| 駅に降り立ち、バスの時刻表を確認しているとクラクションが聞こえ「颯斗」と名を呼ばれた。 顔を上げて周囲を見渡すと晴秋が軽く手を上げた。 颯斗は足早に彼の元へと向かう。 「お久しぶりです」 「ま、1年振りだな」 そう言って晴秋は、颯斗に車に乗るように促した。 「お迎えにきてくださったんですね」 「家に居たら顎で使われるからな。まだ迎えに来るほうがマシだった」 そんな会話をしていると颯斗の携帯がメールを受信した。 「あ、」と呟く颯斗に「なに?」と晴秋が言う。 「さんからです。『お兄ちゃんが迎えに行っているので探してみてください。あとついでに買い物をお願いします』って」 「買い忘れかよ...」 苦笑して晴秋は、ひとまず行き先を実家から郊外型のスーパーへと変えた。 「駅前は思ったほど開発が進んでませんね」 「何か、難航してるっぽいな。颯斗ならご近所のおばさんたちにモテモテになるだろうから色々聞き出せるかもしれないぞ」 「そんな時間を使うなら、さんとお話しているほうがいいです」 「あ、今オレ、ムカついた」 笑って晴秋が言う。 「、丸々煮物の材料忘れてたな...」 かごの中に入った食材を見ながら晴秋が苦笑する。 「煮物、ですか?」 「お節作ってるからな、ウチの女性陣」 「お節ですか?」 「食ったことある?」 「いえ、あるとは思いますが。大抵、デパートだとかで注文したものだったと思いますので」 颯斗の言葉に「ふーん」と相槌を打って晴秋はレジに並んだ。 駐車場に戻って車のエンジンをかけると「お願いがあるのですが」と颯斗が言う。 「何だ?」 「さんたちのご両親のお墓参りをさせていただけませんか?」 「んじゃ、寄って帰るか。だから、花束持参なんだな」 「ええ。ここら辺はあまり詳しくなかったのでお花を買えるかどうか分かりませんでしたから」 「一瞬にかと思ってびびった」 笑いながら晴秋が言い、車を走らせる。 「さんに花束と言うのは、いけませんか?」 「...いや、オレの慣れ親しんだ文化にないだけ」 悪くはないだろうが、何だろう。むずがゆい。 一度実家の前をスルーして寺に向かった。 「場所分かるか?」 寺の駐車場が一杯だったので晴秋は外で待つことにした。 「たぶん。一度お邪魔していますから」 「んじゃ、行って来い。分からんかったら寺の人に聞いたら親切にに教えてくれるはずだ」 晴秋の言葉に頷いて颯斗は墓地に向かっていった。 の両親の墓には色とりどりの花が供えられていた。正月飾りのようなものもあり、苦笑する。 花を供えて線香を上げて手を合わせる。 お参りが終わり、帰ろうとすると「おや」と声がして振り返った。 「あ、ご住職」 「君は確か、ちゃんの...コレ」 『コレ』と言いながら親指を立てる住職に苦笑して「まだお付き合いさせていただいています」と颯斗が頷く。 「そうか。お元気でしたかね」 「はい」と頷くと「君一人で?」と問われた。 「いいえ。駐車場が一杯でしたので晴秋さんが外で待ってくださっています」 「なるほどね」 うんうんと穏やかに微笑む住職に挨拶をしてその場を後にした。 「熱心だったな」 少し時間が掛かったことを言われた。 「住職に声をかけられました」 「暇なんだなー」 苦笑して晴秋が言う。 「んじゃ、もうウチに帰って良いか?あと、姉ちゃんに顎で使われるの覚悟しとけよ」 晴秋の言葉に「はい」と苦笑して颯斗は頷いた。 |
桜風
13.5.10
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