| 屋上のコンクリートの上で膝を抱えて座っていると空からチラチラと雪が降ってきた。 授業をサボって屋上にいる。口実は保健室へ行くというもの。 先ほどチャイムが鳴ったから、今は次の授業までの短い休憩時間だ。 「風邪引いちゃうよ」 声を掛けられては振り返る。 「あ..風門寺」 「『ゴロちゃん』!」 ずい、と顔を近づけられてのけぞった。そして、苦笑する。 悟郎は自分の上着を脱いでにかけてやる。 「ゴロちゃんこそ風邪引いちゃダメでしょう?これから『受験』っていう一大イベントが待ってるんだから」 の言葉に悟郎は笑い、 「ゴロちゃんはちゃんよりも丈夫だから大丈夫だよ。それより、ちゃんのほうこそ体調はどう?」 「この3学期で『高校3年生』がコンプリートだから頑張るよ」 困ったように笑うに対して、悟郎も困ったように笑う。 は今回で高校3年生を3回目だ。もう『大人』である。 高校2年までは普通に学校に通うことは出来た。 そして、高校3年生。 人生の大きなターニングポイントを迎える。 そのプレッシャーに負けたのか。 いやいや、それは無いだろう... 結構豪胆だと親に言われている。自分でもそう思う。だからこそ、こうして図太く3回目の高校3年生だってやってるのだ。 とにかく、原因不明の病により、1回目の高校3年生は1学期で終わった。 夏休みに入り、入院生活を余儀なくされて1年間病院で過ごし、次の年の秋にまたしても高校3年を経験し、これまた冬休み中に倒れて入院生活。 そして、今年は3学期を体験すべく復学している。 卒業はもう諦めている。だって、出席日数が足りない。 聖帝学園で2回も留年している生徒がいるということは望ましいものではない。 ただ、が許されているのはその原因が『病気』ということと、この学園に多額の寄付をしていること。 この2つで在籍を許されているようなものだ。 そして、今年で辞めようと思っている。だから、校長は肩の荷が下りたといった表情で、生温かい表情をに向けているのだ。 彼女は多額の寄付を持ってきて、最終的に学園に迷惑をかけずにやめていくとても『良い生徒』なのだ。 も彼からの評価は重々承知である。 別に気にもならない。 「けど」と白い息を吐きながらは雪の降る空を見上げて呟いた。 「高校3年の3学期ってよくよく考えたら、あたしみたいな人間にとっては退屈しか転がってないのよねー」 そう言って悟郎を見て苦笑した。 「そんなことないよ!」と悟郎が言う。 目を丸くするに「バレンタインがある!」と高らかに宣言した。 「あー、うん。毎年、ゴロちゃん含めて真壁たち凄いんだって?」 の言葉に悟郎は「まあね」と笑った。 「そういえば、どうして此処に?」 「ちゃん、丸見え」 そう言って指差した先はクラスXと呼ばれる3年E組の教室がある。 「保健室は行かなくて良いの?」 「先生が不在。ま、何と言うか...サボる口実だったりするのよねー」 の言葉に悟郎は溜息をつく。 「けど、ちょっとは調子悪いんじゃないの?」 悟郎の言葉にはニコリと微笑み、立ち上がる。 「大人しく保健室にいってきまーす!」 そう言った彼女は悟郎に上着を返して屋上を後にした。 |
桜風
11.9.3
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