| 「できたよ」 そう言って彼女は鉛筆をペンケースに仕舞った。 「ほら」 そう言って烏に向かって見せる。 烏は近寄ってきて、の描いた自分を見つめて首を傾げた。 「ダメかな?」 「かぁー...」 烏が鳴く。 「もっと男らしくないか、だって」 背後にいた草薙が通訳する。 「男らしく...?」 烏の男らしさはどこに出てくるのだろうか、と悩んでいると烏は大きく翼を広げた。 「ここらへんなんじゃないか?」 そう言って烏の広げた翼の根元あたりで空中に丸印を付けた。 「ここを、もっと力強くって事かな?」 そう言いながらはスケッチに線を足す。 草薙と烏はその手元を覗き込み、烏はバサッと翼を広げた。 「え?!」 驚いた声を漏らすに 「いい感じ!ってとこじゃないか?」 と草薙が応じる。 「そう..なの?」 「カァ!」 バサッと1回羽ばたいて烏はそう言った。 その反応に自信を持ったは鉛筆を滑らせて、そして「どう?」ともう一度烏に見せる。 「カァーー!!」 「合格、ってさ」 「あり、が、とう」 烏に向かって言うに「かあ」と烏は鳴き、そして飛び立っていった。 ほっと息を吐いたの腹がふいにぐぅと鳴る。 慌てて腹を抑えた彼女に草薙が噴き出して「これ、やるよ」と言った。 先ほど夕飯用に購入したおにぎりだ。 「あの、でも..私、今..お金...」 「やるって。いいもの見せてもらったし」 「いいもの?」 「それ」 そう言って先ほどが完成させた烏のスケッチを指差す。 「これ?」 「そう。これ、というか。これ描いてるの、見てて楽しかったぜ。あの烏も、澄ましてさ」 クツクツと笑って言う。 少し窮屈そうにしながらも、自分のお気に入りの角度を保とうとしていた。 烏でそんなの見たことない、と草薙は思う。 「にゃんこ以外も描くんだな」 「う、ん。野良の子」 烏を野良というのはさておき、とにかく、飼われていないもの、という意味なのだろう。 「そういえば」 ふと思い出した。 「な、なに?」 「前に、俺が行った猫の集会所、最近行ってないのか?」 「あ、うん。最近、あそこ危ない、から」 が頷く。 「そうなんだ?」 「何か、あの場所..に、知らない、怖い人..増えてきてる」 「...そうなのか?」 知らず低く唸るように草薙が言うと彼女はびくりと震えた。 「あ、いや。ごめん。でも、そうか。なら、さんは当分いかない方がいいかもな」 彼女は野良猫とかそういう野生の動物が持っている鋭い勘のようなものがあるのかもしれない。 だから、あの場所を荒らしている人がいるかもしれないと聞いて心が冷えた草薙の雰囲気を敏感に察して怯えて。 「さん、家どこ?送ろうか」 すっかり日も沈み、あたりが暗くなった。 「だ、い..じょうぶ」 そう言って彼女は首を横に振った。 まあ、友人でもない、ましてや顔を合わせたのは2回目の人間に自宅を知られたくないという心境は理解できる。 草薙は頷き、「気をつけて帰れよ」と言ってその場を去った。 |
桜風
15.1.22
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