| 2月に入り、やっぱり体調を崩してしまったはその殆どを自宅で過ごすこととなり、卒業式の日を迎えた。 卒業できないは式に出席することなく、校舎の屋上から講堂を見下ろした。 「あーあ。卒業か」 卒業式が終わったらしく、生徒達が講堂から出てきのを目にしたは、屋上を後にした。 それから5年後。 「合格通知ってのは中々に感慨深いものだなぁ...」 『感慨深い』と言いながら、その扱いは適当で、ヒラヒラと振っている。 「あ」と声が漏れたのはそれが風に攫われたからであり、さすがにそのまま放置できないのではその風に乗っている紙を追いかけた。 「おや?」 と声を掛けられた。 彼の目の前に合格通知書がはらりと落ちる。 これは拙いかも... 肩を竦めて「すみません」とが言うと彼が苦笑した。 「もう少し大事にしてください」 「ちょっと浮かれてたみたいです」 と返すと彼がクスリと笑う。 「上條先生は、今日は理事長とご一緒ではないのですか?」 面接のときに彼の顔は見たし、名前も聞いている。 上條元親。この学園の理事長である佐伯影虎の秘書兼養護教諭だ。 秘書と聞けば、あの得体の知れない永田を思い浮かべてしまうが、彼に比べれば上條はまだ『人間』と思えるので一安心だ。 ただ、ちょっと腹が読めないので好きではない。 「今年の採用は先生のほかにもうひとりですよ」 と言われて目を丸くする。 「採用、ということは講師ではないんですよね?」 「ええ、教師です」 へー...それは凄い。 「講師も、まあ...何人か」 「そうなんですか」 何でこんなに言いにくそうに言うのだろう。 不思議だなーと思いながら彼に並んで職員室に向かった。 「では、私は用事がありますので」と言う上條と途中で別れ、は職員室のドアを開けた。 「何故貴様がここにいる!」 は職員室内の様子に驚いたが目の前のメガネがもっと驚いてくれたのですぐに冷静になれた。 「5年前と全く同じリアクション。進歩ないのねー...」 ポツリと呟く。 目の前のメガネこと、真壁翼はを指差したそのポーズのまま動かなかったが、そんな指摘に「コホン」とわざとらしい咳払いをして手を下ろす。 「で?何故お前がここにいる?」 「採用されたから。外国語教師として」 「はあ?!お前は結局高校を卒業できなかっただろうが!」 「『大検』ってご存じないのかしら?翼ぼっさま」 「誰が『翼ぼっさま』だ!変な表現をするな」 ムキになってきた翼を隣に立っている一が「まあまあ」と宥める。 「翼、知り合いか?」 の精神に軽いダメージ。 しかし、その直後にバコンと雑誌を丸めたもので頭を叩かれた一は「いてぇ!」と声を上げつつその場に蹲る。 「おーい、悟郎...」 「ちゃん、久しぶり!」 一の抗議の声は黙殺して笑顔の悟郎がの手を取る。 そして、その手にジワジワと力がかかってくる。 「あの、風門寺?」 「ゴロちゃん!」 あ、これは変わらないんだ。というか... 「痛い、痛い...」 「何で卒業式の日、黙っていなくなっちゃったの!先生もポペラ心配してたよ!!」 「だって、卒業できなかったんだからとっとと姿をくらます方が良いと思ったんだもん」 「『またね!』くらい言わせてよ」 ぶぅと膨れっ面をして悟郎が言う。 は困ったように笑って「気をつける」と返した。 の言葉に悟郎はニコリと微笑み、「ん、よろしい」と言ってやっと手を離した。 「んで?皆は何でここにいるの?」 「ふんっ!愚問だな」 胸を反らせて翼が言う。 「1年間、此処の講師として戻ってきたんだ」 「本業はどうしたー」 間髪いれずにが言う。 彼らB6はそれぞれのジャンルで世界に名を馳せている。翼はモデルで、一はサッカー選手。悟郎はイラストレーターだし、瞬はバンド。清春はNBAプレイヤーで瑞希はNASAの研究員。 つまりは世界のトップレベルな有名人だ。こんなところで油を売っている暇が無い人たちのはずなのに... 「まあまあ。ゴロちゃん、可愛い後輩のために一生懸命働かせていただきます」 と敬礼をする悟郎には呆れたように息を吐き、「そーですか」と適当に返した。 |
桜風
11.11.6
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