月光 31





生徒会室に入ると月子と翼が額を寄せて何か難しげな表情をしていた。

声をかけていいものか悩んだが「お疲れ様です」とだけ言ってみた。

「あ、譲君。お疲れ様」

「お疲れなのだ」

月子と翼は返事をしてまた額を寄せる。

「...どうかしたんですか?」

声を掛けてみた。

「あのね、今度の15日。颯斗君の誕生日なの」と月子。

「去年は皆でお祝いしたのだ」と翼。

「今年はどうするかと言うのを相談していたんですか?先輩はその相談に入らなくて良いんですか?」と譲。

「うぬー。そののことで相談していたのだ」

「譲君は、ちゃんと颯斗君が...」

「付き合ってるんですよね。先輩から聞きました」

ならば話が早いと月子と翼が頷く。

ちゃんが颯斗くんのお祝いを考えていたら、お邪魔かなって思ったんだけど...」

「うぬー。クラスが一緒でも放課後は生徒会で忙しいし、中々2人きりにはなれないと思うのだ」

愛されているんだな、と譲は感心する。

「直接先輩に聞いたほうが早いですよ。悶々としてるよりも」

「けど、ちゃんと颯斗君は大抵一緒にいるから...」

「じゃあ、ぼくが颯斗先輩を外に連れ出しますから、その間に先輩と話をつけておいてください」

しれっと譲が言う。

「え?」と月子が驚いていると「おそくなりましたー」とが生徒会室に入ってきて、それに続いて「お疲れ様です」と颯斗も入ってくる。

譲は月子に目配せをして早速作戦に出た。


譲に声を掛けられて颯斗は彼と共に生徒会室を出て行く。

「譲君って凄いね...」

月子が声をかけてきた。

が顔を上げて「そうだね」と返す。

「あのね、ちゃん」

月子が先ほど翼と相談していた颯斗の誕生日のことについて切り出す。

「いいね、今年こそはサプライズにしようよ!」

「出来る?」

「やるだけやってみようよ。きっと喜んでくれるよ」

嬉しそうにそういったに月子と翼は顔を見合わせて微笑み、頷いた。




そして、9月15日。

さん」

先ほど図書館に寄って生徒会室に向かっていると隣を歩く颯斗が声をかけてきた。

「なに?」

「僕に、何か隠し事をしていませんか?」

鋭い!

隠し事は比較的得意だと自負しているのに、彼はいとも簡単にそれを見抜いた。

見抜かれたが、簡単に自白するわけにはいかない。

あのあと譲と融にも颯斗の誕生日サプライズ計画の話をすると賛成だった。

なので、今のは生徒会の期待を一身に背負っているのだ。失敗は許されない。

「隠し事?例えば?」

「さあ?僕には見当つきませんけど...しかし、もしそうだったら悲しいですね」

と悲しげに目を伏せる。

思い切り心がぐらついた。ぐらついたが、その前に颯斗が「まさか」と何かを思いついたように視線を鋭くしたので言葉が出なかった。

「また何かに巻き込まれかけているんじゃないすか?」

「何かに、巻き込まれる?」

首を傾げるに「去年の」と颯斗が言う。

「あ。違う違う。それはない。ちゃんと何かあったら琥太にぃとか颯斗くんに言うから!!」

慌ててが言うと颯斗がぴたりと足を止めた。

2歩ほど進んでしまったは立ち止まり振り返る。

あ、あれ?不機嫌だ...

「颯斗くん?」とが声をかけると

「以前、僕は言いました。あまり僕以外の男の人と話しをしないでください、と」

確かに聞いた。

「う、うん」とは躊躇いがちに頷く。

「僕では頼りになりませんか?」

何のことだろう、と少し悩んで。先ほど颯斗よりも先に琥太郎の名前を出したような気がして納得した。

「違うよ。颯斗くんは頼りになるよ」

困ったようにが見上げると颯斗は苦笑する。

「冗談です。面白くないのは本当ですが、適材適所というものがあります」

颯斗の言葉にほっとした。



階段を昇る途中には足を止める。

さん?」

「ごめん、教室に忘れ物」

「一緒に行きましょう」

「いいよ。さすがに遅くなっちゃったし。会長と副会長揃ってのんびりはまずいって」

が言うと真面目な颯斗は「そう..ですね」と納得した。

「すぐ追いつくから」

「わかりました」

そんな会話をしては階段をくだり、踊り場まで下りると足を止めて携帯を取り出してメールを打つ。

『主役、そろそろ登場』

送信ボタンを押したは携帯を閉じてタイミングを見はかり、また階段を昇っていった。









桜風
12.12.7


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