月光 56





新学期が始まり、生徒会長選挙が行われる。

今年は、翼が立候補することを皆にはっきりと告げた。

去年はこれで揉めに揉めた。

そして、融の会計としてのスキルも随分上がった。これで翼は、会計のことを気にせずに会長としての仕事に勤しめる。

「間に合ったね」

笑ってが言う。

「ええ」

学校帰り、颯斗共に帰りながらが言う。

「しかし、さん。選挙の方はひとまず気にせず、ご自分のことを気にしてくださいね」

あと数日でセンター試験だ。

これを経て本番といえる二次試験に臨むことができる。

一応、模試などの判定では合格圏内だが、そんなのは目安に過ぎない。

「うん、ごめんね」と謝るの唇に颯斗はそっと人差し指を当てる。

「謝らないでください」

そう言ってキスをした。

「大丈夫です。融君と譲君はこの半年で見違えるくらいに成長しました。あなたと月子さんが数日いなくても生徒会を支えられます」

「それは、それで寂しいね」

が困ったように笑った。

「...そうですね」

颯斗も寂しげに笑う。

の寮の前で再びキスを交わしてその場を別れる。


センター試験が終了してと月子は生徒会に復活した。

2人とも生き生きとしている。

「結果は?」

融が問うと

「まあ、模試のときとそう結果は変わんなかったよ」

が応える。

「それって、いいのか?悪いのか??」

翼が聞く。

「合格圏内。センターだけだったらね」

の言葉に生徒会は沸き、月子も今回良く出来たと言っていた。

「では、次は翼君ですね」

颯斗が言う。

次は翼が生徒会長となれるよう、選挙を頑張る番だ。

「ぬいぬいさー!」

元気良く彼は右拳を突き上げた。


2月1日。

たちは生徒会執行部を引退した。

会長はまだ引継ぎがあるから少し生徒会室に顔を出す必要があるが、副会長と書記は仕事をしながら引き継いでいるから本来顔を出す必要がない。

ただ、仕事量の関係で手伝いに顔を出している。

しかし、彼らは彼らでたちの受験が気になるので早々に彼女たちを追い出していた。

仕方なく、は図書室で、月子は寮に帰って勉強をしていた。

颯斗は仕事が終わると図書室にを迎えに行き、一緒に帰ることを習慣としていた。

さん」

「なに?」

2月の半ば、颯斗が切り出した。

「今年の、その..バレンタインですが」

勉強が大変だろうから、と颯斗が断ろうとしたら

「この間、ちょっと気分転換に街に行ったから」

が言う。

「大丈夫ですか?」

「だって、去年はバレンタインデーにプレゼントできなかったじゃない」

肩を竦めて言うと

「...去年と同じもので良いですよ?」

と颯斗がイタズラっぽく言う。

昨年は、颯斗のために作ったチョコが失敗してしまい、バレンタインデーに渡すことが出来なかったのだ。

そして、バレンタインデーに何もないのは嫌だから、と颯斗に美味しくいただかれてしまったのだ。

「ダメよ。あんなキスされたら受験当日まで颯斗くんのことしか考えられなくなっちゃう」

が言うと颯斗の喉が鳴る。

「ダメだからね!」

慌ててが制止をかける。

「ダメ、ですか?」

「ダーメ。申し訳ないとは思うけど、わたしの受験が終わるまで我慢して」

上目遣いでお願いされて颯斗は撃沈した。

言っていることと行動がちぐはぐになっている。

元々、身長差のある二人だからは大抵颯斗を上目遣いで見ることになるし、慣れている、否、慣れるように努力をしているが中々難しい。

「では、さんの受験が終わったら...」

そう言って彼はの耳元に口を寄せる。

「良いんですね?」

艶のある声で言われては真っ赤になった。

コクリと頷いたに颯斗は目を細める。

「では、我慢します」

そう言って触れるだけのキスをした。

とりあえず、これなら良いだろう。

「さ、参りましょう」

手を差し出されてはそれに重ねる。

「おや、さんの手は温かいですね」

先ほどの颯斗の声とキスで上がったばかりの体温を揶揄された。

「もう知らない!」

駆け出そうとして颯斗に手を握られてそれが阻まれる。

「一緒に帰りましょう」

振り回されてばかりの状況にはちょっと拗ねた。









桜風
13.3.1


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