月光 32





「おそくなりました」

とドアを開けた途端「誕生日おめでとう」と複数の声がしてクラッカーが鳴る。

目を丸くした颯斗は入り口で固まった。

「ぬはははー!そらそら、驚いてるぞ」

「颯斗君、誕生日おめでとう」

「颯斗会長、おめでとーございます」

「さすが、先輩。確実ですね」

仲間がそう声をかけてきた。

そして「颯斗、誕生日おめでとう」と思いがけない人物が立っていた。

「一樹、会長...」

「ったく...何度も言わせるな。俺はもう会長じゃないだろう?」

「僕にとっては、ずっと会長です」

そんな会話をしていると「どうだった?」とが入ってくる。

「大成功なのだ!」と翼が満足そうに報告する。

「で、驚いた颯斗くんの写真は?」

にこりと微笑んでが言う。

皆が顔を見合わせた。

「あ、あの...」と月子が代表していう。「ごめん、忘れてた」と。

暫く呆然としたが「わたしだけ、颯斗くんの驚いた顔が見られなかった...」と嘆く。

さん?」

不思議そうに颯斗が名を呼ぶ。


今日、突然が図書館に寄ってから生徒会室に行くと言い出したとき、少しだけ違和感はあった。

大抵仕事を済ませて行くのに、今日に限って先に本を借りに行くと言うのだ。

しかし、の背は低く、台を使わなければ書架の上段に手が届かない。だから、颯斗が必ず同行する。

誰かにちょっかいを出されても面白くない。

そして、図書館で本を借りた後また教室に忘れ物。

は手を上げた。

「颯斗くんに隠し事してました。誕生日のサプライズパーティを目論んでいました。去年は翼くんのどっかんのお陰でサプライズが出来なかったけど、今回は成功したみたいだね」

にこりと微笑む。

「ケーキを買いに行くのは物理的に無理だから一樹先輩の協力を仰いで、ケーキを買ってきてもらったの。宮地くんおススメのうまい堂」

「ね?」と月子に同意を求めると彼女も頷く。

うまい堂の何がおススメかは月子が宮地に聞いたのだ。

そして、一樹に連絡を入れて買ってきてもらった。

「と、いうわけで。じゃじゃーん!」

と翼が突然声を上げる。

「そらそらの誕生日をお祝いするのはこれ!」

「な、何だ。そのでっかい箱みたいなのは?」

「色とりどりの風船を沢山膨らませることが出来る、ぽこぽこ風船製造マシーン、膨らませるクンだ!」

シーンと生徒会室が静まり返る。

「ぽちっとな」と翼がスタートボタンらしきものを押した。

確かに、丸い色とりどりの風船が翼の紹介した発明品のお腹辺りから出てくる。

出てくるがとめどない。

「おい、翼。どれだけ出てくるんだ?」

一樹が不安げに言う。

「沢山出てくるぞ」

胸を張っていう翼に「具体的な数字では?」と譲が問う。

「店にある風船全部買い占めたから結構な数だな」

数えていないらしい。

「というか、翼。これ、本当に大丈夫か?!」

「ぬぬ...」

「翼君、それ、ちょっと止めてください」

颯斗が言うと「ぬー...わかったのだ」と不承不承に頷くが、「あれ?」という。

「いつものパターンだね」と颯斗のそばに居たが呟いた。

さん」とたしなめられた彼女は肩を竦める。

止まるどころか風船の製造速度が上がっている。

「翼、さっさと止めろ!颯斗、は大丈夫か?!」

風船に埋もれそうになっているを抱き上げた颯斗が「はい」と返事をする。

月子は一樹に抱え上げられている。

「翼先輩。これ、これ壊して良いですか?」

譲が聞くと翼は「うぬぬ...」と葛藤を見せる。しかし、「よし、許す!」と一樹が許可を下ろした。

早くしないと生徒会室が風船だらけになってしまう。

「融」と呼ばれて「んー」と気だるく返事をした融だったが、「せーの」と譲が合図を口にすると途端に鋭い眼光で翼の発明品を睨み、拳を繰り出す。

譲は上段蹴りだ。

鈍い音が生徒会室の中に響き、風船の製造は止まった。

「ぬわわわ〜!壊れたのだ...!!」

嘆く翼に

「とっくに壊れてただろうが!」

と一樹がゲンコツをお見舞いする。

月子は生徒会長の机の上に座らされている。

それに倣って颯斗もを抱き運び「少し待っててくださいね」と笑顔を見せた。

「翼君?」

自分たちからは見えないが、颯斗がどんな笑顔を浮かべているか簡単に想像がつくので、と月子は顔を見合わせてクスリと笑った。









桜風
12.12.7


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