| 副将の試合も先ほどと同様、時間を掛けてじっくりジワジワと相手に精神的なダメージも与えつつ結局譲の圧勝で終わった。 そして、大将戦。 「負けたらぶっ飛ばすからな」と譲が発破をかける。 「同じく。圧倒的な実力の差を見せ付けてあげなさい。あ、でも伸しちゃダメよ。謝らせるんだから」とが笑顔を見せる。 融は苦笑して「怖ぇ」と呟き、顔を上げる。 壁際で颯斗が腕を組んだまままっすぐにこちらを見ていた。その隣の月子と翼は心配そうに。 「そっか」と呟く。 彼らは『仲間』なんだ。 「大将、前へ」と呼ばれて中央に向かった。 対峙した主将を見つめる。 自分はこの人の何処が尊敬できるだろう... 譲みたいに自分より弱い人に頭を下げるのが我慢ならない性格ではない。 格闘技をしているのだから強いに越したことはないが、それ以外に尊敬できる、普段の行動や努力の姿勢などがあれば自分は頭を下げるのは何でもない。そこから学べるところがあるはずだから。 だが、と入部して半年を思い出す。 この人たちは自分にどんな姿勢を見せてくれただろうか。 3年が引退した途端、我が天下だといわんばかりの理不尽な言葉、行動。 人を比べるのは良くない。家でよく言われるがあえて比べる。 颯斗は多忙なのに生徒会をまとめ、自分が一番仕事をしている。 月子は部活動と生徒会。そして、保健係とどれも手を抜かずに全力で臨んでいた。 翼は、妙ちくりんな発明を世に送り出してはすぐにスクラップにしているが、既に1年やっていることもあって生徒会の仕事を把握しているし、颯斗の信頼に応えられるように準備をしている。 そして、。自分と翼が傷つけられたことに憤り、こうして闘ってくれた。道場に通い始めたきっかけは苛められたことだといった。しかも、苛めた張本人が自分の兄だと聞いたときには呆れた。結局彼女が小学校高学年のときに兄は伸されてそれ以来、彼女に勝てていない。 自分は、尊敬できる仲間がすぐ傍に居たのだ。 翼と言い争うのは楽しかった。「同属嫌悪」と呆れたように譲に言われて、それはちょっと違う気がして反発したが、たぶん、指摘された通りなのだ。 自分の居たい場所は考えるまでもなく、あそこにある。 「それまで!」 「さん」 と颯斗が声をかけてきたが、「颯斗先輩、もう少し待ってください」と譲が言って、に手を貸す。 まだ挨拶が済んでいない。 向こうも3人、こちらも3人並ぶ。 2人少ないのは、と対戦した2人はまだ伸びたままだからだ。 「あ、琥太にぃ」 ポツリと呟く。 伸びたままの生徒を見ている。そして、振り返った琥太郎はを軽く睨んだ。手加減しろと言っただろうといわんばかりの表情だ。 は視線を外した。ちょっと気まずい。 試合が終わる。 「翼くん!」とが手招きをした。 翼がやってくるのを待って、「さ、2人に謝って」とが言う。 しかし、「俺は良いよ」と翼が言う。 「俺は良いから、融には謝ってほしい。傷ついたのは融だから」 「翼君...」 月子が感極まっている。 「じゃあ、融くんに謝って」とが言うと融が軽く手をあげた。 「ごめん、姉。俺も、もういいや」と言った。 「けど、俺、部活辞めます。退部届けは顧問の先生に提出すれば良いんですよね」 主将を見ながらそういった。 「ちょ、待ってくれ」 主将が融を引きとめようとするが、「待ちません」と返す。 「俺、部活も生徒会も両立できるほど器用じゃないし。ずっと会計の仕事サボってて翼先輩に任せっきりにしてたから仕事覚えてないし。いい加減、覚えないと間に合いそうにないから」 翼はきょとんとした。 しかし、と颯斗、月子に譲。彼女たちには何に『間に合う』なのかがわかり、微笑む。 きっと、それは殆どの人が今はわからない。 ただ、彼はギリギリで間に合った。全員がわかるのは数ヵ月後のことになる。 「では、先ほど僕のほうからお話しましたとおり、来年度の部費の削減は実行させていただきます」 颯斗はそう宣言してそのままを抱き上げて歩き出す。 「颯斗くん?!」 「足、痛いでしょう?」 「青空!」 琥太郎が声をかける。 足を止めて振り返ったところに何かが飛んできた。鍵だ。 「保健室はまだ開けていないから。すぐに行くから傷口を洗っておいてやれ」 「わかりました」と応えた颯斗は「別に、ゆっくりでも構わないんですけど」と呟き、と目を合わせる。 「さあ、お仕置きの時間ですね」 にこりと微笑んで言う颯斗にぞくりとした。 |
桜風
13.1.4
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