月光 51





大掃除大会が終了した。

颯斗としては不本意であったが、今年も女子生徒との餅つきがご褒美で。

そうなると、3年天文科が頑張るに決まっている。

お陰で、あのクラスは3年連続優勝だ。

今年は翼の珍妙な発明品がなかったので、大掃除大会は平和に幕を閉じた。


「今年の大掃除大会は、ちょっと物足りなかったね」

が言う。

「何で?」

汁粉の中の餅を咥えながら融が問う。

「翼くんが発明品を披露しなかったから」

の言葉に「さん!」と颯斗が窘める。

「ぬ?どうしたのだ??」

「何でもありませんよ」

自分の名前が聞こえた気がした翼が寄ってきたが、颯斗が笑顔で返す。

「本当か?」

「本当です」

にこりと微笑んで言う颯斗のそれに勝てるはずもなく、翼は「ぬー...」と何やら納得の行かない様子だったが

「翼君ー!お餅なくなるよー」

と汁粉の番をしていた月子に声をかけられて彼はそちらに向かっていった。

「来年から..てか2月からかな?大変そうだよ」

融が苦笑して呟く。

「なにが?」

が問い返すと、

「颯斗先輩が引退して生徒会から居なくなるじゃん。まあ、姉と月子先輩もだけど」

と言う。

「ん?」

首を傾げる

「翼先輩、誰が止めるの?」

と融が言う。

彼の発明がなくなるはずがない。

と言うことは、それに付き合っていく必要がある。颯斗みたいに、発明品を披露する前に止められれば良いが、そうでない場合は...

噂によると、大抵爆発して終わるとか。

「融君と譲君が揃えば大抵のものは破壊できるんじゃないですか?」

颯斗が問うと、融は苦笑した。

「そりゃ、物理的には可能ですけど。先輩の造ったもんを簡単に壊すってのは...」

長年、縦社会に身を置いていた融らしい言葉だが、颯斗は何と言って良いか悩む。

「いいじゃない。拙いと思ったら壊しちゃえば?」

が言う。

あまりにもあっけらかんと言うので颯斗は苦笑した。

「では、僕の指示ということで。翼君が危ないと思われる発明品を披露した場合は、融君の判断で壊してしまってください。爆発すれば他の人を巻き込むことになります。生徒会執行部は、この学園を良くするための組織ですからね」

颯斗の言葉に

「了解っス!..汁粉ぉーーーー!!」

と融は敬礼し、手に持っていた汁粉を零す。

「何やってんだよ...」

呆れた口調でそういいながらやってきたのは譲で、融は自身が零した汁粉を悲しげに見下ろしていた。


が掃除用具の片付けの点検を行い、生徒会室に戻ると颯斗だけが居た。

「あれ、皆は?」

「先に帰しました」

「一応、在庫をまとめておいたし、来年は楽に発注掛けれるとは思うけど」

そういいながら先ほどチェックしたものを颯斗に確認してもらう。

「そうですね。来年は、そんなに発注しなくても良いかもしれませんね」

「去年は、翼くんのゴリラーマンの暴走のお陰で掃除のやり直しがあったしね」

が言うと颯斗は懐かしげに目を細めた。

「大騒ぎでしたもんね」

「楽しかったね」

が呟き、

「そうですね」

と颯斗は頷く。

「さ、僕たちも帰りましょう」

気分を変えるように明るい声を出して颯斗が言う。

またひとつ行事が終わり、卒業が近付づく。

「心というものは、どうしようもないですね」

生徒会室を後にして、階段を下りながら颯斗が呟き、繋いだの手をキュッと握った。

「ん?」

が颯斗を見上げた。

「寂しいですね」

「仕方ないよ。時間は止まってくれないんだもん」

そう言ったの笑顔も、どこか寂しげで、颯斗は困ったように笑い、腰を屈めてキスをした。









桜風
13.2.15


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