月光 34





「なあ、書記。そらそらとはいつ帰ってくるんだー」

文化祭の準備で忙しい中、翼が手を止めてそう声をかけてきた。

毎年この時期、星座科と神話科は合同で発表会のため数日学校を明ける。

その発表会の場所は毎年変わるので、年によって何日留守にするのかは変わるのだ。

「今年は今日だけ。明日の午後には帰ってくるって言ってたよ」

颯斗は1日半で済んでよかったと胸を撫で下ろしていた。さすが、責任感の強い颯斗らしいと思う。

ちなみに、出発は昨晩だった。なので、昨日はと颯斗はギリギリまで残ってできるところまで仕事を済ませている。

「その発表会って全員がするんですか?」

2クラス3学年揃って何を発表するのか...

「発表自体は2つくらいのチームでするみたい。あとは、学外授業みたいなものらしいよ?夏休みのレポートを元に発表をするみたいだけど、今回ちゃんのが選ばれたって聞いたなー」

その関係の資料を作るのに忙しそうだった。

それなのに、生徒会に仕事もてきぱきとこなしていたと颯斗を凄いと思う。



「皆さん、ちゃんと文化祭の準備をしてくれているでしょうか」

発表前だというのに颯斗がポツリと呟く。

「青空...お前、それは羽を伸ばしに旅行に行ったはいいが家の事が忘れられない主婦的な呟きだぞ」

犬飼の突っ込みに「そんな感じね」とも笑う。

「そうでしょうか?」

「人数は足りてるんだし。つっこちゃん居るし。大丈夫でしょう?わたしたちも出来るところまでやってるんだからそんなに事務量は多くないって」

が言うと「そう..ですよね」と颯斗が頷く。

「てか、これから発表なのにお前なんでそれを飛び越えたことを心配してるんだよ」

クラスメイトに呆れられた颯斗が苦笑する。



自分達の発表が終わり、休憩に入ると「」と声を掛けられて振り返る。

宮地だ。

「なに?」

「お前は今月末の模試はどうするんだ?」

学部が違うとはいえ、進路が同じなので声をかけてきたようだ。

「受けてみるよ。今、自分が何処にいるかわたしの場合特にわかんないし。もう申し込んじゃった」

「夜久から聞いたが、学部が違うそうだな」

「まあね。宮地くんたちは、東月くんも一緒なんでしょ?」

「らしいな。本人から聞いてないが、夜久が言っていた」

少しだけ距離をとって颯斗が2人の会話を見守る。自分の進路ではそんな話は出ない。

少しだけが遠くに感じられて寂しくなる。

話の内容は進路なのに、と宮地が話をしているところを見るとやはり胸の中がモヤモヤしてしまう。

不機嫌に盛大な溜息をつく。や宮地に対してではなく、自分に対して。

「お待たせ」と自分の元へとやってきたを見下ろす。

「もう良いのですか?」

「うん。宮地くん、模試を受けるみたいだけど、学校に戻ってすぐに申し込まなきゃ間に合わないんだよね」

大丈夫かな、と言いながらてくてく歩く。


休憩時間は決められている。その間に昼食を済ませておくようにとも言われた。

各員に弁当が配布され、館内と屋外で飲食できる場所も指定されている。

たちは外に出て風に吹かれながら食事を摂る事を選んだ。

適当なベンチを見つけて並んで座る。

さんも模試、受けるんですか?」

先ほどの宮地との会話を思い出して颯斗が聞く。

「うん。会場がね、何と郁ちゃんの大学だって。地図送ってもらったから大丈夫」

見上げて微笑んだは首を傾げる。

颯斗が少し寂しそうな表情を浮かべている。

「あー、郁ちゃんの名前はダメ?」

「いいえ」と颯斗は首を振る。

面白くないと言うのが本音だが、彼女の付き合いに口を出して彼女の世界を狭めるのは良くないと頭では理解しているのだから、話題に上るくらい...

それに、たぶん郁がいたから自分達は恋人として先に進めたのだろうし。

自分の中に抱える矛盾を押し込めてにこりと微笑む。

「颯斗くんは嘘の笑顔が下手になったね」

が笑う。

「はい?」

「違うなー...わたしが颯斗くんの本当の笑顔を知っちゃったからかな?」

そう言ってビシッと指差す。

「寂しいときには?」

に問われて一瞬驚いたが、

「...寂しいです」

と素直に言う。

「よくできました」と言っては立ち上がり颯斗の頭を撫でた。

颯斗は大人しくに撫でられるまま、くすぐったそうに目を細めていた。









桜風
12.12.14


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