| 翌日、慧は理事長に権限を返上した。 理事長は「残念ですね」と一言言っただけだったとか。 「おい」と廊下で呼び止められた。 振り返ると珍しく感情を露にした那智だった。 「予鈴が鳴るよ」 「そんなことはどうでも良いんだよ。お前だろう」 ある意味、なりふり構っていられないようだ。 「何が?」 「慧を唆してあの権限を返上させたんだろう」 詰問するような口調で彼が問う。 「あなたは、慧くんの判断、決断を他人の入れ知恵だと思うの?あなたの大好きなお兄さんはそんなに愚かなの? 自分で考えることも出来ず、他人の言葉に左右され「黙れ!」 の言葉を遮るように那智が声を荒げた。 「お前、最近目障りなんだよ」 「教師たるもの、生徒の目障りにならずしてどうします?」 おどけて言うに「あまり調子に乗ってると、痛い目を見るぞ」と那智が低く腹に響く声で言う。 少しだけ、ほんの少しだけぞくりとしたがだって意地がある。この程度でビビッてたまるものか。 「ご忠告どうも。ところで、クラスAの那智くんがサボリとか拙いんじゃないの?」 が言うと彼は鼻で笑い、「体調が悪いから保健室で休みまーす」と人懐っこいいつもの余所行きの顔と声音で宣言してその場からいなくなった。 「すこし、大人気ないのでは?」 廊下の柱の影から姿を見せたのは永田だった。 「永田の祖先って忍者だったらしいじゃない。さすがね。それ、忍法何の術??」 永田の言葉に答えずにが言う。 彼は溜息をつき、「それはガセネタでございます」と返した。 「え、ホント?」 「忍者としての修行は私が個人的に積んだものでございます」 「どこまで冗談かわかんないから...」 苦笑してが言う。 「ひとつ、ご忠告を。様は理事長に警戒されていますよ」 「光栄ですこと」 そう軽く返してヒラヒラと手を振り、授業のないは職員室に向かった。 そして、10月に入ると文化祭がある。 「ぶ ん か さ い!」 グッと拳を握ってが嬉しそうに声を出している。 「おう!祭りだ、祭り!何だ、も祭りが好きなのか??」 はたまに真奈美を手伝って補習を担当している。今日は瑞希が雲隠れしたので借り出された。外国語担当は瑞希らしい。 「だって、学校生活なんて詰まんない授業がメインでしょう?たまにはこう..羽を伸ばしたいじゃない」 「曲がりなりにも教師が『詰まんない授業』とか言うな」 共に補習を受けていた千聖が突っ込みを入れる。 「え、何?授業楽しい??」 が聞き返すと 「詰まらんに決まってるだろう!」 と返されてどこか傷ついた。 「F組は何するの?」 「コスプレ喫茶になる可能性が高いな」 「俺様は、演劇が良いって言ってるだろう?!」 「俺に言うな。それに、演劇なんぞ面倒だ」 「演劇?」 が首を傾げる。 「おう!この俺様が主役で」 「セリフ、覚えられるの?」 真顔でそう突っ込まれて天十郎はグッと詰まったが「当然だ!この俺様が本気を出せばセリフのひとつやふたつ」と胸を張った。 「演劇でセリフがひとつやふたつってことは、完璧チョイ役だね」 が言うと「この俺様がチョイ役なんてありえねぇ!主役だ!!本気を出せばどんな長いセリフも全部覚えてやる!余裕だ!!」と天十郎がムキになった。 「じゃあ、その本気を出して、さっきやった箇所の小テストいってみようか」 そう言って天十郎と千聖の前にプリントを置く。 「さ、10分ねー。2人とも6割取れたら今日はこれでお終い。逆に、どっちかが取れなかったら延長ねー」 の宣言に天十郎も千聖も文句を口にしたが彼女はそれを取り合う気はなく、「はい、始めー!」と時計を確認し、彼らは慌てて問題を読み始めた。 |
桜風
12.4.15
ブラウザバックでお戻りください