| スターロードの1件以来、融は生徒会室に来なくなった。 譲が理由を聞いても「部活が忙しいから」と答えるだけだった。 颯斗との様子を見ると何となくあの2人は知っているんだろうな、と思ったがおそらく聞き出すなら融が一番早いと思って何度か聞いているのだが、彼も中々口を割らない。 生徒会執行部に入るときの条件は融も一緒に、と主張した。 しかし、融が自主的にやめたときはどうしたものかと悩む。ここはそれなりに居心地が良いのだ。 久しぶりに校内の見回りを行うことになった。 文化祭が終わって、少し虚脱感が漂う放課後、生徒会が揃って校内を歩く。 「あの、翼先輩が消えています」 一番後ろを歩いていたはずの翼がいなくなっていることに気が付いた譲が先を歩く先輩たちに声をかけた。 「何処に行ったのかな?」と月子が首を傾げ、「トイレかな?」とが呟く。 のんびりした2人だ。 「声が、聞こえますね」と颯斗が言う。 どんな耳をしているんだ、と思いながら譲は耳を澄ませるが、放課後の部活動の声などで翼の声が判明しない。 「ひとつ下の階ですね」 「2年の教室...忘れ物かな?」 「迎えに行こうよ」 先輩達のそんな会話に言葉を差し挟む気にはなれずにそのまま付いていくことにした。 「融に謝れ!」と星座科の教室から翼の声が聞こえた。 慌てて生徒会メンバーは星座科を覗き込むと翼が一人に向かって怒鳴っていた。 その傍には少し泣きそうな表情をした融が居る。 「あれは、空手部の主将ですね」と譲が言う。 「はっ!現実を教えてやっただけじゃないか。第一、生徒会に入っていて気付かない月見山がオカシイんだろう?目障りにイチャイチャしまくってる生徒会会長と副会長。何で気付かないんだ?だから、スターロードの伝説を変えて、現実を教えてやったんだろうが」 どうやら自分達のことらしい。 と颯斗は顔を見合わせた。 「スターロードの伝説?」 譲が首を傾げる。 「あ!」とが小声で声を上げた。 融の言っていたのはこのことか。 出て行くべきかと悩んでいると「天羽ってさー」と彼らのターゲットが翼に変わった。 「お前、何でそんな変な笑いなんだ?」 「そうそう。いっつも失敗する発明するし。お前、確実に生徒会のお荷物じゃないのか?」 そう言って彼らは笑う。 「酷い」と月子が呟いた途端、ガラリと教室のドアが派手に開いた。 開けたのはだった。 「姉!」 中に居た融が声を上げる。 「ちょっと、あんた達」 颯斗は思わず背後を振り返った。 間違いなく、自分の前に立っているから発した声だが、声の鋭さ、声音が彼女の姉の夏凛そっくりだったのだ。一瞬彼女が来ているのかと驚いた。 「な、何だよ」 「うちの可愛い後輩たちによくもまあ...」 「...」 酷く傷ついた表情で翼がを見る。 「翼くん、今は見回りでしょう?」 が言うと「でも、こいつらが」とこの教室に踊りこんでいった経緯を話す。 どうやら、彼らは本人を前に堂々と融を笑い者にしていたらしい。 そこで翼は我慢ならず教室の中に怒鳴り込んだ。 彼らが笑っていたのは、融の恋心で、それは融にとってきっと凄く大切なものだったはずだから許せなかったのだ。 「そう」とが言い、主将を睨んだ。 「女のクセに鬱陶しいんだよ」 「この子達に謝って」 「お前が悪いんだろう!」 颯斗が一歩前に出ようとした。凄く不愉快だ。自分の大切な仲間を傷つけられ、更に、を軽んじられた。 しかし「そう」とが溜息混じりに相槌を打ったので足が止まる。 「じゃあ、こうしましょう。格闘家らしく試合で諸々の決着をつけましょう」 「はあ?!」と空手部が声をあげたが同時に颯斗も声をあげていた。 「わたしが勝ったら、この子達に謝って」 「ぼくたちが勝ったら、ですね。ぼくも相当頭にきました」 そう言って譲が加わった。そして、融を見上げる。 「お前も、こっちサイドだ」 「はっ!女とチビと融じゃあこっちが楽勝だな」 彼らの言葉には譲を見た。彼は頷く。 「団体戦。こっちは3人、そっちはフルで5人ね」 「舐めてんのか?!」 すごむ彼らに「さあ?」とは肩を竦める。 「ああ、でも。試合は3日後ね。そのたった3日で何とか付け焼刃、頑張って」 にこりと微笑むは、しばしば彼女の姉が見せる自信に満ちたそれと同じだった。 「じゃあ、こっちが勝ったらお前らだってペナルティがないとな。俺達が勝ったら、お前は彼氏と別れろよ」 さすがに颯斗は黙ってられない。しかし「いいよ」とが返す。 「さん!」 「これは、負けたときだけ有効なものだから」 と振り返る。 「さ、颯斗くん、見回りの続き行こう。翼くん、融くんも」 に呼ばれて翼と融がやってくる。 「後悔させてやる」 教室を出て行くたちの背にそんな言葉が向けられた。 |
桜風
12.12.21
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