School Life 13





生徒会が入念に準備を行った体育祭だったが、八雲がゲリラライブを始めたお陰で色々と台無しになった。

しかし、八雲がライブを始めた瞬間、は思わずガッツポーズをした。

これこれ、こういうアクシデントは必要よ。刺激的な学校生活!!

だが、このガッツポーズは生徒会役員達に目撃されていたため、体育祭終了後、小一時間生徒会長様からの説教を食らった。

彼らはまだ若いからこういったアクシデントがこの先、『いい思い出』に変わることを知らないのだろう。

そう思うと広い心で慧の説教を聞き流せる。

が説教を聞き流しているのはバレずに済んだらしい。良かった良かった。



7月の期末試験の問題を作成しているとコトリとデスクの上にコーヒーが置かれる。

見上げると桐丘だった。

「頑張るね」

「ありがとうございます。そうですねー。楽々解かれたら面白くないので、ちょっと捻った意地の悪いものをいくつか仕込もうと思いまして」

笑って言うと桐丘が苦笑した。

「だが、あまり難しいのは良くない。授業で教えていないものを出すのもだめだ」

「はい」とは頷く。

「ところで、先生はB6の先生方と仲が良いのかな?」

そう聞かれて素直に頷くほど仲良しではない。

「まあ、クラスメイトでしたから」

と背景事情だけは口にした。

「そうか...高校生活は楽しかったかな?」

アレだけ賑やかなのが一緒だったのだから、とちょっと思っているかもしれない。

「まあ、それなりに」

そう返しては作業を再開した。あまり根掘り葉掘り聞かれるのは面白くない。

そんなの気持ちを察したのか桐丘は「じゃあ、私はお先に失礼するよ」と言って扉に向かった。

「ああ、桐丘先生」

が声を掛けると彼は足を止めて振り返る。

「これ、ご馳走様です」

そう言って先ほど桐丘がデスクに置いたコーヒーを少し慎重に掲げた。

「ああ、どういたしまして」

彼は職員室を後にした。

「何をそんなに警戒してるのかしらぁ〜?」

はポツリと呟き、可愛い生徒を苦悩させるべく、意地の悪い問題の作成に取り組んだ。



「そういえば、生徒会って夏休みあるの?」

が問う。

期末試験が終わったある日の出来事である。

「夏休み?毎日登校します。当然です、この学校の秩序と規律を守る生徒会執行部に休みがあると思われるのですか?
丁度良い機会です。先生、あなたは曲がりなりにも教師です。生徒を正しく導くのが教師の責務だと言うのに、気を抜いてばかりだ。もっと自覚を持ってください」

あれ?また小言??

頻繁に慧の小言を聞いているはいい加減彼の小言も聞き飽きた。慣れもしたが...

そうか、夏休みはないのか...

内心しょんぼりしながら生徒会室を後にした。

「おーい、。どーしたんだよ」

ぽんと背中を叩いてきたのは天十郎だった。

「夏休み、ないんだって...」

「お?も補習か?」

少し嬉しそうに天十郎が言う。

「...『も』ってことは、今回の期末散々だったの?ああ、真奈美先生も大変だー」

遠い目をしてが言う。

「う..うるせぇ!第一、この俺様が何で勉強なんてしなきゃならないんだよ」

「じゃあ、何でそもそも高校に進学したの?日本の義務教育は中学までなんだから、高校に進学したということは学業を続けたいという意思があるということでしょう?」

の言葉で天十郎は言葉に詰まった。

「ま、良いけどね。そうやって補習から全力で逃げるのも、きっといい思い出になるのよ。卒業しようとしまいとね」

憂いを帯びた表情のまま、はそのまま職員室に向かう。

ああ、さよならバカンス...

さよなら、青い海に白い砂浜。

青い空に歴史漂う石畳の街並みでも良かったな...

第一、生徒が殆ど登校しない夏休みに何の規律だか。

しかし、彼の愛読書は六法全書だと以前聞いたことがある。

六法全書が好きだから、規律と秩序が好きなのか、それとも、規律と秩序が好きだから六法全書が好きなのか。

どの道、自分にはあまり縁のないものである。

は再び盛大な溜息を吐いた。









桜風
12.3.4


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