| 「さん」 暫く歩いているとやっぱり我慢できなくなった颯斗が彼女の名を呼ぶ。勿論、責めるように。 「颯斗先輩、大丈夫ですよ」と譲は言う。だが、そんなの納得できるはずがない。 「ちょっと、皆さんは先に生徒会室に戻っていてください」 そう言って颯斗にしては乱暴にの腕を引いてその場から去っていく。 「俺、何で気付かなかったんだろう...」 融が呟いた。 「そりゃ、さんしか見てなかったからだろう?どっちかといえば、颯斗先輩を見てるほうが気付く」 譲がそう言って少し背伸びをして融の頭をはたいた。 「負けらんないぞ。颯斗先輩、超怒ってるし」 「...姉大丈夫かな?」 引き摺られるように連れて行かれたを思って振り返る。 「大丈夫よ。颯斗君、結局ちゃんに優しいもの」 「そーだな。そらそらたちが先に生徒会室に戻ったら俺達が怒られるから、残りの見回りを済ませて早く戻ろう」 翼がそう言って皆を促す。 そんな彼を融は何か言いたげな眼差しで見上げ、「はい」と頷いた。 「颯斗くん、痛い...」 が抗議の声を上げるが、颯斗は聞く気がなくそのまま教室へを連れて行った。 幸い、誰も残っていない。 そこでやっと颯斗の手が離れた。 「さん」 見上げた先にあった颯斗の眸は怒りと悲しみが綯い交ぜになっている。 「さん、僕は生徒会長です。生徒会執行部を守るのは僕です」 「あ...」 は俯く。物凄く、でしゃばってしまったんだ。彼の矜持を踏みにじったのかもしれない。 「ごめんなさい...」 「すみません、僕が言いたいのはそれじゃないんです。そっちは建前です」 覗うようにが颯斗を見上げる。 「さんが強いのは、僕は知っています。けど、僕も男です。好きな人は自分の手で守りたいと思うんです。僕にあなたを守らせてください」 暫く俯いていたは「ごめんなさい」ともう一度謝る。そして、顔を上げた。 「今回のこと、でしゃばってごめんなさい。けど、颯斗くんには沢山守ってもらってるよ」 「僕は何も出来ていません」 自分で言って悲しくなる。 「颯斗くんは、わたしの心を守ってくれてる」 の言葉に颯斗は目を丸くした。 「やっぱりね、日々色々とこけそうになることあるんだ。挫けてしまいそうなこと。けど、颯斗くんの声とか、ピアノの音とか思い出すと頑張れるなって思う。 1年後には颯斗くんは海外で、わたしは日本にいて。不安だとか寂しいとか沢山あるだろうなって思ったときに、頭の中で颯斗くんのピアノの音が聞こえたの」 そう言って胸の中心、心臓に手を当てる。 「颯斗くんの音は、ちゃんと此処にあるなって安心した」 「...さんは、ずるいですね」 「颯斗くんほどじゃないよ」 の言葉に悲しげに睫を伏せ、そして困ったように笑う。 「僕は、一樹会長のように強引な方法で事を収めるのは苦手です」 「うん」 「けど、僕のやり方で今回のことを収めます」 「試合..は?」 「今更中止にすれば融君と翼君が傷つけられたままです。そして、僕の愛しいあなたは侮辱され続けます。それは僕も我慢ならないので..仕方ありません」 ほっとすると同時にに疑問が浮かぶ。 「じゃあ、どうするの?」 「まだ秘密です」 にこりと微笑む颯斗の笑顔は少し怖かった。 「さあ、生徒会室に戻りましょう」 そういった颯斗が足を止めて振り返る。 不思議そうに見上げるに軽くキスをした。 「颯斗くん?!」 「今の状況なら『目障り』にはならないでしょう?」 悪びれずに言う颯斗にはぽかんとした。 「わたし、颯斗くんが時々わかんない...」 「僕が、あなただけを愛していて、僕以上にあなたを愛している人はない。それを覚えていてください。それで充分です」 本当、時々思い出したように恥ずかしいことを言う颯斗は未だにそのタイミングが分からない... |
桜風
12.12.28
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