| 翌日、翼の願いが叶った。 夜中に何かしたのではないかと思うくらいの積雪。 寮から校舎までの道のりが遠い。 いつものように颯斗がを迎えに行き、とりあえず彼女の荷物を持ってみたが、それでも歩きにくそうにしていたので抱えてみようかと本気で思ったのは本人には内緒だ。 「ありがとうね、颯斗くん」 教室に入って鞄を受け取ったが言う。 「どういたしまして」 「これって、翼くんの執念だよね」 が笑いながら言う。 「これだけ降られると、雪合戦というのも大変ですね」 窓の外を眺めやって颯斗が言う。 雪はしんしんと降っており、山を見ればまだまだ降りそうだった。 放課後にはようやく雪は止んだが、積雪が昨年の比ではない。 都会っ子の融と譲は、これだけの積雪を目にするのは初めてだった。 「さすが山の中...」 譲が呟き、 「で、雪合戦っスよね!!」 と目を輝かせているのは融だった。 「うぬ!このときのために..じゃーん!」 「却下ですよ、翼君」 にこりと微笑んで颯斗が言う。 何やら発明をして準備をしていたらしいが、その紹介すらさせてもらえない。 「ぬぬぬ...」 悔しがっているが、颯斗はそれを特に考慮することなく、チーム分けを考え始めた。 「じゃんけんで良いんじゃない?」 が言う。 「そうですね...」 チーム分けに時間を費やすのも勿体無い。 じゃんけんの結果、翼と、そして譲が同じチームとなった。 「先輩と月子先輩が別チームになったのはバランスが取れて丁度いいですね」 譲が言う。 「そうだな。よし、作戦会議だ!」 張り切った翼はそのまま作戦会議と称してと譲と肩を組んで内緒話を始める。 「...まずは、翼君から潰しましょう」 「っスね」 颯斗と融は目が据わっている。月子はそんなことが特に気にならなかったので、彼らを止める者は居ない。 かくして、翼が秒殺された。 「あー、面倒くさいのを怒らせてしまってましたねー」 木の陰に隠れながら譲が呟く。 「つっこちゃんに当てづらいよねー」 「悪いけど、まずは颯斗会長か...」 譲と軽く打ち合わせをして同時に木の陰から飛び出した。 颯斗と融がを狙うはずがないので、譲は囮。 つまり、狙撃主はになるのだが、これまた彼女的には月子に当てたくないというのがあって、上手く投げられない。 3対2という状況だが、運動神経と体力のお陰で良い試合が出来ている。 しかし、ここで忘れてはならないのは、言いだしっぺの存在。 「ぬー!みんな楽しそうなのだ!!」 我慢できなくなった翼は先ほど紹介すらさせてもらえなかった発明品のスタートボタンをポチッとな、と押した。 「そらそらたち5人で楽しそうなのだー。俺も仲間に入れろー!」 翼の声に皆が驚いて手を止めて振り返る。 「何か来ましたよ」 譲が言う。 「これ、逃げた方がいいんじゃねースか?」 後ずさりながら融が言う。 「融くんに賛成!」 が声を上げて颯斗を見た。 「そうですね、爆発に巻き込まれては大変ですし」 「はっしゃー!」 翼がそう叫んだと同時に白い玉がポンポンと飛んでくる。 「ちょっと、翼君?!」 颯斗が窘めるように彼の名を呼ぶが、自分の発明が世に出たことが嬉しい翼は上機嫌で、止めるはずがない。 「姉!」 「いっけー!」 融がに確認し、彼女の許可を貰った。 譲を見れば、逃げていた方向を転換し、翼の元へと駆けていた。 「怪我をさせたらダメよー!」 の掛けた言葉に2人は軽く手を上げた。 「ぬー、酷いのだ...」 「雪合戦にマシンを持ち込むほうが悪いですよ」 譲が言う。 翼の発明品は、月見山道場2人組のお陰で爆発に至る前に止まった。 そういえば、現生徒会は爆発が減ったと琥太郎が苦笑していたことを思い出す。 「さん?」 クスリと笑った傍らのに声を掛けると、 「良い人材が生徒会に入ったね。爆発が減ったって琥太にぃが言ってた」 とが笑う。 言われてみれば、そうだったと颯斗は苦笑する。 「そうですね」 颯斗は手をパンパンと叩いた。 「さ、生徒会室にみんな戻りましょう。このままだと風邪を引きますよ」 颯斗の言葉に皆は返事をして生徒会室に向かう。 「あ、翼君。それはちゃんと片付けておくんですよ」 融達に破壊された鉄の塊を指差して颯斗が言う。 「ぬー!そらそらの鬼嫁!!」 「僕はお嫁さんではありませんよ」 にこりと微笑んで颯斗が言う。 と月子は顔を見合わせて苦笑した。 そして回れ右をして 「手伝うよ、翼君」 「ほら、とりあえずバラバラにならなかったのが幸いだね」 そう言って月子とが手を貸す。 彼女たちが手を貸せば知らん振りというわけにも行かず、融と譲、そして颯斗が片づけを手伝う。 ついでなので、みんなで大きな雪だるまを作成し、校庭の隅に設置した。 |
桜風
13.2.8
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