| チャイムの音で目が覚めた。 今何時だろう、ともぞもぞとベッドから体を乗り出すと「体調はどう?」と声を掛けられた。 驚いて体を起こす。 「先生?!」 ベッド脇には担任の南悠里がいた。 窓の外を見れば日が暮れかかっている。 と、いうことは先ほどのチャイムは終業のチャイム。下校のチャイムと言うことか。 「すみません、すぐに...!」 慌ててベッドから飛び降りたに「慌てなくて良いのよ」と言ってきた。 この学校は居残りをする場合は届出をしなくてはならない規則になっている。 だから、届出をしていない自分が残っていては担任に迷惑をかける。 「悟郎君が届出を一応出してくれたの。それがなくても、体調の悪い生徒を無理やり追い出すことなんてしないわよ」 「...すみません」 3年E組はクラスXと呼ばれて問題児ばかりを寄せ集めたクラスになっている。 どんな理由であれ、留年を繰り返すは学校にとっては『問題児』の括りに入っておりその担任である悠里の苦労は計り知れない。 しかし、彼女は一生懸命クラスの生徒達を指導をしていると言う。 これまでのクラスメイトがどんな子だったか分からないのだが、少なくとも今は『問題児』には思えない。 ちょっと常識に欠ける人たちはいるが、それは..育った環境だろう。と言うことにしておこう。 「お家に連絡しましょうか?」と悠里に聞かれて「大丈夫です」と断った。 少し心配そうにしているが、「先生、補習があるんじゃないですか?」とに促されて彼女は諦めたように「そうね」と言って立ち上がった。 「ムリしないのよ。鞄はそこに持ってきてるからね」 「はーい。ありがとうございます」 良いお返事をしたに多少の不安を残しつつ悠里は保健室を後にした。 ベッドを降りたは伸びをする。 ポキポキと背中が鳴った。 「さて、と」 眩暈も治まっているし、帰ることは出来るだろう。 入院生活が長いので、体を甘やかしてしまってすぐに持たなくなる。 体力が無いのだ。 病気云々の前の話だな... は溜息をついて保健室を後にした。 先ほど屋上にいたときに降り始めた雪は止んでいなかった。 これは困った... 傘が無い。 まあ...雪だし。 「さん」 振り返る。 クラスAの委員長の久世だ。 「あらー、いつの間にこんなに大きくなって...」 「年なんて殆ど変わらないでしょう」 眉間に皺を寄せて彼女が言う。 久世とは3年前にひょんなことから知り合って、とうとう同学年になってしまった。 「傘、無いの?」 「ないのよねー。まあ、雪だし。いっかなー...って」 「高校3年をコンプリートするんじゃなかったの?貸してあげるわ」 そう言って彼女は自分の持っている傘を差し出してきた。 「いいよ。受験生の方を大切にしなきゃ」 「折りたたみくらい準備してます」 そういわれたは「じゃあ、折りたたみの方をかして」と言った。 すると久世は苦い表情をする。 「ほーら、そっちもこれをあたしに貸したら傘がない。大丈夫よ、タクシーでも拾って帰る」 そう言ってヒラヒラと手を振り校舎から出て行く。 「じゃあ、せめてタクシーを拾うまで一緒にいるわ」 「時間がもったいないでしょう、受験生」 「...少しくらい大丈夫よ」 は肩を竦めた。 何でこんなに懐かれてるんだっけ...? 彼女との出会いを思い出してもその理由が分からない。 「ねえ、何でクラスXのあたしに構うの?それって拙いでしょう、クラスA的に」 が言うと 「私は『クラスXだから』ではなく、『やらなくてはならないことをしないから』あのクラスの生徒があまり好きじゃないのよ」 と返す。 なるほど... 「真面目だねー」 「それはどうも。ほら、タクシー拾うんでしょう。行くわよ」 少しの間無言で並んで歩いていたが、不意に久世が口を開く。 「...来年も高校3年生をするの?」 「もう懲りたわ。これで一通り経験できるし、学校は辞めるわよ」 カラカラと笑いながら返すに「勿体無い」と久世が言う。 「いやいや、ある意味、入退院を繰り返して結局卒業できないんじゃ在籍していることの方が勿体無いって」 の言葉に「そうかもしれないけど...」と久世が惜しんでいる。 大通りに出ると早速タクシーを拾えた。 「じゃあね。ありがとう」 「ええ、また明日」 そう別れの挨拶を口にして自宅の住所を口にしてタクシーを走らせた。 |
桜風
11.10.2
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