| のマンションに2人で帰る。 「どうぞ」と促されて颯斗は「お邪魔します」と先に部屋に入る。 続いてが入ってドアを閉めるとまだ玄関にいた颯斗に唇を塞がれた。 久々に合わせた唇は中々離れず、漸く離れた頃にはの腰が立たなくなっていた。 「大丈夫ですか?」 ひょいとを抱えて颯斗は部屋の中に入る。 「いきなりすぎ」 「すみません、我慢できませんでした」 こういうときの颯斗の謝罪はあまり心が籠もらないような気がする。 は気合を入れて立ち上がり、「紅茶?」と颯斗に確認しながらキッチンに向かった。 が淹れた紅茶を飲みながら「颯斗くんはここに泊まるんでしょう?」とが確認する。 「良いんですか?」 「そのつもりで来たんじゃないの?」 バッグが少し大きめだからそうかなと思っていたのだ。 「期待はしていましたが、お約束していませんでしたので」 と颯斗が言う。 「いいよ。けど、ベッド狭いよ?」 「大丈夫です。あなたを抱きしめて寝ますから」 颯斗の言葉に一瞬怯んだだったが、「じゃあ、夕飯どうしようか」と話題を変えた。 「それなら、外で食べましょう。実は、もうレストランを予約しているんです」 と颯斗に言われて驚く。 「そうなの?!」 「ええ」と頷く颯斗には思わず笑みが零れた。 「ありがとう」 「いいえ。僕も、あなたの二十歳の誕生日を一緒にお祝いできるのは嬉しいです」 予約の時間まで少し時間があるから、と颯斗はの部屋のピアノに向かった。 「調律は...」 「お姉ちゃんが凄く気にしてて、春休みにやってもらったばっかりだから..たぶん大丈夫」 の言葉に颯斗はホッと息を吐く。 「では、さん。リクエストをどうぞ?」 の顔がパッと輝いた。 颯斗の座る椅子のそばにぺたりと座って、知っているピアノ曲のタイトルを挙げる。 それに颯斗はすべて応えた。 「颯斗くん、またなんか変わった?」 「そう..ですね」 「凄いね、日々大進化だ」 が言うと颯斗は困ったように笑う。 「そうでしょうか」 それは果たして進化なのかわからない。 「お師匠さんは?」 「最近、特に厳しくなって。僕は、もしかしたら...」 ダメなのかもしれない、と言おうと思った。 しかし 「凄いじゃない」 とに言われて颯斗は驚く。 「凄い、ですか?」 「凄いよ!だって、颯斗くんのお師匠さんって、ウチのお姉ちゃんと同じタイプでしょう?お姉ちゃん、期待していない人間には何も言わないよ。期待できる相手にしか厳しくしないんだって。だから、お師匠さんが厳しくなったなら、期待されている証拠だよ!」 全く夏凛と同じことをするかどうかはわからない。 だが、そうだとしたら... ぐっと歯を食いしばる。 ここで逃げたら切り捨てられる。 そして、ここを乗り越えたらまた別の世界が待っているのかもしれない。今はそれが見てみたい。 ふと視線を感じて颯斗はを見た。 「どうかしましたか?」 「颯斗くんがかっこよかったから見惚れてました」 微笑んでが言う。 「あまり可愛い事を言わないでください」 そう言って腰を屈めてにキスをした。 颯斗が予約したレストランで食事を済ませて家に帰る。 「美味しかった」 微笑むに「よかったですね」と颯斗も笑顔になる。 帰宅して、颯斗がハーブティを淹れてくれた。 何でもない時間が凄く温かくて、時間が止まればいいのに、と彼は思う。 「さん」 颯斗が名を呼ぶ。 「なに?」 「お誕生日、おめでとうございます」 そう言ってそっと箱を差し出してきた。 「誕生日プレゼントです」 「え、だって。さっき...」 「これも受け取ってください」 そういわれて「ありがとう」と礼を言う。 レストランでの食事は颯斗がご馳走してくれたので、プレゼントはそれで充分だったのだが... 「開けてもいいですか」 「はい。どうぞ」 颯斗の了解を得て包みを開ける。 箱を開けると出てきたのは腕時計だった。 「いつも身に着けていてくださると嬉しいです」 「ありがとう」 早速腕に巻いた。 「どう?」 「良くお似合いです。良かった...」 颯斗がホッと息を吐く。 「大切にするね」 「ありがとうございます」 颯斗は嬉しそうに微笑んだ。 |
桜風
13.6.7
ブラウザバックでお戻りください