあ?そうかな??」 自分で鏡を見ても何も変わっていない。 「あ、ねえ。その指輪。颯斗くんから?」 寮にいる間だし、夏休みだしとは指輪を嵌めたままだった。 「う..ん」 嬉しそうに俯くに「いいなー」と月子が冷やかす。 「ちゃんの進路って私と一緒だったよね」 月子が言う。 「うん、学部は違うけど」 これはもう颯斗に話をしている。 その前に姉に話をしていて同意は得ている。やりたいことが出来る環境にあるならやるべきだと言われた。 「そうなの?!」と月子は意外そうな声をあげる。 「うん。けど、一緒に楽しいキャンパスライフを過ごそうね」 「そうだね。そういえば、錫也と宮地君も同じ学校だって言ってたよ」 月子が言い、「ホント?」とが笑う。 知り合いが多いほうが何となく気が楽になる。 しかし、おそらく学部は被らないだろう。 颯斗に話したときも「意外です」と目を丸くされたものだ。 進路の話や、地元の話をしていると月子の携帯に着信がある。同時に、にも同じように颯斗から着信があった。 「もしもし?」 『さん。今、寮ですか?僕たち食堂に居るんですけど』 そう言って颯斗が話し始める。 どうも、お土産を持ち寄って皆でお茶会をしないかという話になったらしい。そして、そのお誘いだ。 「えっと、今つっこちゃんにもそれと同じ電話が行ってるんだ?」 『ええ、東月君が...』 「お土産、開けちゃってるけどいいのかな?今つっこちゃんと女の子だけでそれやってたんだけど」 が返すと月子も同じようなことをいっており、さらに電話の向こうで東月が驚く声を上げている。 が思わずクスクスと笑うと颯斗も同じように笑った。 『別に構いませんよ。要は、皆さんでお茶会が出来れば良いんですから』 颯斗の言葉に「じゃあ、これからつっこちゃんと行くね」と返して電話を切った。 月子も丁度電話が終わったらしく電源ボタンを押していた。 「じゃあ、食堂に行こうか」 が促す。 「待って、ちゃんの淹れてくれた紅茶を飲んでから...」 そう言って月子が紅茶を飲み干し、立ち上がる。 カップは流しに置いて部屋を出た。 「何処に行くんだ?」 声を掛けられて振り返ると、琥太郎が居た。 「食堂へ。皆でお土産を持ち寄ってお茶会をするんです」 が返すと「楽しそうだな」と言われた。 「はい、きっと楽しいです」 「気をつけていけよ」と言って琥太郎は部屋に向かっていった。 実家の門のことは琥雪に電話をして任せた。当日は業者が動けないといったのだ。 親戚のことも彼女が請け負ってくれて姉へ連絡をしてくれると言ったのでそれに甘えることにした。 琥太郎は門のことを知っているのだろうか... 何となくどうでもいい事だがちょっと気になった。 「ちゃん、はやく!」 先を行く月子が声を掛けてくる。 「はーい」と返しては駆け出した。が追いつくのを待って月子も駆け出す。 まだ残暑の日差しが厳しい中、2人は笑いながら食堂へと向かった。 |
桜風
12.11.23
ブラウザバックでお戻りください