| 試合前日の夜に部屋をノックされた。 「はい?」と出てみると琥太郎だ。 「家から、お前に。噂、凄いな...」 呆れたようにそう言いながら本日宅急便で学園に送られてきた荷物をに渡す。 「あ、間に合った」 「道着なんて要るのか?」 「格闘家としては、必需品。ありがとう」 「...青空、怒ってただろう?」 琥太郎の指摘には一瞬固まる。 「当然だ。ったく...」 そう言って軽く小突く。 「明日、負けたとしても別れてまた付き合うんだろう?」 「負けないけどね。万が一、向こうに奇跡が起きたらそうする」 「そういうペテンはどう考えてもアキからだな。姉さんが嘆くじゃないか」 肩を竦めて言う。 「春姉ちゃんも、この思い付きには賛成だと思う」 ひねた人間に育てられたからなぁ... 「有李が居なかったら、お前はどんな子に育っていただろうな」 「少なくとも、此処にはいなかったと思う」 は笑う。 琥太郎は少しずつ有李の話を自然と口にするようになった。それがとても嬉しい。 そして、の表情から彼女の感じているそれに気付き、少し決まりの悪い琥太郎は一度咳払いをした。 「俺は明日理事長の仕事で戻るのがおそらく夕方だ。怪我、するなよ。じゃないな、怪我をさせるなよ」 「向こうの出方次第だよ」 しれっと返すを見て、できれば試合までに用事は済ませて学園に戻っておきたいと思った琥太郎だった。 翌日、は生徒会室で道着に着替えて道場に向かった。 「ちゃん、カッコイイ!」 月子に声を掛けられてにこりと微笑む。 「さん、道着に袖を通すのにどれくらいぶりですか?」 ウォームアップをしながら譲が問う。 「道場辞めて以来かな?」 「実戦は?」 「道場での試合は、この間の春休みに月見山兄を伸しただけ。半年ちょい前だね。あと、暴漢に襲われて鉄パイプ蹴っ飛ばしたのがこの間の夏休み」 の返事に溜息をついて「刺激的な日常ですね」と譲が返した。 「じゃあ、話したとおりに、先鋒がさんで、中堅がぼく。大将が融で」 譲の確認には頷くが「でもさー」と融が反論する。 「黙れ、お前の意見はこの場では聞かない」 「やっぱり、将来は月見山道場師範代になる月見山弟が大将でしょう。わたしたちは趣味で終わらせたんだし」 「そういうこと。腹括れ。んで、ムカつく先輩ぶっ飛ばせ」 譲にそういわれて「うん...」と融が頷く。 「審判は、向こうの部員か...」 が呟く。 「これは、余計に完膚なきまでに、ですね」 「今日は星月先生留守らしいんだけど...」 「それは、不運でしたね」 冷たく言い放った譲に肩を竦める。自身、あの時は相当頭にきたが、今はそうでもない。融と翼に謝罪してもらえればそれで充分だが、譲はあのときの怒りのテンションが持続しているようだ。やはり体力がある。 「では、月見山道場の実力、見せてやりましょう」 すっかりこの場を仕切るのは譲の仕事となってしまった。 互いに礼をして先鋒が残る。 「ー!頑張れよー!!」 格闘技好きの七海が声をかけてきた。 振り返るとギャラリーに人だかり。凄いなぁと他人事のように思う。 七海の声援に軽く手を上げて中央に向かった。 |
桜風
12.12.28
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