月光 30





仕事を片付けて屋上庭園へと向かった。

空を見上げると本日は快晴。星が瞬き始めている。

お弁当は颯斗と融が食堂に取りに行ってくれたので、たちはシートを広げて彼の戻りを待つ。

「よく天体観測していたんですか?」

譲が問う。

「まあ、結構あったよね?」とが月子を見て「そうだね」と月子も頷く。

前会長はイベントを発案しては燃えていたから。

そのしわ寄せと言うか、事前準備は颯斗の仕事で。でも、サプライズが好きだから突然屋上庭園に連れて行かれたときもあった。

忙しいときに限ってそんなことを思いつく一樹を思い出してはクスクスと笑う。

「お待たせしました」

と戻ってきた颯斗が首を傾げる。

なにやら楽しそうな雰囲気を醸し出している。

「そういえば、翼君は?」

月子が周囲を見渡して言う。

「あ、いないね...また何か作ってるとか?」

「...さん、あまりそういうことは口にしないでください」

「いいじゃない。譲くんたちも慣れるのには場数を踏むのが一番でしょう?」と無責任にが言う。

「慣れるって何ですか?」

と譲がこっそり月子に聞く。彼女は苦笑して「えーと」と答えあぐねていた。

「じゃじゃーん!」

屋上庭園のドアが開き、翼が派手に登場してきた。

「翼君、それは置いてきてください」

彼の手にある何やら怪しげなそれを見た瞬間、颯斗が笑顔で言う。

「う..いやなのだ!」

「翼君?」

「嫌なのだー!」

そう言っての背に隠れる。

「それ、成功作?」

首を捻ってが言うと「俺がいつ失敗作を作ったのだ!」と抗議された。

なので、は覚えているものを全て指折り数えてみた。

「そ、それは試作品だったのだ」

それは初耳。

「とりあえず。ご飯食べ終わるまでお披露目待ってくれるかな?」

の提案に「わかったのだ...」と翼がしょんぼりする。

「というわけで、夕食は確保しました」とが颯斗を見上げる。

さんは、翼君の発明に関しては、問題を先送りすることが多いですよね...」

溜息混じりにそう言われた。

「うーん...」と唸る。

「翼君、さんの背中に隠れてないで、ご飯を食べましょう」

誘われた翼は「うぬ!」と返事をしての隣に座る。

その反対側の隣に颯斗が座ろうとしたが、そこは既に融が座っていた。

「仕方ないですね」と呟き、手近なところに腰を下ろした。

真ん中にお重を置いてそれを囲むように皆が座る。

「宇宙科は、もう食事カリキュラムはないの?」

「はい。1学期のカリキュラムですから」

「懐かしいなー」

譲の返事に翼が目を細める。

皆で揃って食べる食事は美味しかった。


そして、本日のメインイベント。

「じゃじゃーん!」

メインイベントは天体観測だったはずなのに、なぜか翼の発明品のお披露目会となった。

楽しげに翼の説明を聞く月子とに対して颯斗は警戒し、警戒している颯斗を見て譲も警戒した。

翼が皆の注目を集めるのが面白くないのか、融はそっぽを向いている。

そして、「危ないよー」というの声に反応して振り返ると目の前に何かが迫っていて防衛本能が働き、思わずそれを殴り飛ばした。

「な、何をするんだよー!」

と翼。自慢の発明品は間違いなく壊れた。

「突然ワケのわかんないもんが迫ってきたら防衛本能が働くってもんでしょ、普通!」

と融。

彼らの和解は失敗に終わった。

「止めないんですか?」

譲が問う。

「今は何を言っても無駄ですから」と呆れ口調の颯斗。彼らが疲れたところを狙って宥める作戦らしい。

「あ、つっこちゃん。ほら、あれ。ペガススの四辺形だ」

「あの、ちゃん。止めないと...」

「きょうだい喧嘩ってのはとことんしたほうが良いらしいよ。譲くん、融くんが手を上げたら止めてね」

「...わかってます。けど、アイツもそこまでバカじゃないですから」

その後、喧嘩疲れした融を颯斗が、翼を譲がそれぞれ担当して共に寮に向かって帰っていく。

さん、月子さん。寮までお送りしたほうが良いんでしょうけど」と颯斗が気にしているが、「わたしがいるから大丈夫」とが請負い、複雑な気持ちを抱いて颯斗は融を引き連れて寮へと向かったのだった。









桜風
12.11.30


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