| 今年の桜の開花は遅かった。 4月に入って記録的な雪が降ってみたりと、中々春がやってこなかったのだ。 桜の花びらがヒラヒラ舞っている。 「あ!」 月子が突然大きな声を上げた。 「ど、どうしたんだよ...」 隣を歩いていた犬飼が声を上げた。 「ちゃんの誕生日!」 「へ?の誕生日??いつ」 「今日...!」 悲痛な声で月子が言う。 何も用意していない。 以前、彼女は一樹と共に4月生まれの悲しい環境の話をしていた。 つまり、新学期、しかも学年が上がったばかりだとかで忘れられがちだと言うことをお互いはなして「うんうん」と同意していたのだ。 それを聞いていた月子は2人の誕生日は絶対に忘れないと気合を入れていたのに、今年、うっかりの誕生日を忘れていた。 「友達失格だ...」 この世の終わりのように彼女が言う。 「や、それくらいで友達が失格になる方がどうかしてんだろう」 呆れたように犬飼が言う。 「だって、ちゃんは颯斗くんがウィーンにいるのよ?寂しいかもしれないじゃない」 「姉ちゃんと兄ちゃんいるだろう。あいつのきょうだい、凄い勢いでお祝いしてたじゃないか」 学校中を縦横無尽に駆け巡っていた年もあった。 「お久しぶりです」 不意に声をかけられて月子と犬飼は声を上げる。 「え、どうしたの?!」 「てか、久しぶりだなー。クリスマスとか帰ってきてたんじゃないのかよ」 「ええ」 頷く彼に「何で連絡してこないんだよ」と犬飼がぼやく。 「どうせ、とずっと一緒にいたかったから、とか言うんだろう?」 「その通りですよ」 「あー、腹立つ!すげー腹立つ!!オレも彼女欲しい...!!」 心からの言葉を犬飼が叫ぶ。 「頑張ってください」 「腹立つなー!」 「え、えっと...颯斗君?」 「お久しぶりですね、月子さん」 「ど、どうしたの?えっと...」 颯斗が突然目の前に現れて月子は混乱しているようだ。 「今日は、さんの誕生日ですから」 そう言って微笑む。 「学校は?」 「明日には帰ります」 月子の問いに対する的確な返事ではないが、颯斗のことなので無茶はしていないのだろうと納得することにした。 「ちゃんは知ってるの?」 今日のランチでそんな話は出なかった。 「いいえ。サプライズです。昨年、僕もされましたので」 颯斗が笑顔で応じた。 バイトとか大丈夫なのだろうかと思ったが、おそらくその点も抜かりなしのはずだ。 「それでは、皆さんにもよろしくお伝えください」 時計を確認して颯斗が挨拶をし、その場を去っていく。 「懐中時計ってかっけーな」 犬飼が呟いた。 「ビックリした」 月子も呟いた。 正門に向かってを待っていると彼女の姿が目に入る。 ズキンと胸が痛んだ。 知らない顔のだ。 何人か、友人達と共にこちらに向かって歩いてきている。 友人の中には異性、つまり男性もおり、それが余計に胸をざわつかせる。 「本当に、僕は...」 服の胸の辺りをぎゅっと掴んで深呼吸を1回。 「さん!」 彼女は驚いたようにこちらを見た。 「颯斗くん!!」 駆けてきた彼女は驚いたことに胸に飛び込んできた。 ぎゅっと彼女を抱きしめる。 「お久しぶりです」 「ひと月くらいだけどね」 そう返したが颯斗から離れる。 「どうしたの?」 「前に、お話しませんでしたか?さんのお誕生日には、お休みがもらえると」 「うん、聞いてる。え、態々帰ってきてくれたの?」 が驚きの声を上げる。 「あなたは、僕の誕生日に態々ウィーンに来てくださったではないですか」 颯斗が呆れたように返した。 「僕も、あなたの誕生日をあなたに会ってお祝いしたいと思ったんです。昨年は、もうしわけありません。できませんでしたが...」 「ううん、凄く嬉しい!」 「ー?」 友人らしき一人が声をかけてくる。 「あ、ちょっと待っててね」 颯斗にそう言っては向こうに戻っていった。 何かが話をし、彼らは興味津々で颯斗を見る。 ぺこりと頭を下げると向こうも慌てて下げる。 すぐには戻ってきた。 「よろしかったのですか?」 一応確認してみた。 「うん。図書館に寄って帰ろうって話になってただけだから」 そう言っては彼らを振り返って手を振った。 それぞれが手を振り返してぞろぞろと同じ方向に歩いていく。おそらく、図書館がある方向なのだろう。 「えーと、これからどうする?」 「ひとまず。さんの家に行きましょう」 そう言われては頷いた。 |
桜風
13.6.7
ブラウザバックでお戻りください